「スマレジ」PMIを加速 在庫切れなどのトラブルを防ぐシステムを投入

タブレット端末などを用いたPOS(販売時点情報管理)レジ「スマレジ」事業を展開するスマレジ<4431>が、2024年12月に子会社化したEC(電子商取引)に特化した在庫、受注管理システムを手がけるネットショップ支援室(東京都港区)のPMI(M&A後の統合作業)を加速させている。

EC事業者に販路を拡大

EC戦略を推進しスマレジの競争優位性を強化するのが狙いで、2025年6月にネットショップ⽀援室が提供するEC⼀元管理システム「アシスト店⻑」とスマレジの機能を連携し、過剰在庫や在庫切れといったトラブルを未然に防ぐシステムの販売に乗り出した。

これによって複数チャネルの売り上げや顧客データをアシスト店⻑で集約、可視化し、優良顧客を抽出できるほか、顧客⼀⼈一人に合わせた精度の高い販促施策を講じることができるようになる。

今後、EC事業者に販路を拡大するほか、POSとECサービスのクロスセル(購入した商品に関連する別の商品の追加販売)やアップセル(上位機種への誘導)による顧客単価向上に取り組む。

さらにネットショップ支援室が持つカートシステム(ECサイトでの商品選択、決済、注文などの一連の流れを支える仕組み)の、受発注、出荷、納品、請求、決済などのBtoB取引が可能な「楽楽B2B」や、ステップメール(スケジュールに沿って段階的送信されるメール)や顧客分析、リピート販売に特化した「楽々リピート」との連携なども見込める。

M&Aを積極的に推進

スマレジは「顧客数の獲得」「顧客単価の向上」「ITエンジニアの獲得」の三つをM&A戦略として掲げており、今後も事業シナジーのある企業を中心にM&Aを積極的に進めていく方針だ。

顧客数の獲得では、顧客獲得のスピードアップやターゲット領域拡大につながるクラウド系POSベンダーがM&Aの対象で、「顧客単価の向上」ではスマレジを機能的に補完できる企業や、クロスセル(スマレジ・タイムカードなどのスマレジとは別の商品の販売)、アップセル(無料プランから有料プランへの誘導など)につながる、店舗向けソフトウエア企業を探索する。

さらに「ITエンジニアの獲得」では、web系エンジニアを保有するシステム開発会社やSIer(システムインテグレーター=ITシステムの企画から運用、保守までを一括して請け負う事業)、制作会社などでM&Aを検討するとしている。

「スマレジ」PMIを加速 在庫切れなどのトラブルを防ぐシステムを投入

多様なサービスを展開

スマレジは2005年に、大阪市内でジェネフィックス・デザインとしてスタート。2011年にクラウド型POSレジ「スマレジ」をリリースした。

その後2012年に飲食向けオーダーエントリーシステム「スマレジ・ウェイター」を公開したのに続き、2013年に店舗用品専門の通販サイト「STORE STORE」を立ち上げ、2014年にクラウド型勤怠管理システム「スマレジ・タイムカード」を公開するなどして業容を拡大。2016年に現在のスマレジに社名を変更した。

M&Aについては2015年に決済企業ブルーを子会社化(2017年に吸収合併)したのを手始めに、2021年にマルチ決済サービス「PAYGATE」を開発、提供するロイヤルゲート(2022年に吸収合併)を、2024年にリグアから接骨院向け業務ソフト「レセONEプラス」事業を取得した。

POSレジ市場はクラウド化とDX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)の加速により競争が激化しており、スマレジでは2024年にターゲット層を拡大(飲食店などの店舗数が従来は2~39店舗だったのを2~99店舗に拡大)するなどして対応している。

基本機能を無料で提供しているほか、勤怠管理の「スマレジ・タイムカード」や、オーダーエントリーシステムの「スマレジ・ウェイター」、キャッシュレス決済サービスの「スマレジ・PAYGATE」などの多様なサービスを展開しているのが強みだ。

2025年4月期の売上高は110億6600万円(前年度は83億8500万円)、営業利益は23億7500万円(同17億3500万円)。

2026年4月期は売上高138億5900万円(前年同期比25.2%増)を見込んでおり、営業利益については、ネットショップ支援室の取得に伴い発生したのれんについて、取得原価の配分が未完了のため、予想はレンジ形式を採用し、28億400万円(同18.1%増)~29億5400万円(同24.4%増)としている。

文:M&A Online記者 松本亮一

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
M&A速報、コラムを日々配信!
X(旧Twitter)で情報を受け取るにはここをクリック

編集部おすすめ