
2025年9月13日(土)より、南青山の根津美術館では『焼き締め陶ー土を感じるー』展を開催する。同館のコレクションを中心に、日本人が好んだ「焼き締め陶」の魅力を紹介する展覧会だ。
古くは古代の須恵器に遡る「焼き締め陶」とは、釉薬をかけずに高温で焼くことで、素地を固めたやきもののことをいう。後年「釉薬」を施した釉薬陶磁器が誕生したことなどから、焼き締め陶は陶磁器生産の最先端から外れるが、日本では主に茶の湯の世界で、その素朴な美しさが愛でられた。
たとえば有名な信楽焼は、13世紀後半より現在の滋賀県甲賀市周辺で生産された焼き締め陶。赤く発色した肌に長石などの白い粒や緑色の自然釉が美しく、江戸時代初期には釉薬を使う京焼の祖・野々村仁清も、焼き締め陶の写しを数多く制作した。

《備前平鉢》備前 日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
このほか、岡山県の備前焼や、三重県の伊賀焼など、国内を代表する焼き締め陶とともに、東南アジアや中国で生産された「南蛮物」のやきものも紹介する。同展で展示される《南蛮横縄水指》は16~17世紀のベトナム製で、やはり茶の湯の世界で賞翫された。また時代が下って近代になると、中世につくられた、野趣溢れる貯蔵用の壺や甕(かめ)が、コレクターたちを魅了した。
土の素朴な味わいと、無釉陶ならではのシャープな形、火や灰の動きによって偶然あらわれる窯変の魅力。焼き締め陶にテーマを絞った同展では「土を感じ、愛でる」という日本人独特の好みや美意識をあらためて感じることができるだろう。

《南蛮横縄水指》ベトナム 16~17世紀 根津美術館蔵
会期中は、期間限定で、3人の現代作家(打田翠、松永圭太、伊勢﨑晃一朗)の焼き締め陶を、同館庭園内の茶室で展観する『現代3作家による 茶室でみる焼き締め陶の現在』を開催する。作家ごとに会場となる茶室やスケジュールが違うので、詳細は美術館ホームページで確認を。
さらに展示室5では、鎌倉時代に大きな発展を遂げた絵巻物の世界を紹介する『中世の絵巻物』展が、展示室6では、9月の風情を茶道具で楽しむ『菊月の茶事』展が開催される。
<開催情報>
『焼き締め陶 土を感じる』
会期:2025年9月13日(土)~10月19日(日)
会場:根津美術館
時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(9月15日、10月13日は開館)、9月16日(火)、10月14日(火)
料金:一般1,300円、大高1,000円 ※オンライン日時指定予約
根津美術館 公式サイト: https://www.nezu-muse.or.jp/