「ヤマハ」がシリコンバレーで本格活動を開始 スタートアップとの協業を加速

楽器大手のヤマハ<7951>が、米シリコンバレーでのスタートアップとのオープンイノベーション(社内外の技術やサービスを組み合わせて革新的な価値を創り出す取り組み)活動を本格化する。

2024年4月にシリコンバレーに設置した駐在員事務所を、2025年1月に法人化するとともに、2025年中にシリコンバレーにCVCファンド「Yamaha Music Innovations Fund, LP(仮称)」を設立する。

同社は2024年11月に業績予想を下方修正しており、2025年3月期は4期ぶりの減収、3期連続の営業減益に陥る見込みだ。

音楽ビジネスの新規領域に投資

駐在員事務所の設置から10月までの半年間に3件の米国企業との協業案件が成立し、早期に成果が現れたことから、駐在員事務所を法人に格上げすることにした。

これによって、シリコンバレーの状況に即時に対応できる独立した活動を可能にし、これまで以上に迅速な意思決定によってより多くの成果を目指す。

新会社ではこれまで通りの事業開発に取り組むとともに、新たに設立するCVCファンドの運営管理を行う。

一方CVCファンドは、既存の楽器や音響機器の分野に加え、音楽ビジネス全体に関わる新規領域や、これら新規領域に隣接する領域でも投資を行う。

新規領域の事例としては、音楽を作る上流では、商標や権利を持つ企業や、映像や音楽制作のAI(人工知能)技術を持つ企業などを対象にし、音楽を楽しむ下流では、ファンのコミュニティや、ファンによる制作や発信などに関わるビジネスを対象にする。

さらに上流と下流をつなぐ中流の領域でも、配信のためのプラットフォームや、配信の収益化などにつながる企業との協業を探る。

また、これら領域と隣接する領域としては、エンターテインメント、教育、アート、メディアなどをテーマに投資先の探索を進める。

投資枠は総額5000万ドル(およそ80億円)で、ヤマハでは投資先との共創によって「より幅広い顧客層の開拓と、多彩なサービスの提供を目指す」としている。

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業績予想は一旦上昇修正も下方修正に

ヤマハは2025年3月期第1四半期の業績が好調だったことから、2024年7月に通期の業績予想を上方修正し、売上高を4750億円(前年度比2.6%増)に、営業利益を445億円(同53.5%増)に引き上げていた。

ところが、中国市場でピアノをはじめとした楽器の販売が振るわないことから、同第2四半期に通期の売上高を4600億円(同0.6%減)に、営業利益を270億円(同6.9%減)に引き下げた。

売上高は2021年3月期以来の4期ぶりの減少で、営業利益は2023年3月期から3期連続の減少となる。CVCの設立は、業績好転を後押しする種を生み出せるだろうか。


「ヤマハ」がシリコンバレーで本格活動を開始 スタートアップとの協業を加速
ヤマハの業績見通し
2025/3は予想

文:M&A Online記者 松本亮一

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