広瀬すず主演『ゆきてかへらぬ』40年の時を経て映画化された“幻の脚本”の製作秘話公開
左より)田中陽造(脚本)、根岸吉太郎(監督)

2月21日(金) より映画『ゆきてかへらぬ』が公開される。



本作は「文化の百花繚乱」が咲き誇る大正時代を舞台に、実在した女優の長谷川泰子、詩人の中原中也、評論家の小林秀雄という男女3人の壮絶な愛と青春を描いた作品。

広瀬すずが主演を務め、木戸大聖と岡田将生が共演。『探偵物語』『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』の根岸吉太郎監督が16年ぶりにメガホンを取った。



今回、根岸監督と脚本家・田中陽造のオフィシャルコメントが到着。40年の歳月を経て、ついに映画化が実現した“幻の脚本”の製作秘話が明かされた。



鈴木清順による「大正浪漫三部作」(『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』)の脚本を手掛けた田中陽造が、同じ大正時代を舞台に書き上げたのが、『ゆきてかへらぬ』の基となる脚本だった。田中がこの脚本を書いたのは、詩人・金子光晴の愛人の聞き書きを基にした映画『ラブレター』の後で、今から40年以上も前のことだという。しかし、この企画は様々な事情で頓挫し、その後も多くの監督やプロデューサーが映画化を熱望したものの、長い間実現に至らなかったことから、知る人ぞ知る“幻の脚本”として語り継がれるようになった。



時は流れ、今から20年以上前、『遠雷』や『探偵物語』で知られる名匠・根岸吉太郎が、この“幻の脚本”に出逢うことになる。根岸もまた、この脚本に恋した監督のひとりであり、「滅多にない優れたシナリオ」と賞賛し、次のように語っている。



「田中さんのシナリオは常に文学性に富んでいるけれども、ここにはシェイクスピア的な“運命が登場人物たちを動かしていく”力強さがあり、まずそこに惹かれました。ひとりの女とふたりの男。その火花の散るような人間関係。

火花が散ったまま、追い込んでいくし、追い込まれていく。つまり、3人はそれを“選んでしまう”。非常に才能に優れた3人の秘めた強さ、個性。そこでは磁力と反発力が働いていたんです」。



広瀬すず主演『ゆきてかへらぬ』40年の時を経て映画化された“幻の脚本”の製作秘話公開

その後、偶然に再会したふたりの会話から、ついに今回の映画化企画が再始動することになる。田中はそのときのことを振り返る。「今回の映画化の話は突然で、驚きでしたよ。やっぱりそういう過去があったから、ああ根岸、火中の栗を拾っちゃったな、と(笑)」。そして、数年前から本格的に『ゆきてかへらぬ』の企画が再始動し、ふたりの手によって40年前の脚本の書き直し作業が始まった。



田中が書いた元の脚本は、本作でトータス松本が演じる謎の男・鷹野叔が狂言回し的に登場し、泰子や中也の運命をかき回すというストーリーだったが、数年間におよぶ推敲作業を経て、泰子・中也・小林の3人の関係性に焦点を当てた物語へと変容していった。



田中は、根岸との作業について、「脚本の直しはやりましたが、監督と話したのはそのときくらいですね。まあ、こんなに語らない監督と脚本家って(鈴木)清順さん以来じゃないですか? 清順さんはまったくホンのことはおっしゃらない。

直しも出さない。根岸はタチ悪いんで、直しは出す(笑)」と、当時の制作過程を楽し気に語っている。



根岸は完成した本作について「誰もが逃れられない人生の一時期“青春”において、3人が才能を認め合っていたことは大きい。特に小林は中也の才能を尊重しつつ、人間として愛してもいたと思う。白黒つけない関係性というのかな。そこも含めて感覚が鋭敏な人たちの物語です」と語っている。



<作品情報>
『ゆきてかへらぬ』



2月21日(金) 公開



公式HP:
https://www.yukitekaheranu.jp/



(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

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