【11月M&Aサマリー】累計で前年越えの1102件、IT人材の獲得が活発

11月のM&A(適時開示ベース)は122件で、好調だった前年同月を8件上回った。1~11月累計は1102件で早くも前年の合計1068件を突破した。

金額は1兆2405億円で、前年同月(1兆6808億円)を下回ったものの、1~11月累計は9兆2698億円で、前年(8兆939億円)を上回っている。

上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

【11月M&Aサマリー】累計で前年越えの1102件、IT人材の獲得が活発

SCSKがITインフラ構築の「川上」領域を取込み、ビジネス拡大へ

金額トップは住友商事系SIerのSCSKがITインフラ構築のネットワンシステムズをTOBで子会社化する案件。経営統合に向けた買収で買付代金は最大で3574億円。

ネットワークに強みを持つネットワンシステムズを傘下に迎えて、SCSKのアプリケーションの動作を支えるITインフラ領域(川上)、ソフトウエアやプログラムなどのアプリケーション領域(川下)で技術を活用し、川上から川下まで一貫したITサービスを提供する。

顧客の違いも統合理由の一つ。SCSKは製造業・金融業に、ネットワンシステムズは公共・通信事業者と強いパイプを持ち、双方のサービス・顧客の紹介・提案を行い、ビジネス機会の創出を目指す。

足元ではSIerに関連したM&Aの動きが活発で、10月に発表されたNECによる子会社NECネッツアイのTOBによる子会社化、11月発表のKDDIによるサイバーセキュリティ企業ラックの買収がある。システムの老朽化に起因する「2025年の崖」と呼ばれる問題を受け、システムの刷新やDX化に企業が動いていることから、IT人材の需給がさらにタイト化しており、「人材確保」のM&Aが盛んになっている。

日本特殊陶業がEV・脱炭素の部品向けに東芝マテリアルを買収

金額2位は自動車用の点火プラグを製造する日本特殊陶業がファインセラミックスや金属材料・部品を製造する東芝マテリアルを子会社化する案件。買収額は約1500億円。

日本特殊陶業は、エンジンを動かす重要部品である点火プラグなどの内燃機関部品を主力とするが、自動車の電動化や脱炭素化の動きを踏まえ、電気自動車(EV)など非内燃機関領域での新事業の創出に注力しており、今回の買収はその一環。

東芝マテリアルは特に、EV向けベアリングの部品やインバーター向けパワー半導体で業界をリードする技術を持ち合わせており、買収によって今後のシナジーが実現できると判断した。

三菱UFJフィナンシャル・グループがウェルスナビ買収、証券拡大へ

金額3位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が顧客資産を全自動で運用するサービス(ロボアドバイザー)最大手のウェルスナビを完全子会社する案件。買収額は996億円。

新NISA(少額投資非課税制度)の急速な普及に伴い、国内のデジタルリテール事業を強化する必要があると判断した。傘下のauカブコム証券と合わせて証券業を強化する。

ウェルスナビは、オンラインで完結する分散投資サービスを提供しており、国内ロボアドバイザリー市場において預かり資産・運用者数で首位だという。三井住友フィナンシャルグループは2022年SBIホールディングスへ約10%出資、みずほフィナンシャルグループは楽天証券に追加出資して49%の株式比率を占めており、近年、メガバンクの証券業の取り込みが顕著となっている。

東京海上がM&Aで新領域へ

11月の注目は、東京海上ホールディングスが建設コンサルティングのID&EホールディングスをTOBで子会社化する案件。

東京海上HDは近年、保険事業の「事前」「事後」といった新領域の拡大に取り組んでいる。「防災・減災」の領域では2023年11月に新会社、東京海上レジリエンスを設立しており、民間企業向けの防災ソリューションを提供。さらにCOREと呼ばれる防災コンソーシアムも設立している。

今回の買収で、ID&E HDの民間市場への参入を促し、東京海上HDは保険をベースに新領域へと一気に歩みを進める。損保大手のM&Aは海外損保を買収する展開が多かったが、新領域へと踏み出した点でも注目される。

◎11月M&A:金額上位

1SCSKITインフラ構築のネットワンシステムズをTOBで子会社化3574億円2日本特殊陶業東芝傘下の東芝マテリアルを子会社化1500億円3三菱UFJフィナンシャル・グループ資産運用ロボアドバイザー最大手のウェルスナビをTOBで子会社化996億円4東京海上ホールディングス建設コンサルティングのID&EホールディングスをTOBで子会社化978億円5コニカミノルタ米遺伝子検査子会社Ambry Geneticsを現地企業に譲渡840億円6コンコルディア・フィナンシャルグループ不動産担保融資の三井住友トラスト・ローン&ファイナンスを子会社化546億円7ヤマトホールディングス物流事業のナカノ商会を子会社化469億円8マクロミル英国投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ、マクロミルをTOBで株式を非公開化448億円9I-PEXI-PEX、MBOで株式を非公開化331億円10東急不動産ホールディングス再生エネ事業のリニューアブル・ジャパンをTOBなどで子会社化320億円11KDDIサイバーセキュリティー事業のラックをTOBで子会社化245億円12西本WismettacホールディングスMBOで株式を非公開化230億円13出光興産農薬メーカーのアグロカネショウをTOBで子会社化230億円14宝ホールディングス日本食材卸のドイツ・カーゲラーを子会社化182億円15カヤバ二輪車・四輪車用ばねメーカーの知多鋼業をTOBで子会社化170億円

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