Lucky Kilimanjaro/熊木幸丸インタビュー「お客さんと一緒に空間を作るのが僕らのスタイルであり、コミュニティだと思う。そこは大事にしていきたい」
熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro) Photo:石原敦志

Text:森朋之 Photo:石原敦志



Lucky Kilimanjaroが結成10周年を締めくくる全国ツアー『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “YAMAODORI 2024 to 2025”』をスタートさせる。ファイナルは、初の幕張メッセ公演(2025年2月16日(日) 千葉・幕張メッセ国際展示場 4・5ホール)だ。



6月から7月にかけて全国ツアー『Lucky Kilimanjaro presents. 自由“10”に踊ろう TOUR』を行い、7月にEP『Dancers Friendly』、10月に『Soul Friendly』をリリースするなど、アニバーサリーイヤーを駆け抜けているラッキリ。今年の夏以降の活動、現在のバンドのモード、全国ツアー“YAMAODORI 2024 to 2025”の展望などについて、フロントマンの熊木幸丸(vo)に聞いた。



――Lucky Kilimanjaroにとって2024年は結成10周年のアニバーサリーイヤー。6月から7月にかけて全国ツアー『Lucky Kilimanjaro presents. 自由“10”に踊ろう TOUR』を開催しましたが、手ごたえはどうでしたか?



10周年というテーマを持って回ったツアーだったんですが、今のLucky Kilimanjaroがやろうとしていること、“踊る”ということをどう定義するか? をみんなと一緒に共有できたのかなと思っていて。「10年やってきたよかった」という思いもありましたけど、どちらかというと「面白いことができている」「まだやりたいことがいっぱいある」ということも確認できたのかなと、振り返ると思いますね。



Lucky Kilimanjaro/熊木幸丸インタビュー「お客さんと一緒に空間を作るのが僕らのスタイルであり、コミュニティだと思う。そこは大事にしていきたい」

――この先の可能性を感じた、と?



そうですね。「将来的にはこういうふうにしたい」「こんな感じで踊ってほしい」だったり。ダンスミュージック、音楽で踊ることの可能性を感じたツアーでしたし、あとはやはりお客さんのレスポンスですかね。自分たちの音楽を楽しんでくれて、向き合ってくれている。そのことを実感できたのは本当にありがたいし、感謝ですね。



――ラッキリのオーディエンス、本当にいい雰囲気ですよね。オープンマインドで楽しんでいて。



各地のメディアの方にも同じことを言っていただきます。お客さんと一緒に空間を作るのが僕らのスタイルであり、コミュニティだと思うし、そこは大事にしていきたいです。夏のツアーだけではなくて、僕らは“自由に踊ろう”ってずっと言い続けてきたんですよ。お客さんも「仕方ねえ、自由に踊るしかねえか」みたいな感じで浸透してきたのかなと(笑)。



――浸透するまでに時間がかかった?



メジャーデビューのタイミングでコロナ禍になりましたからね。全然踊れなくなりましたし、右肩上がりというわけにはいかなくて。でも、去年くらいからフェスの本数がすごく増えて、その中でラッキリのことを知ってくれた人も多いんじゃないかなと。ライブにおけるお客さんの反応もすごくよくなったし、その中から生まれたコミュニティなんだと思います。



Lucky Kilimanjaro/熊木幸丸インタビュー「お客さんと一緒に空間を作るのが僕らのスタイルであり、コミュニティだと思う。そこは大事にしていきたい」

――そもそも日本のオーディエンスは“自由に踊る”のが苦手なイメージもありますが……。



そこはあまり気にしていないですけど、周りの目が気になったりして、自由に楽しめなくなるのはイヤだなと思いますね。もちろん踊り方は何でもいいんですけど、音楽を受け取ったときの反応を素直に出せるというのが大事なので。それをお互いに尊重し合える空間にしたいという気持ちも強いです。



――ライブでそういう体験をすれば、普段の生活にも影響がありそう。



そうなったらいいですよね。人生って意外と何でもいいというか(笑)、どうにでもなると思ってるんですけど、なぜかルートが決まってるように見えてしまうじゃないですか。全然違う道を歩いてみたり、その先で誰かと一緒に歩くのも楽しいし、そういう可能性を感じられるライブ空間になればいいなと思っているので。そういうことを考えるようになったのは、ここ2~3年なんですけどね。ダンスミュージックが持っている人と人のつながりというか。ダンスミュージックの起源を考えると当然の帰結ではあるんですけど、僕も30代になって「自分1人の力でできることは限られてるな」と思うようになって。最初から「1人でやってやるぞ」と思ってたわけではないんですけど、人とのつながりのなかで生きていくのが人生の本質なのかなと。人生は自分だけでプレイするゲームではないですし、そこを捉え間違えてしまうと、「何かを手に入れてもずっと孤独」ということが起こり得るかもしれないなと。みんなで何かをやったり、共有することそのものが喜びになるという感覚ですね、今は。



