
2025年度の「ローレンス・オリヴィエ賞」の4部門にノミネートされた舞台『千と千尋の神隠し』。このたび、ノミネートされたクリエイターたち(ノミニー)によるコメントが到着した。
ローレンス・オリヴィエ賞は、その年にイギリスで上演された演劇、オペラ、ダンス、ミュージカルに与えられる、世界的に最も権威ある演劇賞のひとつ。
舞台『千と千尋の神隠し』は、2024年4月から8月にイギリス・ロンドン・コロシアムでロンドン公演が実施され、日本人キャストによる日本語での海外上演としては演劇史上最大規模、また東宝株式会社主催公演としても史上初の試みとなり、ウェストエンド最大級となる客席数約2,300席を連日満席にし、約30万人を動員した。このロンドン公演が今回のノミネートにより、ロンドンで高く評価されたことが改めて証明された。授賞式は、現地時間2025年4月6日(日) に、イギリス、ロイヤル・アルバート・ホールで開催される。

上白石萌音 舞台写真(2024年)

川栄李奈 舞台写真(2024年)

福地桃子 舞台写真(2024年)
翻案・演出を務めたジョン・ケアードは、「受賞の結果にかかわらず、スタジオジブリ、東宝、PWプロダクションズのパートナーシップがこのような形で認められたことを心から嬉しく思います」と喜びを明かし、「私たちが共に作り上げたこの舞台は、日英双方の観客に深く受け入れられる作品となったように思います。この作品が、末永く続いていきますように!」とコメントを寄せた。なお、舞台『千と千尋の神隠し』は、2025年7月から8月に中国・上海での上演を予定している。
「ローレンス・オリヴィエ賞」2025年度ノミネート
■最優秀新作演劇作品賞(エンタテインメント部門)/Best New Entertainment or Comedy Play
舞台『千と千尋の神隠し』
Spirited Away
■最優秀美術デザイン賞/Best Set Design
ジョン・ボウサー(美術)、トビー・オリエ&デイジー・ビーティー(パペットデザイン)、栗山聡之(映像)
Jon Bausor for Set Design, Toby Olié & Daisy Beattie for Puppetry Design and Satoshi Kuriyama for Projection Design
■最優秀衣裳デザイン賞/Best Costume Design
中原幸子(衣裳)
Sachiko Nakahara
■最優秀音響デザイン賞/Best Sound Design
山本浩一(音響)
Koichi Yamamoto
■翻案・演出:ジョン・ケアード コメント全文
舞台『千と千尋の神隠し』における仕事が評価され、オリヴィエ賞にノミネートされたことを、大変光栄に思います。
受賞の結果にかかわらず、スタジオジブリ、東宝、PWプロダクションズのパートナーシップがこのような形で認められたことを心から嬉しく思います。
このノミネーションは、日本、イギリス、アメリカのクリエイティブチームと、キャスト、スタッフ、プロデューサー陣、すべてのメンバーが一丸となって生み出した、卓越したコラボレーションの証です。
私たちが共に作り上げたこの舞台は、日英双方の観客に深く受け入れられる作品となったように思います。
この作品が、末永く続いていきますように!
■共同翻案:今井麻緒子 コメント全文
初めて映画を見た時から、『千と千尋の神隠し』は次から次へと予期しなかった場所へ私を連れていってくれます。
■美術:ジョン・ボウサー コメント全文
オリヴィエ賞の最優秀美術デザイン賞にノミネートされたことを大変光栄に思います。宮﨑監督の伝説的な世界を舞台上で再構築するという、この素晴らしい経験ができたことにも感謝しています。
しかし、この舞台美術は、私のデザインを形にしてくださった職人の皆さんの才能なくして実現することはできませんでした。舞台セットの建設、塗装、小道具制作、エンジニアリング、プロダクションマネージャー、プロデューサー、製図担当者、アソシエイトの中根聡子さん、通訳の河井麻祐子さん、そして公演中にまるで歌舞伎の黒衣のように見えない存在として舞台を支え、回転する舞台装置を巧みに操ってくださった素晴らしい国際的なステージクルーの皆さんに、心から感謝しています。
