M&A金額、初めて4カ月連続で「1兆円」突破|2月もルネサスが8900億円の大型買収

日本企業によるM&A金額(適時開示ベース)が初めて4カ月連続で1兆円を突破した。足元の2月もルネサスエレクトロニクスが約8900億円を投じて米国企業を買収する大型案件が飛び出し、早々に1兆円の大台に到達し、これまで最長だった2021年2~4月の3カ月連続を抜いた。

あっさり新記録達成

上場企業の適時開示情報をもとにM&A Onlineが調べたところ、2023年の国内M&A市場は件数が1068件と16年ぶりに1000件の大台に乗せ、金額も12兆円超に膨らむ活況を呈した。こうした中、月間金額が1兆円を超えた回数も年間5度(3、5、6、11、12月)と過去最多だったものの、途切れ途切れだった。

M&A金額、初めて4カ月連続で「1兆円」突破|2月もルネサスが8900億円の大型買収
適時開示ベース、※2月は16日時点。M&A Onlineが集計

年明け1月は昨年11、12月の流れを引き継ぎ、1兆円台をキープした。例年、1月は動きが鈍く金額も伸び悩む傾向があるが、積水ハウスが米国住宅メーカーを約7200億円で買収する案件が寄与し、今年は1月として初の1兆円乗せとなった。

こうした中、2月の動向が注目されていたが、4カ月連続1兆円突破の新記録をあっさり達成したのだ。

牽引役はルネサスエレクトロニクス。

2月15日、プリント基板設計ソフトウエア開発の米国アルティウム(カリフォルニア州)を約8900億円で買収すると発表した。アルティウムは半導体や電子部品を取り付けて配線するプリント基板を設計するソフトウエアをクラウド上で提供する世界的大手。ルネサスは米欧の半導体メーカーの大型買収を相次いで手がけた実績を持つが、ソフトウエア分野での本格的なM&Aは初となる。

◎最近4カ月の主要M&A(HDはホールディングスの略)

2024年2月 ルネサスエレクトロニクス 米国のソフトウエア企業「アルティウム」を子会社化 8900億円 〃 ローランド ディー. ジー. MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化 620億円 1月 積水ハウス 米国住宅メーカーのMDCホールディングスを子会社化 7200億円 〃 セブン&アイ・HD 米国スノコからコンビニ・ガソリンスタンド事業を追加取得 1370億円 2023年12月 日本製鉄 米国鉄鋼大手のUSスチールを子会社化 2兆円 〃 新光電気工業 産業革新投資機構によるTOBなどで株式を非公開化 6848億円 〃 東京ガス シェールガス開発の米国ロッククリフ・エナジーを子会社化 4050億円 11月 大正製薬HD MBOで株式を非公開化 7077億円 〃 ベネッセHD MBOで株式を非公開化 2079億円

記録更新はあるか?

これまでの月間の連続記録は2021年2~4月の3カ月。実は、その先陣を切ったのはルネサスだった。

同年2月初旬、アナログ半導体大手の英国ダイアログ・セミコンダクターを約6200億円で買収すると発表した。

翌3月には日立製作所が米IT企業のグローバルロジックを約1兆400億円で、4月にはパナソニックホールディングスがサプライチェーン(供給網)分野のソフトウエア企業、米ブルーヨンダーを約7800億円で買収を決めるなど、大型M&Aが続いた。

次の注目点は3月の行方に移るが、年度末にあたることから、M&A件数は年間を通じて1位、2位を争うのが通常のパターン。ただ、金額面は大型M&Aの有無に左右されるため、記録更新が実現するかどうかは極めて流動的だ。

文:M&A Online

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