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――バンドはまさにそうですよね。



バンドって、それ自体がコミュニティなんですよね。

作曲は僕がやってますけど、メンバーの意見も入っているし、どうでもいいことを話している時間とかがあるからこそ、安心して曲を書けるのかなと。バンド自体もどんどん変化しているんですよ。ライブを重ねる中で音楽の楽しみ方が広がっているし、グルーヴの捉え方、何を表現するか? ということについても、1年前とは全然違うので。ライブの反省会も結構しっかりやってるんです。



――ストイックですよね。ラッキリはめちゃくちゃ踊れるバンドですが、メンバーは決してパーティピープルではないというか。



そうだと思います、僕も含めて。どんな人もそうだと思うんですけど、パーティピープル的な要素と、ちょっと暗い要素の両方を併せ持っている気がするんです。僕もそうで、ハウスやテクノのパーティで盛り上がることもあるし、家の中で曲が書けなくてイラついているときもあって。それは自分たちの音楽にも出ていると思います。



――7月にはEP『Dancers Friendly』がリリースされ、そして10月にはEP『Soul Friendly』が続きます。コンセプトの違う2作を続けてリリースするのは、どうしてなんですか?



ラッキリの音楽を改めて考えたときに、当然ダンスミュージックの機能はあるんですけど、その一方で僕はグッとくる音楽、シンプルに言うと“泣ける音楽”も好きなんです。

ソウルミュージックもそうですし、ポストロックやマスロックもそうなんですけど、自分の中の暗い面に対して何かを与えてくれる音楽も聴いてきたので。



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――ざっくり言うと“踊る音楽”と“グッとくる音楽”に分けてみようと。



それを混ぜるのが僕らのスタイルだし、アルバムではその中でバランスを取っていますけど、今回はあえて分けてみようと思ったんです。『Soul Friendly』は10月末のリリースで、何なら今もアレンジを進めているんですけど(笑)。



――制作時期が完全に違うんですね。



そうですね。『Dancers Friendly』を作っていたときは、それだけに集中して。今年の初めくらいに資料というか、「自分の中ではこういうニュアンスなんだよね」というプレイリストを作ったんですよ。リファレンスの曲もそうだし、自分で組んだビートも含まれているんですけど、それをひたすら聴きながら、いろいろとアイデアをためていって。制作に入ったら、パッと作っちゃいましたけど。



――あまり時間をかけず?



そうですね。即興的なところもあるし、ずっと作っていると飽きるんですよ(笑)。

リスナーの人たちとの関係性に興味があるというか、リリースしてからどうなるか? が大事なので、できるだけ早く出したい。もちろん作品としてもしっかりと聴いてほしいですけど、その先にあるつながりを大切にしたいんですよね。『Dancers Friendly』の曲もすごくいい反応をもらっていますし、次のツアーの中でどう機能するか楽しみです。



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――『Dancers Friendly』の楽曲は、歌詞もすごく興味深くて。踊りながら思考を促す効果もあるのかなと。



ダンスミュージックなので考えすぎても良くないと思うんですけど(笑)、「“楽しけりゃいいよね”だけじゃないよね」というところもあるんですよ。悲しさや悔しさに触れることも必要だし、“楽しい”だけじゃない感覚を持って歌詞を書いているというか。例えば「かけおち」(『Dancers Friendly』)だと、「みんな、楽しいことを選ぶの躊躇しているんじゃない?」みたいな感じが基になっていて。「笑顔でいるのはダサい」という雰囲気を薄っすら感じているし、「楽しいことに対して、もっと素直でいい」という曲を書きたかったんです。『Dance Friendly』全体にそういうテーマがあるかもしれないですね。もっと素直に喜んだり、楽しんだりしたいよねっていう。



――サウンドメイクも独創的ですよね。

ラッキリが得意とする生バンドのグルーヴとテクノ、ハウスを融合させた楽曲はもちろん、「Ran-Ran」のようなちょっとコミカルな音像の曲もあって。



ポップですよね。アメリカのVulfpeck(ヴルフペック)というバンドが好きなんですけど、彼らみたいにポップなメロディをダンスミュージックに取り入れてみたら面白いかなと。ジョー・ダート(Vulfpeck)みたいなベースを弾きながら作ってみたんですけど、こういう曲で「ウダウダ言ってないで、楽しむしかない」みたいな暴力性があると思うんですよね。それがいいなと。



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――熊木さん自身がリスナーとして「いいな」と感じたことがラッキリの曲につながっていく。そういうことも多いんですか?



はい、ありますね。自分の中で「面白いな」とか「楽しい」と思える曲しか作らないというのは、ずっとそうで。「こういうのがウケるだろうな」という感じで作っても、「出したくない」って思ってしまう気がするんです。少なくとも自分の中で「この曲にはこういう面白さがある」という曲しか出していないし、それは精神衛生的にもすごく大事だと思っています。バズったりしても別に幸せにならないだろうし、曲を書いて、ライブやって、美味しいごはんを食べられたらそれで十分というか。やりたいことをやり続けるだけで楽しいですからね、音楽は。



――10月にリリースされるEP『Soul Friendly』はどうなりそうですか?



