
若い代表戦士たちは経験不足を言い訳にせず、結果を追い求めていた。『アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ 2024』初戦に向けて、カナダで準備を進めるラグビー日本代表の若手たちはオンライン取材を実施。
まずは李である。
「夏のシリーズ、主に出た課題のターンオーバーやセットピースの修正と、今回カナダ戦はフィジカリティとどんどんボールを動かし続けることをテーマにこの合宿では挑んでいる。本当にいいラグビーできている。自分たちからモーメンタムを作り、ボールを動かすことができている。そこでフィニッシュまで取り切れるか。今日も最後ミスしてフィニッシュできないシーンもあったので、カナダ戦はボールを動かし続けてどれだけフィニッシュまで持っていって、スコアできるかがキーになる」
取り切れない要因を聞かれると。
「ひとつはスキルの精度やコミュニケーションの問題があるが、ゴール前に行った時、取り急いでいる部分がある。焦って、チームではなく個人で取ろうとしている。カナダへ来てもそこを重点的にやっているが、チームのシステムをどれだけ徹底できるか、どれだけみんなが同じページを見て動けるかをやっている」
10番としていかに超速ラグビーを担うのか?
「チームのアイデンティティ、軸にあるのがスピードを持ってボールを動かし続ける超速ラグビーであるが、80分間やり続けるのは難しい。試合の最初の20分、間の40分、フィニッシュの20分と分けて、しっかり自分たちがやるべきことを明確にし、10番としてもしっかりコントロールする。ボールを動かしたり、コンテストキックを使ったり、3点を狙いにいったり、ゲームの80分通してのマネジメントが大事になってくると思うし、自分自身もっと成長していかないといけない」
李は自身のキーポイントにコミュニケーションを挙げた。
「自分が思っていることを伝える、相手と要求し合うことが大事だと思っている」
『アサヒスーパードライ PNC 2024』は優勝がマストだと李はキッパリ。
「自分もチームも自信を失っていない。負けが続くとネガティブな雰囲気なってしまう時もあるが、自分たちがやろうとしているラグビーを全員が信じているし、勝てるんだと思っている。カナダ戦、『PNC』は勝利して優勝しないといけないと思っている。若いチームなので、ひとつの勝利でぐんと成長するチャンスがある。カナダ戦は勝つことがマストだと思っている」
さらに李は「世界ランキングは関係ない」と続けた。
「世界ランキングは全く関係ない。日本代表がはじまって以来、最も若いチームと言ってもいいぐらいなので、アウェイでもあるし、チャレンジャー精神を持っていくことが大事」

竹内柊平 (c)スエイシナオヨシ
続いて、竹内だ。竹内も『アサヒスーパードライ PNC 2024』優勝はマストだと同意した。
「もちろん『PNC』という大会は優勝がマストだと思っている。国外の試合のカナダ戦を負けて、日本へ帰るわけにはいかない。スクラムから超速を生む、ラインアウトから超速を生むと我々はテーマにしている。
竹内はスクラムの新ルールについても言及した。
「新しくルールが変わって、レフリーが示してから30秒以内に組まないといけないので、これは日本に有利なルールかなと思っている。相手に走り勝つのが我々のラグビー。相手に合わせるのでなく、早くセットして自分たちの強い形で組むのが自分たちの超速ラグビー」
竹内はスクラムのマインドセットを重視する。
「(課題は)スクラムの中のマインドセットの部分だと思う。僕はスクラムで結構落ちるのだが、なぜ落ちるかと言うと『ヒットに行きたい』という思いが強すぎて、ヒットに勝っているが、足を伸び切って、落ちている。コーチから『しっかりコントロールすること。スクラムだけではなく、マインドもコントロールすること。それが強いスクラムにつながる』と言われた。それが顕著に出たのがイングランド戦の後半のスクラム。
イングランド戦で好感触を得たスクラムだが、ジョージア戦、イタリア戦では押された。
「経験の差が出た。テストマッチで『経験がない』と絶対言っちゃいけないが、経験の差があった。次のカナダもセットプレーから流れ持ってくるチームなので、この試合は僕にとって重要だと思う。『スクラムは勝ったら3番のおかげだし、負けたら3番のせい』と(浦安)D-Rocksのバズ(浅原拓真)さんに言われて育っているので、今スクラムが負けている現状は僕が負けているということ。右、左とくる相手にどういうスクラムを組むのか。相手がどういうスクラムを組んできても、自分たちのスクラムをしっかり組めるようにしていくのが自分たちのDNAだと思うので、しっかり組んでいきたい」

