
住宅や環境、樹脂などの事業を展開する積水化学工業<4204>は、デイサービス(要介護者を支援する日帰りのサービス)やサービス付き高齢者向け住宅(介護や医療などのサービスを提供する高齢者向けの住宅)などを手がける子会社をファンドに売却するとともに、同ファンドに出資する。
積水化学では「高齢者事業への直接的関与から間接的関与に移行する」としており、直接運営の高齢者事業から撤退する。
訪問介護や、デイサービス、有料老人ホームなどの高齢者向け事業は人手不足や物価高、競争の激化などにより厳しい環境下にある。
また積水化学の適時開示情報によると、2017年に硬質ウレタン原液製造のソフランウイズを子会社化した後、2023年の塩ビ管・継手事業の譲り受けまでの6年間は、子会社や事業の譲渡を4件実施しており、事業構成の最適化に取り組んでいることがうかがわれる。
今回の子会社譲渡の決断には、こうした業界の動向や事業戦略などが関わっていると言えそうだ。
ロールアップ戦略による発展を支援
積水化学では、子会社のヘルシーサービス(千葉市)と、セキスイオアシス(名古屋市)が高齢者事業を手がけている。
ヘルシーサービスは、首都圏を中心にグループホーム(高齢者が支援を受けながら一般住宅で生活する施設)や小規模多機能型居宅介護(要介護者が在宅での生活が継続できるように支援するサービス)、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、訪問介護などを手がけており、2024年3月期の売上高は29億6000万円だった。
セキスイオアシス(名古屋市)は、名古屋市でデイサービスや小規模多機能型居宅介護、サービス付き高齢者向け住宅の運営などを行っており、2024年3月期の売上高は2億9000万円。
2025年1月に、セキスイオアシスの事業をヘルシーサービスに譲渡し、同年4月にヘルシーサービスの全株式を、未上場企業への投資や投資助言などを行っているマウンテンキャピタル(東京都新宿区)が2024年12月19日に設立した、ヘルスケアファンドのマウンテンキャピタル1号投資事業有限責任組合に譲渡する。
合わせて同ファンドに出資をし、同ファンドが実施するロールアップ戦略(複数の中小企業を買収し、統合することで一つの大きな企業として成長を目指す手法)などによって譲渡子会社が発展することを支援する。

訪問介護やデイサービスの倒産が最多に
東京商工リサーチによると2024年1月から10月までの訪問介護や、デイサービス、有料老人ホームなどの「老人福祉・介護事業」の倒産件数は145件で、これまで年間最多だった2022年の143件を上回った。
人手不足や物価高に加え、大手事業者や大手異業種の参入で競争が激化しているためで、小規模、零細事業者中心に倒産が増加しているという。
東京商工リサーチでは「今後、国や自治体の本格的な指導・支援がなければ、小・零細事業者の淘汰が加速する可能性が高い」としている。
文:M&A Online記者 松本亮一
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