日常のリアルを切り取る。マームとジプシー『Dream a Dream』
マームとジプシー「Dream a Dream」

4月に自身初となる長編小説「T/S」(筑摩書房)を上梓した藤田貴大率いるマームとジプシーの新作が5月2日(木)より上演される。東京・LUMINE0での『Dream a Dream』だ。



自身の記憶や原風景をテーマに、誰とも似ない手ざわりの作品を作り続けてきた藤田貴大。2023年から約1年間にわたり、地元である北海道伊達市とその周辺地域のリサーチを行い、改めて史実という側面から地元をモチーフにした作品を制作。リサーチの過程で知った、自分が生まれ育った土地で起きた第二次世界大戦末期の凄惨なできごとを出発点に今年2月『equal』を上演した。



今回の『Dream a Dream』は、『equal』とつながりをもちながらも、まったく別の切り口による、新たな作品だという。リサーチを通じて得たものだけでなく、自身の地元にいた頃の記憶や感覚を重ねつつ、「藤田が日々過ごす中で見聞きする些細な出来事、自身を含む同世代がそこに感じるであろう感情や違和感、等身大の視点から見える日常のリアルを切り取る」という今作。『equal』では史実を織り交ぜながら、会いたいけれどもう会えない人の「不在」が描かれていた。

『Dream a Dream』は『equal』と同じくキャストは6人だが、召田実子を除き役者は異なる。ここではどんな物語が、どのような演出で描かれるのか、期待が募る。



また、会場ロビーでは「四月生まれの、ひび」と題された展示も行われる。「ひび」は、マームとジプシーの活動に共感する人々を集め、舞台製作の現場体験を重ねて藤田貴大との作品発表をめざすプロジェクト。2016年にはじまり、年度ごとにメンバーを集めて活動を続けてきた「ひび」は、劇団とは異なるつながりであり、独自の試みだ。「四月生まれの、ひび」は、4月1日から30日間、ひびがそれぞれのテーマをもって1日1日積み重ねてきた作業を展示するものだという。

演劇に対する取り組みとして、活動そのものも、その発表形態も興味深い。



文:釣木文恵



<公演情報>
マームとジプシー「Dream a Dream」



作・演出:藤田貴大



出演:
石井亮介 伊野香織 小椋史子
小泉まき 船津健太 召田実子



音楽:山本達久



2024年5月2日(木)~5月6日(月・休)
会場:東京・LUMINE 0



チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2413093(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450895&afid=P66)



公式サイト
http://mum-gypsy.com/wp-mum/