ビリケンの「通天閣」が南海電鉄グループ入り 新世界を全国ナンバー1のワクワクする街に

大阪と和歌山を結び、関西国際空港にも乗り入れる大手私鉄の南海電気鉄道<9044>は、2024年12月27日に大阪の観光名所の一つで、幸運の神の像といわれるビリケン像を設置する通天閣を運営する通天閣観光(大阪市)を子会社化する。

南海電鉄は2018年に策定した「南海グループ経営ビジョン2027」で、難波の活性化をはじめ通天閣の玄関口である新今宮駅周辺の賑わい創出などからなる「グレーターなんば」構想に取り組んでおり、今後はこの構想に沿って南海電鉄と通天閣の協業をはじめ、通天閣のある繁華街「新世界」の活性化などに取り組む。

南海電鉄がM&Aを適時開示したのは2014年の泉北高速鉄道や物流施設を運営する大阪府都市開発(大阪府和泉市)の子会社化以来実に10年ぶり。

南海では今回の案件は「適時開示基準に該当していないが、有用な情報と判断して任意開示した」としており、思いの強さが伝わってくる。両社はどのような経緯で結び付き、今後どのような取り組みを展開しようとしているのか。

ドミナントを形成

南海は「グレーターなんば」構想の取り組みの一環として、難波駅前の、なんば広場の整備や、新今宮駅のリニューアルなどを進めてきた。

この過程で通天閣観光との協業などにも取り組んでおり、さらなる協業の話し合いが進む中、2024年のゴールデンウィークごろから、子会社化の交渉が具体化してきたという。

南海電鉄の岡嶋信行社長は、通天閣観光の南海グループ入りを機に、ターミナル駅の難波駅から新今宮駅のエリアを活性化し「新世界を全国ナンバーのワクワクする街にする」と意欲的。

今後はこのエリア内の飲食や小売り、宿泊、エンターテインメントなどと、南海の運輸をかけ合わせて「ドミナント(地域支配)を形成する」との方向性を示している。

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関空からインバウンドを誘致

一方の通天閣観光は、コロナ禍の影響で厳しい経営状況に陥っていたが、体験型のアトラクションとしてタワースライダーや、ダイブ&ウォークを導入し、誘客に取り組んだ結果、業績は回復傾向にある。

通天閣観光の高井隆光社長は「新世界の活性化についていろんな方とさまざまな検討を行ってきた」としたうえで、2025年に開催される大阪・関西万博後を見据えて、さらなる誘客対策としてインバウンド(来日観光客)を見込むものの、「インバウンドの取り組みは通天閣だけではできない。関空からの誘客は非常に重要と考え南海さんとともに歩むことを決心した」という。

ビリケンの「通天閣」が南海電鉄グループ入り 新世界を全国ナンバー1のワクワクする街に
通天閣観光の業績推移
単位:億円

活性化策の具体的な取り組みとして、2025年4月に通天閣入場者の管理システムを導入する計画を披露。このシステムで南海電鉄の乗車券と通天閣の入場券のセット販売や、周辺エリアの飲食店との連携などを検討するとしている。

子会社化後も通天閣の経営に関わる高井社長は「南海電鉄はベストパートナーであり、通天閣が100年、200年光輝き続けられるようにがんばっていく」と決意を語った。

大阪府の吉村洋文知事は、SNSで「通天閣は、通天閣であり続けて下さい。大阪が成長、発展し、どんなに高いビルやタワー、豪華な建物ができても、通天閣が、大阪のシンボルです」とのコメントを投稿している。

南海電鉄と通天閣の親子には、これからもさまざまな方面から注目が集まりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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