また、イギリスのチームが日本のオリジナル公演に敬意を持ち、情熱を注いで取り組む姿や、それを生み出した日本のクリエイターたちの誇り、そしてこの世界的に愛される物語にイギリスの観客が反応する様子を見ることができたのは、本当に喜ばしい経験でした。
■パペットデザイン:トビー・オリエ コメント全文
舞台『千と千尋の神隠し』のパペットがオリヴィエ賞にノミネートされたことは、本当に嬉しく、また、私とデイジー、そして数多くの制作者たちとの創造的なコラボレーションの賜物であることを誇りに思います。本公演のクリエイティブチームは、日本とイギリスのアーティストが見事に融合したものでした。私たちが共有した経験や技術が掛け合わさることで、想像をはるかに超えた、より壮大で魅惑的な作品を生み出すことができたと感じています。
■パペットデザイン:デイジー・ビーティー コメント全文
オリヴィエ賞にノミネートされたチームの一員であることを、大変光栄に思います。これは、海を越えた両国のチームが本公演に注いだ努力と情熱の証です。
イギリスと日本、それぞれの優れたアーティストと共に創り上げたこの舞台は、これまで携わった作品の中でも最も壮大なもののひとつとなりました。
この作品が世界中の観客に喜びを届けながら旅を続けていく姿を見るのは、本当に胸が躍る思いです。
■映像:栗山聡之 コメント全文
●ノミネートされたことについての感想
ビデオが舞台美術の一端を担っていたと評価していただけたことは自分にとってこの上なく嬉しい。
●ロンドンでの舞台作りでの思い出、達成感を得たことなど。
UKチームが素晴らしく、とても良い関係性の中クリエイションができた。
結果、日本で技術的にクリア出来なかったことがUKチームの提案で実現できたり
時間のない中ギリギリまで最大限のクリエイションを、一緒に取り組んでくれたことが嬉しかった。
なにより、ジョン・ケアード、ジョン・ボウサーとご一緒できたことがこの幸運の始まりでした。
■衣裳:中原幸子 コメント全文
●ノミネートされたことについての感想
オリヴィエ賞の衣裳賞にノミネートされたことは、創造性と情熱が結実した瞬間であり、想いが届いた証として大変光栄に思います。舞台の魔法を引き出す衣裳が評価されることは、創作の喜びを共有する瞬間でもあります。今後もさらなる挑戦を続けていきたいです。
●ロンドンでの舞台作りでの思い出、達成感を得たことなど。
文化の交差点であるロンドンで、多様な視点や技術が融合していく過程はとても刺激的で、心躍る挑戦の連続でした。
■音響:山本浩一 コメント全文
音響は照明やセットデザイン、衣裳と比べると目に見えない要素が多く、賞にノミネートされる機会は多くありません。その分、今回のノミネートは大変嬉しく感じています。東京から観に行った仲間から、「楽しんで音を創っている感じがした」と感想をもらいましたが、これは私にとって最高の褒め言葉です。いろいろトラブルもありましたが、約2週間のロンドン滞在は多くの発見に満ちた時間となりました。
機材のデジタル化が進み、スイッチひとつでシーンがリコールできる時代になった今、私がこだわっているのはアナログ的なアプローチです。特にオペレーターが毎日本番を楽しめるプラン作りを大切にしています。
『千と千尋の神隠し』でも、デジタル機械に完全に任せないで、オペレーターが手動で音像を調整し、音量をコントロールできる余地を意識的に残しました。
舞台における「良い音」は、チームワークから生まれるものだと思います。
音響機材のサポートだけでなく、毎日のティータイムで美味しい紅茶をご馳走してくださったSound Qu iet Timeのロブさん、そして彼のチームの皆さんに心から感謝いたします。
ありがとうございました。
<舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演>
2024年4月30日(火)~8月24日(土)
ロンドン・コロシアム 全135公演
原作:宮﨑駿
翻案:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子
オリジナルスコア:久石譲