道路舗装業界からまた1社、日本道路が株式市場から「退出」することになった。清水建設が日本道路を完全子会社化し、親子上場を解消するのに伴う。
日本道路の完全子会社は既定路線か
清水建設は5月14日、日本道路に対してTOB(株式公開買い付け)を行うと発表し、翌15日から買い付けを始めた。清水建設は現在、日本道路株の50.11%を保有する。TOBを通じて残る株式を取得し、完全子会社化する。親子上場をめぐって利益相反などの問題点が指摘されることも背景にある。
取得金額は552億円。TOBが成立すれば、日本道路の東証プライム市場への上場は廃止となる。

日本道路は1929年に日本ビチュマルス舗装工業として設立。日本道路舗装を経て1947年に現社名となった。清水建設は1954年に増資を引き受けて日本道路株約25%を取得。以来、この持ち株比率をキープしてきたが、2022年にTOBを実施して持ち株比率を50%超に引き上げ、連結子会社とした。
日本道路をグループの一員として名実ともに位置付けることを狙いとした。子会社化の時点で日本道路の上場(当時は東証1部)は維持されたものの、次のステップとして親子上場解消に向けた完全子会社化が既定路線とみられていた。
大手8社で上場は東亜道路、世紀東急だけに
道路舗装業界では大手8社がトップグループを形成する。NIPPO、前田道路、日本道路が上位3社に並び、鹿島道路、東亜道路工業、大成ロテック、大林道路、世紀東急工業が続く。売上高はトップのNIPPOが4615億円(2025年3月期)、最下位の世紀東急が993億円(同)と開きがある。
8社中、上場企業は非公開化が予定される日本道路を別にすると、東亜道路、世紀東急の2社のみだ。残る5社も鹿島道路を除けば、以前は上場していた。
道路舗装業界を騒がせたのが2020年の一件。社名から分かるように、“身内”の間柄だった前田道路と前田建設工業のバトルだ。
前田建設は約24%の株式を保有し持ち分法適用関連会社としていた前田道路の子会社化に乗り出した。ところが、前田道路が賛同せず、敵対的TOBに発展した末、力ずくで子会社化(上場は維持)した経緯がある。
翌2021年、前田建設は前田道路、前田製作所との経営統合で共同持ち株会社のインフロニア・ホールディングス(HD)を設立。これに伴い、前田道路は東証1部上場から外れた。
さらに2022年には業界トップのNIPPOが東証1部上場にピリオドを打った。親会社で石油元売り最大手のENEOSホールディングスが米証券大手ゴールド・マンサックスと組んでTOBを行い、NIPPOを非公開化した。
ゼネコン、系列会社との連携を強化
道路舗装大手8社の顔ぶれをみると、NIPPOと独立系の東亜道路の2社を除き、いずれもゼネコン系列下にある。
業界内で動静が注目されるのは東急建設系列の世紀東急だ。東急建設は現在、約24%の株式を保有し同社を持ち分法適用関連会社としており、今後の出方に関心が集まる。
国・地方の公共工事で道路事業費の減少が続いているうえ、原油高で舗装材料のアスファルト合材・乳剤を中心とする原材料コストの上昇などが道路舗装各社の収益を圧迫。一方で、防災・減災の強化を目的とする「国土強靭化計画」を受け、道路施設の老朽化対策などの需要は堅調で、ゼネコン各社は系列の道路舗装会社との連携を強化する流れにある。
再編の動きが中堅・中小クラスにも波及
道路舗装業界の再編の動きは中堅・中小クラスにも波及している。2023年、準大手ゼネコンの戸田建設が85%余りの株式を保有していた系列の戸田道路(東京都中央区)を完全子会社化した。
また同じ年、道路舗装中堅の佐藤渡辺は高松コンストラクショングループ傘下のあすなろ道路(札幌市)を買収。こちらは北海道エリアでの事業拡大が狙いだ。
前田建設を中核とするインフロニアHDは先に、約940億円で三井住友建設を買収すると発表した。TOBを7月に始める。三井住友建設は中堅道路舗装の上場子会社として三井住建道路(東証スタンダードに上場)を抱えており、将来的にインフロニアHD傘下の前田道路との統合も想定される。
◎道路舗装業界の主なM&A
2005年 渡辺組と佐藤道路が合併し、佐藤渡辺が発足 2009年 大成建設、大成ロテックを完全子会社化 2010年 鹿島、鹿島道路を完全子会社化 2016年 コムシスホールディングス、東京舗装工業を子会社化 2017年 大林組、大林道路を完全子会社化 2020年 前田建設工業、前田道路を子会社化 2021年 前田道路が上場廃止(前田建設工業、前田製作所と経営統合) 2022年 NIPPO、上場廃止 〃 清水建設、日本道路を子会社化 2023年 戸田建設、戸田道路を完全子会社化 〃 佐藤渡辺、あすなろ道路を完全子会社化 2025年 (5月)清水建設、日本道路の完全子会社化を発表文:M&A Online
関連記事はこちら
・インフロニアHD、三井住友建設を買収へ 「東洋建設」の借りを返す
【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック