
EV(電気自動車)や自動運転向け評価装置や、ソフトウェア開発支援などを手がける東陽テクニカ<8151>が、M&Aに大きく舵を切った。
同社は2009年に畜産酪農機器類販売のトーチクを譲渡した後は、長らくM&Aとは無縁だったが、2023年に医療ソフトウエア開発のレキシーの子会社化を機に、2024年のOTA(無線性能評価)計測事業を手がける米国AeroGT Labs Corporationの子会社化まで、1年半ほどの間に5件のM&Aに踏み切った。
さらに今後についても脱炭素やエネルギーをはじめ自動運転、海洋/防衛(測量無人ボートや船舶搭載用カメラなど)などが大きく伸びるとの見通しを踏まえ「事業成長を加速させるためにM&Aを積極的に推進する」との方針を打ち出しており、投資については全体の50%超をM&Aを含む成長分野に向ける方針だ。
東陽テクニカはどのようなM&A戦略を描いているのだろうか。

M&Aで50億円を上詰み
東陽テクニカが、M&Aのターゲットとしているのは「既存事業の成長を加速する技術や顧客基盤を持つ国内外企業」「新市場や新規事業への展開を可能とする国内外企業」「開発品の事業化を促進する開発、生産機能を持つ国内外企業」の3分野。
脱炭素や自動運転、海洋/防衛をはじめ、これまでにM&Aで取得してきた医療ソフトウエア、EMC(電磁両立性)試験受託サービス、ダイナモメーター(動力計)、流体制御装置、OTA(無線性能評価)計測などの分野もターゲットとなりそうだ。
2025年9月期から2027年9月期までの3年間に計画している投資額150億円のうち、これら分野でのM&Aをはじめとする成長投資に、半分強の85億円を振り向ける。
このした取り組みで2027年9月期は、オーガニック成長(自社の経営資源を活用した成長)で売上高を現在より100億円多い450億円に高め、さらにここにM&Aで50億円以上を上積みし 合計で売上高500億円以上を目指す計画だ。
さらに同社では長期ビジョンとして、2030年9月期に売上高600億円、営業利益75億円を目指す目標を掲げており、この目標達成にもM&Aが大きく関わることが予想される。
営業利益が2倍以上に
東陽テクニカの2024年9月期は、脱炭素に向けた研究開発投資の活況を受け、次世代電池やEV向け評価装置の売り上げが好調に推移したほか、米国や日本で自動運転や先進運転支援システム開発向けの大型評価システムが伸びた結果、売上高は過去最高の350億4200万円(前年度比24.4%増)を達成した。
買収した企業については、レキシー製品の販売が堅調だったことから、ライフサイエンス事業が好調に推移したほか、トーキン EMC エンジニアリング(現・東陽EMCエンジニアリング)は売り上げアップに寄与したものの、国内EMCシステムの大型案件の受注遅れなどから、EMC/大型アンテナ事業では前年実績を下回わった。
利益は増収効果に加え、利益率の高い大型案件などの影響で、営業利益は33億6600万円(同2.28倍)と2倍以上に伸びた。
ただ、2025年9月期は、2024年9月期に多くの案件が順調に進んだことや、前期からずれ込んだ案件もあり、売上高は330億円(前年度比5.8%減)、営業利益は24億円(同28.7%減)の減収営業減益を見込む。
同社では2025年9月期は経営の地固めの年と位置づけ、成長戦略達成に向け積極投資を行うとしている。次のM&Aはそう先のことではなさそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック