
ストライク<6196>は神戸市と共催で1月16日に、神戸市内のアンカー神戸でスタートアップと事業会社の提携促進を目的としたイベント「第34回 Conference of S venture Lab.」を開催した。「スタートアップは地域経済の起爆剤となるか?」をテーマにしたトークセッションのほか、スタートアップ2社によるピッチ、名刺交換会も行われた。
トークセッションのゲストに、国内ファンドのBIG Impact(東京都渋谷区)代表取締役CEOの細野尚孝氏と、総合人材サービスのパソナグループ<2168>の執行役員 成長戦略総本部ベンチャー本部副本部長で、神戸大学客員准教授/情報経営イノベーション専門職大学客員教授の塩谷愛氏が登壇、意見を交わした。
多くの起業家やファウンダーを生み出す
トークセッションの冒頭、BIG Impactの細野氏は、兵庫県と神戸市がアンカーLP(大口の有限責任組合員)のファンドを運営していると説明。同ファンドでは、スタートアップの支援だけではなく、海外の資金や人材などを集積させることをメインに取り組んでおり、すでに17社に投資を行い、最近は海外のスタートアップへの投資も進んでいるという。
先々の構想も明かし、「より規模が大きく、神戸に中核を置き、関西全体を投資対象にするような新たなファンドを立ち上げたい」と話した。
続いてパソナグループの塩谷氏は、現在2000人近い社員が淡路島に移住、もしくは現地採用で働いている状況を紹介。スタートアップ投資については「パソナグループにはもっと多くの起業家やファウンダーを生んでいきたいという思いがある。アイデアがあり、やる気がある人たちを支援している」と話した。
さらに現在、実施しているアイデアコンテストでは、これから創業を目指す人やシード期の企業、スケールアップを目指す企業などを対象に30億円の投資計画が進んでおり、同プロジェクトに対する理解と参画を求めた。
地域全体でスタートアップを盛り上げる
これまでの実績について話題が及ぶと、細野氏はファンドの投資先で、小型ドローンを使って狭小カ所を点検調査する事業を手がけるリベラウェア(千葉市)の事例を紹介。建設会社の新井組と業務提携し、協働して同社の狭小空間調査サービス事業を立ち上げたという。
大企業がスタートアップの製品を購入することはよくあるが、協力して事業化を目指す取り組みがあまりないことに触れ、「こういう事例が生まれると、地域経済や活性化や地域企業の価値向上につながる。今後も増やしていきたい」と強調した。
加えて、地域ファンドについては、地域全体でスタートアップを盛り上げていこうという機運が感じられるとしたうえで「神戸市は動きが活発で、非常に献身的にやっていただいている。
一方、塩谷氏は、パソナグループの投資先で、ロボットの研究者である大阪大学の石黒浩教授が社長を務め、インターネット上で自分の分身をキャラクター表示するアバターを活用して遠隔で接客対応する事業を手がけるAVITA(東京都目黒区)について紹介。
アバターセンターのある淡路島で日本ならびに世界の接客を行っているとし、淡路島で雇用したメンバーが接客しているという。「スタートアップとしてのAVITAを支援するとともに、雇用を作ることにセットで取り組んでいる」とした。
兵庫の成長分野はAI関連に注目
神戸での今後の成長分野について話が及ぶと、細野氏は航空宇宙産業とAI(人工知能)の2分野を挙げた。AIに関しては、マイクロソフトグループの世界で6番目のR&D(研究開発)の拠点が昨年、神戸市内に立ち上がったことを指摘。国内外からスタートアップが集まることが予想され、「そこに参画するようなスタートアップへの投資を積極的にやっていきたい。また、そこから生まれてきたスタートアップが海外に飛び出せるよう支援をしていきたい」と意欲を示した。
一方、塩谷氏は、パソナグループが淡路島で運営している「クレヨンしんちゃん」や「naruto」「ゴジラ」「ドラゴンクエスト」などのコンテンツからなるテーマパーク「ニジゲンノモリ」を取り上げた。この「ニジゲンノモリ」を題材に、スタートアップのテクノロジーを活用して、現地でしかできないようなフィールド作りや、ソーシャルセリング(SNSによって顧客との信頼関係を深め、商品やサービスを販売する手法)などを取り入れた新しい取り組みなどが実現できるのではないかと提案した。
スタートアップ2社がピッチ
第2部のスタートアップ企業によるピッチでは、中古住宅・リノベーション流通プラットフォーム「リノベ不動産」を運営するWAKUWAKU(東京都目黒区)の代表取締役でCEO co-founderの鎌田友和氏と、自動車や車両整備に関わる機器製造、コンサルティングを手がけるTCJ(東京都渋谷区)代表取締役の堀口哲矢氏がそれぞれのビジネスモデルをプレゼンテーションした。
文:M&A Online記者 松本亮一
『ダイヤモンドMOOK M&A年鑑2025』を100名様にプレゼント
発売にあたり、2025年2月28日までにご応募いただいた方を対象に抽選で100名様に『ダイヤモンドMOOK M&A年鑑2025』をプレゼント。