原田衛 (c)スエイシナオヨシ
若きリーダーのひとりである原田はサマーシリーズの課題をこう振り返った。
「アタックの部分で得点を取り切るところがサマーシリーズを通してあまりできなくて、ミスで終わってしまったのが多かったり、ターンオーバーが多かったので、それが『PNC』の課題」
カナダで重点的にトレーニングしている点は?
「キックカウンターの部分でボールを奪われることが多かったので、キックカウンターのところはトレーニングしている」
体格で勝るカナダとどう戦うのか、原田の見立ては。
「体格が大きいし、フィジカルで僕らに対抗してくると予想されているので、日本としてもフィジカルで負けることなく、ボールを動かしてスコアを取り切る。デカい相手を動かして、スペースにボールを運ぶこと」
『アサヒスーパードライ PNC 2024』でアピールしたい点を聞かれると。
「今回のシリーズでアピールしたいのはボールキャリー、ボールをもらう回数を増やして、インパクトを残せればと思っている。前回のシリーズでももうちょっとこうアピールできたかなと思っていたので、ディフェンスもハードになってくるが、そこでいかにゲインできたり、モーメンタムを生めるかが次の課題」

ティエナン・コストリー (c)スエイシナオヨシ
最後はコストリーの出番である。
「チームとしてフォーカスしているのはフィジカリティ。ゴールデンエフォート、いいことを続ける、すぐに立ち上がる、セットプレーのこの3つを重点的にやっているので、その3つをやっていきたい」
『リポビタンDチャレンジカップ 2024』イングランド戦で初キャップをマークしたコストリーは確かな自信を手にしたと言う。
「自分的には不安な気持ちや心配があったが、試合に出て、国際レベルを感じて少し自信が付いた。これからメンタルや準備の部分は成長しないといけない。自分のフィジカリティ、タックル、どれだけ激しくできるかもう少し成長しないといけない」
代表デビューを果たして、さらなる欲も生まれた。
「試合前は心配するが、試合に出て強い相手と試合をして発見したのは私はラグビーをしたいし、この強い相手に勝ちたいし、チームとして個人として成長したいということ。マオリ・オールブラックスに勝った時の気持ちはうれしかったので、イングランドやジョージアにも勝てるように、トレーニングして勝ちたいというハングリーな気持ちが強くなった。ただジャパンに参加するだけではなく、もっともっと貢献したい」
コストリーは桜のジャージへのプライドを垣間見せた。
「ジャパンはここで大学に行かせてもらって、いい生活をさせてもらっているので、その恩を返すため、桜のジャージのプライドを持って全力でプレーしたい」
コストリーもまたカナダ戦での必勝を誓った。
「フィジカルなチームなので、たくさんモールしてくるので、モールディフェンスで相手を圧倒して、相手のセットプレーを壊して、フィジカリティでドミネートすればいい試合できると思うので、フィジカリティを土台にジャパンの超速ラグビーをしてぜひ勝ちたい」
『アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ 2024』の組み分けはプールAがフィジー、サモア、トンガ、プールBが日本、アメリカ、カナダ。日本代表は8月25日(日)・カナダバンクーバーでのカナダ戦、9月7日(土)・熊谷スポーツ文化公園 ラグビー場でのアメリカ戦を経て、ファイナルシリーズへ。
取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
パシフィックネーションズカップ2024 プール戦 プールB 日本代表vsアメリカ代表のチケット情報
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