
古代ローマ帝国を舞台に、剣闘士になった男の熱いドラマを描く大作映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が本日から公開されている。本作は、2000年製作の『グラディエーター』の続編で、20余年を経て、ついに続編が登場した。
ダグラス・ウィックは、1954年生まれの映画プロデューサーで、2000年の『グラディエーター』でもプロデューサーを務めた。
「リドリー・スコット監督は我々の世代における最高の映画監督のひとりです。彼の創造する世界はいつも素晴らしく、彼の描き出した古代ローマの世界に観客を誘うことができました。振り返ると、前作を映画会社に売り込みに行った時、『剣とサンダルの映画はもう古い。ダメだ』とキッパリ言われました。それはもう死んだジャンルだ、と。しかし、『ブレードランナー』や『エイリアン』を手がけたリドリーが、古代ローマの世界をどうやって作り上げ、どうやって描くのか、想像するだけで私はワクワクしました。結果的に物語、キャスティングなど、すべての要素が正しく機能し、前作は成功したと思います」

リドリー・スコット監督(写真左)
前作『グラディエーター』は興行的に大成功をおさめ、アカデミー作品賞を受賞。ウィックは製作者としてオスカー像を手にした。その頃から続編の話が出ていたが、製作陣は「同じ場所をグルグルとまわっていた状態でした」とウィックは笑顔で振り返る。
「続編をつくるために試行錯誤しました。
私たちは続編ではあるけど、あまり前作を参照しすぎない映画をつくりたいと思っていました。この映画から観ても楽しめる独立した映画として成立するものでなければならないと思っていたのです。そんな時、ヌミディア(北アフリカにあった地域)にいる男を主人公にするアイデアが出てきたのです。前作はラッセル・クロウが演じたローマの将軍が主人公でしたが、本作では主人公がペドロ・パスカル演じるローマの将軍に襲撃される。つまり、主人公の立ち位置が前作と正反対というアイデアです。さらにそこから数年を要しましたが、このアイデアが続編が実現する大きなきっかけになったと思います」

本作でも引き続き、リドリー・スコットが監督を務めることになった。出演者のデンゼル・ワシントン曰くスコット監督は「映画づくりのグランド・マスターで古典と歴史の教養のあるフィルムメイカー」だ。ウィックの私生活のパートナーで、これまでにスティーヴン・スピルバーグやフランシス・フォード・コッポラと映画をつくってきたルーシー・フィッシャーもデンゼルの意見にうなずく。
「その通りだと思います。興味深いのはスティーヴンもフランシスもリドリーも学校で歴史を専門的に学んだ人ではないんですよね。リドリーはアート・スクールで学んだ人ですから、本作も画コンテはすべて彼が描き、すべて絵の具で彩色されているんです。おそらく彼らは古典や歴史に個人的な関心や興味があって独学で学んでいるんだと思います。
さらにスコット監督は大規模な撮影であっても、驚異的なスピードで撮影を終えることで知られている。現場では常に8台のカメラが同時にまわり、複雑なシーンも次々と撮影していくという。
「達人と仕事をするとはこういうことなのか、と思いますね」とウィックは語る。
「彼は撮影が早いのですが、撮影の前にしっかりと準備がされていて、問題などは可能な限り準備段階で解決されているのです。ときどき撮影時に問題が発生することはありますが、リドリーは優れた頭脳の持ち主なので脚本や撮影のためのほとんどの問題は撮影前に解決されているんですよ。
さらに言うならば、彼の映画ではセットがすべて建てられています。ですから部分的に撮影して、あとでCGで背景を足すようなことはせずに、複数の俳優の演技を複数のカメラで一度に撮影できます」

フィッシャーは撮影現場で8台のカメラが同時に撮影している光景を目の当たりにして驚いたという。
「テントには8台のモニターが置いてあるのですが、私たちは見ているうちに“あれ? このカメラはどうなっているの? このカメラはどこを撮っているの?”と把握するのも大変なんです(笑)。でも、リドリーはすべてを把握していて、ちゃんと撮影しているんですよ」
大作映画にCGが活用されるのは当たり前の時代だ。「本作は、ここまで巨大なセットを実際に建てることができた最後の映画、ということになるかもしれません」とウィックは言う。昔ながらの映画の魅力をそなえた大作、映画館で観たくなる映画の登場だ。
「そうですね。私たちはこの作品を大きなスクリーンで体験してもらいたいと思っています。いくつかの地域ではIMAXなどの大きなスクリーンを持っている興行の方に映画をいち早く観ていただいて、スクリーンを確保していただきました。みなさんにもぜひ、映画館のスクリーンで体験してもらいたいです」
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
公開中
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