
東京・歌舞伎座の令和7(2025)年8月興行を盛り上げる松竹創業百三十周年「八月納涼歌舞伎」第三部で上演される『野田版 研辰の討たれ』の配役が発表された。
『野田版 研辰の討たれ』は、十八世中村勘三郎とのタッグで新しい歌舞伎を生み出してきた野田秀樹の脚本・演出による、野田版歌舞伎の第一弾として平成13(2001)年8月の歌舞伎座「納涼歌舞伎」で初演され、大きな話題に。
新たな配役での上演となる今回は、主役・守山辰次を十八世中村勘三郎の長男・中村勘九郎が初役で演じるほか、平井九市郎を市川染五郎、平井才次郎を中村勘太郎、八見伝内を市川中車、粟津の奥方萩の江/姉娘およしを中村七之助、家老平井市郎右衛門を松本幸四郎、僧良観を中村扇雀が演じる。
■野田秀樹 コメント

「お父さんはもっと…」
歌舞伎役者は、その血筋が大切であるという理由からよく「サラブレッド」などと競馬の馬扱いされることがあります。今回の芝居のキャスティングを見ながら、まさにそんなことを感じます。この馬こそ、あの何々という名馬の子供だみたいな感慨でしょうか。おそらく初演(2001年)再演(2005年)をご覧になったお客様は、その楽しみと特権で「お父さんはもっと…」とか「お父さんだったら…」とか「お父さんの方が…」とか、兎に角、前世代の名馬の一世を風靡した姿の方が良かったあ、と言いたいがために観劇なさったりするものです。けれども、松竹という厩舎から雇われた戯作者であり演出家である私は、そうは言わせない心意気です。この新しい世代のサラブレッドたちもサラブレッドである所以をお見せできるような、そんな舞台に仕上げようと思っております。因みにではございますが、私一人だけ姑息にも、このサラブレッドたちの世代交代の波と違うところで相変わらず調教師を務めさていただいております。それは何より私ひとりが、サラブレッドの家系ではない証でございます。…ごめんあそばせ。
野田秀樹
【あらすじ】
守山辰次は元は刀の研屋で、殿様の刀を研いだ縁で侍に取り立てられたものの、武芸はまったく駄目。
<公演情報>
歌舞伎座 松竹創業百三十周年「八月納涼歌舞伎」第三部
【上演演目】
『野田版 研辰の討たれ』
作:木村錦花
脚色:平田兼三郎
脚本・演出:野田秀樹
【出演】
守山辰次:中村勘九郎
平井九市郎:市川染五郎
平井才次郎:中村勘太郎
八見伝内:市川中車
粟津の奥方萩の江/姉娘およし:中村七之助
家老平井市郎右衛門:松本幸四郎
僧良観:中村扇雀
2025年8月3日(日)~26日(火)
会場:東京・歌舞伎座
8月12日(火)、20日(水) は休演
「歌舞伎美人」公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/