パリ・オペラ座バレエ団の新鋭エトワール、ブルーエン・バティストーニが語る“祝祭の舞台” 〈バレエ・スプリーム〉の魅力
ブルーエン・バティストーニ (Photo:Shoko Matsuhashi)

世界最高峰の2大バレエ団――パリ・オペラ座と英国ロイヤル・バレエから選抜されたスターたちが競演する夢の舞台〈バレエ・スプリーム〉が、この夏ついに8年ぶりに対面で復活する。その“オペラ座チーム”としてBプロ・Cプロに出演するのが、就任から1年余りで存在感を際立たせる新鋭エトワール、ブルーエン・バティストーニだ。

近年『マイヤリング』『シルヴィア』『眠れる森の美女』など幅広いレパートリーで観客を魅了し、踊りと表現における深化を続ける彼女が、今作で共演するパートナーとの信頼関係、ヌレエフ作品への思い、心身のバランスの保ち方、そして「バレエ・スプリーム」という“祝祭の舞台”への意気込みを語ってくれた。



さまざまなパートナーと共に、自分の芸術を追求できた幸せなシーズン

――ブルーエンさんがエトワールに就任されて1年あまりが経ちました。昇進によって、どんな心境の変化がありましたか?



この年齢でエトワールになれたことは、大きな自信につながっています。もちろんプレッシャーも感じますが、たくさんの経験ができたことへの感謝の気持ちが何より大きいですね。さまざまな役を踊り、さまざまな方の指導を受け、さまざまなパートナーと組むことで自分の芸術を追求できたのは、エトワールになれたからこそ。本当に幸せなシーズンでした。



――特に印象的な作品があれば教えてください。



まずは『マイヤリング』。マリー・ヴェッツェラというドラマチックな役柄は大きな挑戦でしたが、本番ではステップのことは忘れて、本当に物語世界の中にいるような感覚で踊ることができたんです。次に『眠れる森の美女』。以前『白鳥の湖』で指導を受け、とても良い関係を築くことができたクロード・ド・ヴルピアンが、またも私の中からたくさんのものを引き出してくださいました。そして『シルヴィア』。シルヴィアはずっと出ずっぱりだから(笑)、終わった時に大きな達成感が味わえますし、全幕作品では初めてパートナーを組んだポール・マルクを完全に信頼して踊れたことも思い出深いですね。



パリ・オペラ座バレエ団の新鋭エトワール、ブルーエン・バティストーニが語る“祝祭の舞台” 〈バレエ・スプリーム〉の魅力

Photo:Shoko Matsuhashi

――マクミラン振付の『マイヤリング』と、ヌレエフ版の『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』とでは、踊る際の感覚が随分違うのはないかと思います。



そうですね。マクミラン作品は『マイヤリング』と『マノン』しか経験がありませんが、どちらもとても演劇的で、ステップよりも物語が重要。ヴァリエーションのあとにお辞儀をすることも、観客のほうを見ることもありません。舞台に出ている間じゅう、ほかの登場人物たちと会話を続けているような気持ちになるというのは、ほかの作品とは全く違う感覚です。一方、物語はシンプルでよく知られてもいるから伝えやすいけれど、ステップが本当に難しいのがヌレエフ作品。ほかのバージョンとは身体の使い方が違うからすぐには踊れないですし、かなりの体力も必要です。でも面白いことにヌレエフ版って、一度身体に馴染むと、もうほかのバージョンは踊れないような気持ちになるんですよ(笑)。



――そして『シルヴィア』では、改訂振付を手掛けたマニュエル・ルグリさんご本人の指導を受けられたとか。



素晴らしい経験でした。振付家本人とリハーサルをすること自体、私にとっては初めてでしたし、マニュエルのような偉大な方から指導を受けられるのは本当に得難い経験です。マニュエルはとても優しく、そしてエネルギッシュな方。

私はどちらかというと落ち着いたタイプというか、落ち着き過ぎているところがあるのですが(笑)、マニュエルとご一緒したことで、エネルギーを分けていただいたように感じています。



英ロイヤル・バレエ団との共演に胸躍らせて

――お忙しいシーズンだったと思いますが、その中で身体と心の健康を保つために心がけていたことは?



