2024年10月のM&A件数(適時開示ベース)は91件と前年同期に比べ6件増え、10月単月では2008年以来、過去最多となった。取引金額は1000億円を超える大型の案件が複数発表され、前年同期比2.55倍の6200億円まで伸びた。
1~10月の累計は980件で前年の832件を超え、前年を大きく上回るハイペースが続いている。累計額は8兆円を突破し、昨年の同時期までの累計額6兆4130億円を上回った。
上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。
トップの日本ペイントHD、さらなる買収の可能性も
金額トップは、世界4位の総合塗料メーカー、日本ペイントホールディングスがアメリカのコーティング剤・接着剤などを製造する化学品メーカーのAOCを子会社化する案件。買収額は約3340億円。
2020年にシンガポールのウットラムグループの傘下入りした日本ペイントHDは今回、欧州、北米市場でトップクラスに位置するAOCを子会社化。これにより海外販売網の多様化のほか、低リスクで高マージンの製品ポートフォリオを獲得する。日本ペイントHDは短期的な株主還元よりも成長投資を優先する方針を明確にしており、さらなる買収の可能性も示唆している。
2位は不動産売買・賃貸・管理のサムティホールディングスがシンガポールの投資ファンド、ヒルハウスのTOBを受け入れ非公開化を目指す案件。TOBを含む一連の取引総額は1063億円。サムティは不動産売却に依存した事業構造から、自社で企画・開発した不動産の賃貸収入を主体とした事業構造への転換を進めている。不動産領域に強みを持つヒルハウスのTOBを受け入れ、ビジネスモデルの変革を目指す。
3位はUBEがドイツの化学品メーカーのランクセスからウレタン関連製品事業を取得した案件。取得価額は約736億円。ランクセスが持つ、ウレタン樹脂の技術ほか、販売ネットワークなどの事業基盤を獲得し、高機能ウレタン樹脂市場での競争力強化につなげる狙いがある。
◎10月取引金額上位10件
外食・フードサービス業のM&Aが引き続き活況
外食産業は10月に3件が発表。1~10月累計で2023年通年の24件を超す26件になった。注目すべきは内容の変化で、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した2023年5月以前に発表されたM&Aでは、会社・事業の譲渡案件が目立っていたが、足元では外食・フードサービス業が同業を買収する案件が増加している。外食産業の業績が回復しつつあり、経営戦略も守りから攻めへ、積極的な事業拡大へとシフトしていることが昨今の傾向から見て取れる。
10月はサンマルクホールディングスが「京都勝牛」を展開するジーホールディングスを傘下に収めた案件(買収額は112億円)や、KOZOホールディングスが「小僧寿し」FC加盟店のサニーフーヅから事業取得した案件がある(買収額は非公表)。
注目は、居酒屋と宅食事業を両輪とするワタミが25日に発表したサンドイッチのサブウェイ日本法人の買収。「居酒屋のワタミからサブウェイのワタミ」へと企業ブランドのイメージ転換を目指す案件となる。ワタミは、フランチャイズノウハウの獲得だけでなく、ワタミが運営するワタミファームの有機野菜を活用した商品提供を行うという。
文:M&A Online記者 橋本祐一
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