
新進アーティストを支援する公募プログラム「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」を2006年から主催している東京・銀座の資生堂ギャラリーで、2024年の第18回目の公募で入選した作家3名の個展が開催される。大東忍展が3月5日(水)から4月6日(日)まで、すずえり(鈴木英倫子)展が4月16日(水)から5月18日(日)まで、平田尚也展が5月28日(水)から6月29日(日)まで、それぞれ約1カ月の展示となる。
同プログラムの特徴は、ポートフォリオの審査を経て選ばれた3名入選者に個展の機会が与えられることだ。各作家は、ギャラリーのキュレーターのサポートのもと、作品テーマや表現を深めながら制作に取り組み、さらに設営を担うインストーラーや照明技術者、広報担当者の協力を得て、歴史ある銀座のギャラリーでの個展を実現することになる。延べ51名(組)となるこれまでの入選者は、ここでの本格的な個展を大きな糧として、その後も活躍の幅を広げてきた。

すずえり《Birds without Borders》2023 「The Process」Harvestworks, Govenors Island
今回の審査のポイントは、急激に変化する今日の世界を独自の視点で見つめ、時代が抱える不安や困難に真摯に向き合い、そこから新しい価値観や美意識を表現しているかどうか。応募総数291件の中から、大東忍(だいとうしのぶ)、すずえり(鈴木英倫子)、平田尚也(ひらたなおや)の3名が入選した。
大東は、見知らぬ過疎地や住宅地を歩き、祖先を供養する行事でもある「盆踊り」を踊ることで、そこに佇む気配を読み取り、風景の中に残る人々の営みを探求してきた作家。今回は、木炭画と映像を接続しながら、時間をかけて紡いできた物語を描くことで風景の供養を試みる。ピアノや自作の回路を通信機器で接続し、その表象に物語性を見出す作品を発表してきたすずえりは、Wi-FiやGPSなどの礎を開発したと言われる発明家でもあったハリウッド女優ヘディ・ラマーの波乱の生涯に焦点を当てる。一方、デジタルテクノロジーによって身体そのものの仮想化が進むなか、アバターを通して人間の身体性やアイデンティティを探求する平田は、「身体という表面に宿る魂の在りか」を探る考察を試みる。

平田尚也《十把一絡げ #1(cap)》2023
社会の様々な変化と向き合いながら、現代の人間の在り方を見つめ直したそれぞれの作品は、観る者に新たな気づきをもたらしてくれることだろう。と同時に、今後の活躍が楽しみな若き作家たちの個展に立ち会えるという点でも興味深い。
<開催概要>
『第18回 shiseido art egg』展
会期:
第1期展 大東忍展 2025年3月5日(水)~4月6日(日)
第2期展 すずえり展 2025年4月16日(水)~5月18日(日)
第3期展 平田尚也展 2025年5月28日(水)~6月29日(日)
会場:資生堂ギャラリー
時間:11:00~19:00 、日祝は18:00まで
休館日:月曜
公式サイト:
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/?rt_pr=trr74