
賃貸ビルやマンション販売などを手がける東京建物<8804>は、ゴルフ場や愛犬同伴型リゾートホテル、温浴施設(スーパー銭湯)などのサービス事業の拡大にM&Aを活用する。
M&A件数や買収資金などの具体的な数値は公表していないが、自社による新しい施設の開発と並行して「M&Aの手法を用いて事業規模拡大の機会を探索する」としており、M&Aが順調に進めば、サービス事業の事業利益(営業利益+持分法投資損益等+固定資産売却損益)が6年後には一気に3倍ほどの240億円にまで拡大する可能性がある。
新規施設の増加を積極化
東京建物は千葉県東庄町の東庄ゴルフ倶楽部や、埼玉県日高市のJゴルフ鶴ヶ島、兵庫県加東市の東条ゴルフ倶楽部など全国に12のゴルフ場を運営しており、年間来場者数は約64万人に達する。
冷房カートの導入などによる顧客満足度の向上や、レストランの自社運営化による収益機会の増加などに取り組んでいる。
また、温浴事業では東京都、埼玉県、神奈川県でスーパー銭湯「おふろの王様」10施設を経営しており、露天風呂をはじめ、美容と健康によいとされる十数種類の風呂や岩盤浴などを年間約427万人が利用する。
さらに、愛犬とともに宿泊できるホテルとして、神奈川県箱根町のレジーナリゾート箱根仙石原や、長野県軽井沢町のレジーナリゾート旧軽井沢など8施設を運営しており、年間利用者数は約12万人という。
同ホテルでは動物の専門教育を受けたスタッフが常駐しているほか、レベニューマネジメント(需要と供給によって価格を調整し、売り上げと利益を最大化させる手法)による価格の適正化や売上高の最大化に取り組んでいる。
いずれの事業も今後、積極的に新規施設の増加に取り組む計画で、施設利用料だけでなく、飲食や物販などの付帯事業で収益を高める計画だ。
サービス事業の利益が3倍に
東京建物は1896年に、旧安田財閥の創始者である安田善次郎氏が、不動産取引の近代化と市街地開発の推進を志して設立し、住宅ローンの原型となった割賦販売方式での不動産売買に着手したのが始まり。
2024年12月期に780億円の事業利益を見込んでおり、このうちビルの賃貸などの「賃貸事業」が30%、マンション販売などの「分譲・売却事業」が60%、ゴルフ場などの「サービス事業」が10%を占める。
これが2030年12月期には事業利益が1200億円に拡大し、構成比は「賃貸事業」が30%、「分譲・売却事業」が50~60%に、「サービス事業」が10~20%になる見込み。
このためサービス事業の事業利益は2024年12月期の78億円が、2030年12月期には2024年12月期比1.5倍の120億円から同3倍の240億円に増加する計算になる。
同社が2010年以降に適時開示した企業買収や事業譲受の案件は、2010年に日本パーキングの子会社化や、2021年のエキスパートオフィスの子会社化など6件の実績がある。
次に見込まれるサービス事業を大きく伸ばすM&Aとはどのようなものになるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
