
回転ずしチェーンを運営する、くら寿司<2695>が、すしネタの仕入れで、奇策を繰り出した。同社は2022年9月16日に、キャベツで養殖した「ニザダイ」の販売を全国の店舗で始めた。
2021年11月には水産の新会社KURAおさかなファーム(大阪府貝塚市)を設立し、ハマチなどの養殖事業を立ち上げており、今回はこれに次ぐ魚資源確保の取り組みとなる。
円安や水産資源の減少などにより食材価格が上昇する中、養殖の割合を増やすことは、すしネタの安定調達につながり、価格の上昇を抑える効果が見込める。
10月には、多くの飲料や食品の値上げが計画されているだけに、消費者の関心を集めそうだ。
匂いを抑え、脂のりの良い身質を味わう
ニザダイの養殖は、2019年から始めており、2020年11月、に10店舗で試験販売したところ好評だったため、今回約14万食分を用意し全国の店舗で販売することにした。今後も定期的に販売ができる体制づくりを目指すという。
ニザダイは海藻を主食とすることから、海藻が大規模に消失する磯焼けの原因とされ、駆除の対象となっている。また、海藻が主食であることから身に独特の匂いがあり、市場ではあまり取り引きされていない。
くら寿司では、ニザダイに廃棄予定のキャベツを与えて養殖することで、独特の匂いを軽減し、ニザダイが持つ脂のりの良い身質を味わえるようにした。キャベツニザダイの商品名で、一皿(2貫)220円で販売している。
KURAおさかなファームは、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術を用いた給餌機を用いた養殖を行っており、AIが魚の食欲を判定し、最適な量の餌を与えることで、品質の高い魚を育てている。
KURAおさかなファームでは、魚の安定供給はもちろん、漁業の人手不足や労働環境の改善などにも取り組むという。
回転ずし業界ではスシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>が、ゲノム編集技術を持つプラチナバイオ(広島県東広島市)と、ゲノム編集技術を活用した水産物の品種改良を進めるリージョナルフィッシュ(京都市)の2社と共同で、魚の品種改良に乗り出している。
ゲノム編集は、遺伝子を切断し、もともと備わっている性質を変える技術で、品種改良に用いると、交配による品種改良よりも大幅に時間を短縮することができるという。
両社のこうした取り組みが成果を上げれば、すしネタの安定調達はもちろん、仕入れコストの低減などの効果も期待できる。
10月は値上げラッシュに
帝国データバンク(東京都新宿区)の主要飲料、食品メーカー105社を対象にした調査によると、10月に6500品目の飲料や食品の値上げが計画されているという。
アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの大手4社は10月1日にそろって、ビールのほか、発泡酒、第三のビール、チュウハイ、サワー、ウイスキーなどを値上げする
くら寿司、スシローも、ともに10月1日に、食材費や物流費の上昇を理由に、すしの販売価格を値上げする。
今年は、消費者が価格に敏感になる秋になりそうだ。
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文:M&A Online編集部