業務スーパーの「神戸物産」4年ぶりの買収で狙うのは

「業務スーパー」をフランチャイズ展開する神戸物産<3038>が4年ぶりの企業買収に踏み切る。

同社は2025年4月に、化学品や食品の事業を手がけるADEKA<4401>の子会社で、製菓、製パン用フラワーペースト(小麦粉やでんぷんなどに砂糖、油脂、卵などを加えてペースト状にしたもの)などを製造する上原食品工業(東京都荒川区)を子会社化する。

低価格で高品質なオリジナル商品の開発や供給体制を整え、プライベートブランド(PB)比率を引き上げるのが狙いだ。

企業買収は洋菓子製造販売のサラ二(岡山県瀬戸内市)の全事業を取得した2020年以来となる。

神戸物産ではPB比率向上のために自社設備への投資を行っているが、同社の沼田博和社長は「M&Aは積極的に推進する」としており、今後も食品工場の買収は続くことになりそうだ。

PB商品を拡充

上原食品は、関東で70 年にわたりフラワーペーストのほかに、バタークリームや餡類、レトルト調理食品などを製造している。

神戸物産は上原食品を関東での商品製造拠点として活用することで、PB商品を拡充できると判断した。

上原食品の2024年3月期の売上高は15億6400万円(前年度比12.1%増)、営業損益は1400万円の赤字(前年度は7000万円の赤字)だった。純資産は5億9000万円のマイナスの状態にある。

ADEKAは事業構成の変革を進めており、食品事業の成長性や食品原材料などの需給バランスの動向などを見極め、上原食品の経営資源の拡充と企業価値の向上につながると判断し、神戸物産への譲渡を決めたとしている。

増産投資とM&Aの両方を

神戸物産は「食の製販一体体制」との目標を掲げ、これまでも多くの食品工場などを買収し、経営基盤の強化に取り組んできた。

2006年にパスポート倶楽部(現神戸物産フーズ)を子会社化したのをはじめ、2010年以降に適時開示したM&Aは10件に達する。

この中には水産加工品製造や、酒造、食肉処理・養鶏場、洋菓子製造などが含まれており、PB比率の向上に貢献してきた。

2024年10月期のPB比率は34%台半ばで、前年の2023年10月期、さらに前年の2022年10月期と比べ、あまり変化はない。

この横ばい状況を脱し、2026年10月期にはPB比率を37%まで高める計画で、この目標実現のため工場の増産投資を計画しており、2024年10月期から2026年10月期までの3カ年は毎年100億円以上を投資するとしている。

同時に食品工場の買収にも前向きで、沼田社長は「新規に工場を立ち上げるには、多くの時間と手間がかかる。

既存の食品工場であれば、はるかに早く立ち上げることができる」として、M&Aを積極的に推進する姿勢を見せる。

2ケタの増収営業増益に

食品スーパー業界は、円安に伴うエネルギー価格や原材料価格の上昇などのコストアップ要因はあるものの、物価高に対する消費者の節約志向の高まりから、低価格商品への需要は増加傾向にある。

そうした情勢の中、業務スーパーでは低価格で高品質のPB商品の品ぞろえの多さが強みとなっており、多くのメディアがこのPB商品を取り上げたことなども加わり、既存店の売り上げが大きく伸びている。

また業務スーパーでは素早く全国規模で出店できるフランチャイズ展開を基本としており、2024年10月期の店舗数は36店舗増え、総店舗数は1084店舗(うち直営店4店舗、フランチャイズ店1080店舗)となった。

この既存店の伸びと新店舗の増加に支えられ、神戸物産の2024年10月期は、売上高5078億8300万円(前年度比10.0%増)、営業利益343億5000万円(同11.8%増)と2ケタの増収営業増益を達成した。

2025年10月期、2026年10月期は伸び率が低下するものの、引き続き増収(2025年10月期は3.4%増、2026年10月期は7.0%増)、営業増益(同9.8%増、同8.7%増)を見込んでいる。

現在、同社では国内の26の自社食品工場でPB商品を生産しているが、今後の事業規模の拡大スピードによっては、短時間で食品工場を立ち上げることのできるM&Aにスポットが当たりそうだ。

業務スーパーの「神戸物産」4年ぶりの買収で狙うのは
神戸物産の業績推移
2025/10は予想、2026/10は計画

文:M&A Online記者 松本亮一

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