「芝浦機械」製品の単体売りからシステム販売への移行を目指す理由

成形機や工作機械などを手がける芝浦機械<6104>はM&Aを活用して、システムエンジニアリング事業(製品の単体売りではなく、制御を含めたシステムで販売する事業)を強化する。

同社の顧客となる製造業では自動化や省力化のニーズが高く、こうしたニーズに応えることで、企業規模の拡大とともに、高付加価値商品を増やし利益率を高めるのが狙いだ。

すでに2024年には生産設備製造のポッカマシン(愛知県岩倉市、現テクノリンク)を子会社化しており、今後、ポッカマシンと同様の企業や事業を中心にM&Aを進める。

これによってこれまでほとんど無かったシステムエンジニアリング事業の売上高を2027年3月期には50億円に、2031年3月期には100億円に拡大する。

同社では2027年3月期までにM&Aに100億~300億円を投じる計画で、案件規模によっては借り入れも含めてさらに増額する方針だ。

自動化に加え欧州もターゲット

芝浦機械は、制御技術やスカラロボット(水平方向にアームが動作する産業用ロボット)などのロボット技術を軸に、社内外の技術を集約して、自動化や省力化などの課題を解決できる体制の構築を目指す。

子会社化したポッカマシンは、飲料、食品、製薬、航空機、自動車、コンピューター関連など多くの業界の生産設備に携わっており、自動化や省力化装置に関するノウハウや顧客基盤を有している。

この資産を活用して、芝浦機械のシステムエンジニアリング事業の拡大をはじめ、成形機(射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機)や、工作機械(大型機、門形機、横中ぐり盤、立て旋盤)でも提案型の販売を強化する。

今後のM&Aについては、このポッカマシン同様の案件が中心となる見込み。その一方で、同社では欧州市場での事業拡大にも関心を示しており、海外M&Aも並行して検討を進める。

こうしたM&Aをはじめ、サービス事業の強化や生産体制の増強などにも取り組み、2027年3月期に2000億円(2024年3月は1606億5300万円)、2031年3月期には3000億円の売り上げを目指す計画だ。

対応できなければ厳しい状況に

芝浦機械はこれまでM&Aはあまり行ってこなかった。

主な案件は2012年のインドのプラスチック加工メーカーのL&T Plastics Machineryの子会社化や、2015年の油圧機器メーカーのハイエストコーポレーションのナブテスコへの譲渡などで、ポッカマシンは12年ぶりの企業買収だった。

製造業は技能伝承や生産年齢人口の減少、人件費の高騰などの問題を抱えており、自動化や省力化、さらにはターンキー(すぐに生産ができる完成状態での引き渡し)などに対するニーズが強い。

成形機や工作機械などを手がけるメーカーでは、こうしたニーズに応えられる高性能機器の開発が進んでおり、対応できない企業は厳しい状況に陥ることが予想される。

芝浦機械は2027年3月期までに設備投資に330億円を投じる計画で、M&Aにはこれと並ぶ最大300億円を見込むとともに、案件次第ではさらに上積みする方針だ。

これまであまり実績のないM&Aを積極化させる背景には、製造業の自動化や省力化に対するニーズの強さがある。ポッカマシンに次ぐM&Aはそう遠くはなさそうだ。

「芝浦機械」製品の単体売りからシステム販売への移行を目指す理由
芝浦機械の沿革と主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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