『Dancers Friendly』とはかなり違うと思います。ダンスミュージックであることは同じなんですけど、コンセプトをしっかり分けることでしかできなかったであろう曲がたくさん出てきているので。



――『Soul Friendly』というタイトルからは、ゆったりしたグルーヴで、メロウで……というイメージもありますが。



印象としてはそうかもしれないですけど、そこに留まらない作品になっていると思います。
個人的には「僕はこういう音楽が好きなんだよね」というEPなのかなと感じていて。『Dancers Friendly』は挑戦的なところもあるんですが、『Soul Friendly』は「こういうサウンド感、好きだな」というところが大きくて。Lucky Kilimanjaroでそういう部分をしっかり出したことは意外と少ないので、新鮮な作品になっていると思います。



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――熊木さんの素に近い?



というより、自由に作った感じですかね。ダンスミュージックというとハウス、テクノのイメージがあると思いますけど、曲によってはそこから外れてもいいというか。改めて自分の音楽的な価値観を見直すきっかけにもなったのかなと。ロックでもR&Bでもカントリーでもブルースでも、踊れると思うんですよ、本来は。今はハウスやテクノを意識して作ることが多いけど、将来的にはもっと拡張したいと思っていて。そうすれば音楽の楽しみ方自体が広がっていくんじゃないかなって。



――そして11月からは結成10周年を締めくくる全国ワンマンツアー『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “YAMAODORI 2024 to 2025”』がスタート。ファイナルは、初の幕張メッセ公演(2025年2月16日(日) 千葉・幕張メッセ国際展示場 4・5ホール)です。



幕張に関しては、まだ他人ごとです(笑)。ただ、会場の大きさはあまり関係ないのかなと思っていて。演出的なギミックなんかもあるんでしょうけど、結局はお客さんとコミュニケーションを取ることが一番大事ですし、それは幕張でもライブハウスでも変わらないので。なので幕張もいつも通りやろうと思っています。ツアー全体に関しては『Dancers Friendly』『Soul Friendly』を踏まえて、今のラッキリのモードを表現する場になるのかなと。“YAMAODORI”は毎年秋から冬にかけて行っているツアーの名前なんですけど、初めての人も、ずっと踊ってくれる人も新鮮に楽しめるライブにしたいです。



――Lucky Kilimanjaroは、ライブイベント『PIA MUSIC COMPLEX 2024』(11月9日、10日 神奈川・ぴあアリーナMM)にも出演。ラッキリは10日に登場します。



アリーナでのライブ自体が初めてなんですよ。どんなライブになるか、僕らも楽しみですね。



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<リリース情報>
EP『Dancers Friendly』



発売中



【収録曲】
01. Dancers Friendly
02. かけおち
03. High
04. Find you in the dark
05. 獣道 兵が踊る
06. Ran-Ran



配信リンク:
https://lnk.to/lk_dacersfriendlyNR



Lucky Kilimanjaro「かけおち」Official Music Video



EP『Soul Friendly』



2024年10月30日(水) リリース
※詳細は後日発表



<ツアー情報>
『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “YAMAODORI 2024 to 2025”』



■2024年
11月17日(日) 金沢 EIGHT HALL
11月23日(土) 高松 MONSTER
11月29日(金) 広島 CLUB QUATTRO
12月1日(日) 熊本 B.9 V1
12月20日(金) 札幌 Zepp Sapporo
12月22日(日) 仙台 SENDAI PIT



■2025年
1月13日(月・祝) 大阪 Zepp Osaka Bayside
1月19日(日) 福岡 Zepp Fukuoka
1月26日(日) 名古屋 Zepp Nagoya
2月16日(日) 千葉 幕張メッセ国際展示場 4・5ホール



【チケット料金】
金沢・高松・広島・熊本公演:5,600円
札幌・仙台・大阪・福岡・名古屋公演:6,000円
千葉公演:7,800円



※2F指定席あり:札幌・大阪・福岡・名古屋
※ドリンク代別(千葉公演は除く)
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=F3300032(https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=F3300032&afid=P66)



特設サイト:
https://fc.luckykilimanjaro.net/feature/tour_yamaodori2024to2025



<イベント情報>
『PIA MUSIC COMPLEX 2024』



11月9日(土)・10日(日) 神奈川 ぴあアリーナMM
開場10:00 / 開演11:00
※Lucky Kilimanjaroは10日(日) のみ出演



【出演】
11月9日(土):打首獄門同好会/Age Factory/KOTORI/ハルカミライ/ハンブレッダーズ/FOMARE/04 Limited Sazabys/BLUE ENCOUNT/Maki/ヤバイTシャツ屋さん



11月10日(日):Aqua Timez/indigo la End/KANA-BOON/Chevon/乃紫/FRUITS ZIPPER/フレデリック/マルシィ/森 大翔/Lucky Kilimanjaro



【チケット情報】
1日券:11,000円(税込)
2日券:20,000円(税込)
1日券(学割):9,000円(税込)
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451696(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451696&afid=P66)



特設サイト:
https://piamusiccomplex.com



Lucky Kilimanjaro公式サイト:
https://luckykilimanjaro.net/



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