
不動産事業やホテル&リゾート事業を手がける森トラスト(東京都港区)は2025年1月に、子会社で130年の歴史を持つ長野県・軽井沢のホテル・万平ホテル(東京都港区)を通じて、創業91年の老舗ベーカリー「ブランジェ浅野屋」を軽井沢で3店舗、東京を中心に関東で16店舗を運営する浅野屋(東京都板橋区)を子会社する。
万平ホテルのカフェ運営のノウハウを活用して、ブランジェ浅野屋のカフェ事業を強化するとともに、両社で万平ホテルの土産物や食品部門の商品開発などに取り組むほか、森トラストグループが展開する日本国内35カ所のホテル・リゾート施設でパンの商品力を高める。
森トラストは2031年3月期を最終年とする中長期ビジョン「Advance2030」に取り組んでおり、この中で海外の不動産や事業への投資と並んで、イノベーション(革新的な価値を創造する取り組み)投資にも力を入れることにしており、今回の老舗ベーカリーの次は、スタートアップのM&Aの可能性もありそうだ。
歴史のある両社の相乗効果狙う
万平ホテルは1894年に、西洋からの顧客を対象に軽井沢で創業したホテルで、1997年に森トラストが傘下に収めた。2024年に開業130年を迎えたのを機に1936年に建設された「アルプス館」の大規模改修を行い、2024年10月にリニューアルオープンしたばかり。
浅野屋は 1933 年に東京・麹町で外国の食料品を扱う「浅野屋商店」を創業した後、外国人外交官などの要望を受けて、1944 年に軽井沢店を開業。1980年代にはパリで流行していた石窯パンを再現するため日本で初めて円形石窯を設置したほか、天然酵母をパン作りに積極的に採用するなど、技術力に定評があるという。
森トラストは、浅野屋の子会社化後は「浅野屋が持つパン作りの技術力と万平ホテルのホスピタリティを活かした相乗効果を狙う」としている。
スタートアップとの協業を推進
森トラストが公表している沿革によると、万平ホテルの子会社化のあとの主なM&Aには、エムティジェネックス(旧:コグレ)、ラフォーレ&松尾ゴルフ倶楽部(旧:松尾ゴルフ倶楽部)の子会社化と大野興業の合併があり、今回の浅野屋の子会社化は2010年以来14年ぶりとなる。
森トラストは中長期ビジョン「Advance2030」で、スタートアップとの協業や連携を推進する方針を打ち出しており、すでにスタートアップとの協業により自動搬送ロボットをオフィスビルでの館内物流に活用する取り組みや、ホテル用の新マットレスの販売、太陽光発電所の取得、運営、傘のシェアリングサービスなどを展開している。
今後も同社が持つリソースやネットワークとスタートアップの技術をかけ合わせることで、新たなイノベーションを創出するとしており、スタートアップへのマイナー出資から、さらに進んだM&Aに発展することも予想される。
森トラストの2024年3月期は売上高2629億円、営業利益538億円で、中長期ビジョンの最終年となる2031年3月期には売上高3300億円、営業利益700億円を目指す計画だ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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