
アパレル大手の三陽商会<8011>は10年後の2035年に、アッパーミドル(準富裕層)市場でのトップランナーを目指す長期目標を策定した。
同社は英国の有名ブランド・バーバリーのライセンス事業が2015年に終了し、翌年の2016年から営業赤字に陥っていたが、2025年2月期に3期連続で営業黒字を確保できたことから、拡大路線に舵を切り2035年に売上高1000億円(2025年2月期は605億2600万円)、営業利益100億円(同27億1500万円)を目指すことにした。
この目標達成のための手段の一つが、非連続な成長が見込めるM&Aで、今後3年間(2026年2月期~2028年2月期)に70億~100億円を投じ、新たな商標権の獲得や企業価値の向上につながる買収などを行う。
コスメ、雑貨、子供服なども対象に
M&Aでは、3年後の2028年2月期に目指す売上高700億円、営業利益50億円に向け、新たなブランドの獲得に乗り出す。
対象はEC(電子商取引)専業アパレルのほか、ファッションビル、ショッピングセンター、専門店を主販路とするブランドや、コスメ、雑貨、子供服、クリエイターブランドなどで、こうした事業を手がけている企業を幅広く探索する。
同社はこれまでM&Aとは馴染みが薄く、2018年にラグジュアリーブランドのECシステムの構築、運用や、マーケティング、フルフィルメント(受注から配送までの業務)などを手がけるルビー・グループを子会社化(2021年に売却)したほかには、M&Aに関する適時開示情報はなく、有価証券報告書の沿革にもM&Aの記載はない。
同社ではアパレルや雑貨、子供服などのほかにも、企業価値の向上につながるようなM&Aについては積極的に対応する方針で、長期目標達成に向けて掲げている海外展開のための戦略パートナーとの協業や、ユニフォーム、ペット用品などの新カテゴリーへの事業領域の拡張なども候補の一つとなりそうだ。
3期連続で営業黒字を確保
三陽商会は、2015年の秋冬シーズンにバーバリーブランドのライセンス事業が終了(春夏シーズンは販売)したことで業績が悪化。2015年12月期は売上高が12.2%減少し、営業利益は35.6%減少した。
翌2016年12月期は、バーバリーブランドの販売が全てなくなったため売上高が30.6%減と大幅に減少。この減収に伴う減益に加え、中止ブランドの在庫評価損などに伴う費用がかさんだことから、営業損益は84億3000万円の赤字(前年同期は65億7700万円の黒字)に陥った。
その後も業績は回復せず赤字が続いているところにコロナ禍が加わり、2022年2月期まで6期連続(決算期変更により2020年2月期は14カ月の変則決算)で営業赤字となった。
2023年2月期は、ようやくコロナ禍の影響が薄らぎ、アパレル、ファッション業界の市況が回復傾向に転じたほか、インバウンド(訪日観光客)需要の増大などもあり、7期ぶりに営業黒字を確保。その後も需要の回復に伴って2025年2月期まで3期連続で営業黒字を確保している。

群を抜くM&A投資
成長投資については、M&Aのほかにも「ブランド成長投資」として、ブランド価値向上のための店舗、システム、マーケティングなどへの投資を強化し、さらに「新たな成長戦略」として、既存ブランドの事業領域の拡張のほか新規自社ブランドの開発、海外展開などにも振り向ける計画だ。
投資額は「ブランド成長投資」が23億~40億円、「新たな成長戦略」が5億~30億円で、M&A(70億~100億円)が群を抜いており、M&Aにかける期待の大きさが、うかがわれる。
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文:M&A Online記者 松本亮一
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