身体に関しては、週に1~2回、バレエ団でジャイロトニックのクラスを受けています。バレエ団には、ほかにもピラティスや筋トレなどのクラスがあって、それぞれが自分の身体に必要なエクササイズを選べるのが有難いですね。でも私が心がけているのは、幸い大きなケガをしたことがないこともあって、身体よりも心のケア。以前は、感情が高ぶる役を踊ったりすると、家に帰ってもすぐには切り替えられずにずっと考え続けてしまうことがありました。バレエと私生活をきちんと分けて、家にはトウシューズを持ち帰らず、休みの日やオフシーズンには頭と心をしっかり休ませるようになってから、ダンサーとしても成長した気がしています。



――今回の〈バレエ・スプリーム〉では、先ほどもお話にあったポール・マルクさんと『エスメラルダ』などを踊られます。改めて、ポールさんはどんなパートナーですか?



パリ・オペラ座バレエ団の新鋭エトワール、ブルーエン・バティストーニが語る“祝祭の舞台” 〈バレエ・スプリーム〉の魅力

Photo:Shoko Matsuhashi

彼とは踊りの相性が良いだけでなく、とても気が合うんです。ふたりでリハーサルをする時は、ついおしゃべりをしてしまうことを見越して、スタジオを少し長めに予約するほど(笑)。私たちは同世代ですが、私がカンパニーに入った頃に彼はもう大きな役を踊っていたので、こんなふうに一緒に踊れるようになるなんて全く思っていませんでした。ですから今も、親しくなれたとはいえ変わらず敬意を持ち続けていますし、一緒に踊れることが当たり前だとも思っていない。今回の公演でも、彼のパートナーとしてふさわしい踊りができるよう、そして観客の皆さんに喜びをもたらせるよう精いっぱい頑張ります。



――Bプロで共演する英国ロイヤル・バレエ団には、どんな印象をお持ちですか?



私がエトワールに任命された『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』でパートナーを組んでいたのが、実はロイヤルのマルチェリーノ・サンベなんです。そのリハーサルのためにロイヤルに行った時にたくさんのダンサーと知り合い、素晴らしい方々が揃っていることを実感したので、共演できるのが本当に楽しみ。合同で上演する『ラ・バヤデール』は、私たちはヌレエフ版、ロイヤルはマカロワ版をレパートリーにしている演目ですが、どちらかに寄せるにしろ中間を見つけるにしろ、とても興味深い試みですよね。



――最後に、公演を楽しみにしている日本の皆さんにメッセージをお願いします。



パリ・オペラ座バレエ団の新鋭エトワール、ブルーエン・バティストーニが語る“祝祭の舞台” 〈バレエ・スプリーム〉の魅力

Photo:Shoko Matsuhashi

東京文化会館は、私がガルニエとバスティーユに次いでよく立たせてもらっている舞台。いつも温かく歓迎してくださる日本の皆さんの前でまた踊れることを、今から心待ちにしています。ふたつのカンパニーから才能あふれるダンサーたちが集まる、この独創的でお祭りのような公演で、一緒に楽しい時間を過ごしましょう!



文:町田麻子
取材協力:チャコット代官山本店



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<公演情報>
バレエ・スプリーム



【Aプロ】(ロイヤルチーム出演)
 8月1日(金)18:30
 8月2日(土)14:00
 8月3日(日)14:00

【Bプロ】(オペラ座チーム&ロイヤルチーム合同公演)
 8月5日(火)18:30
 8月6日(水)18:30
 8月7日(木)18:30

【Cプロ】(オペラ座チーム出演)
 8月9日(土) 14:00
 8月10日(日) 14:00
 8月11日(月祝) 14:00

会場:東京・東京文化会館


プログラム
【Aプロ】(ロイヤルチーム出演)

●『マノン』より第1幕の出会いのパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
出演:サラ・ラム、ウィリアム・ブレイスウェル

●『ドン・キホーテ』
振付:マリウス・プティパ
出演:マヤラ・マグリ、セザール・コラレス

●『海賊』
振付:マリウス・プティパ
出演:金子扶生、ワディム・ムンタギロフ

●『真夏の夜の夢』
振付:フレデリック・アシュトン
出演:フランチェスカ・ヘイワード、ウィリアム・ブレイスウェル

●『ジゼル』
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー
出演:マヤラ・マグリ、マシュー・ボール

●『アポロ』
振付:ジョージ・バランシン
出演:金子扶生、ワディム・ムンタギロフ

●『アフター・ザ・レイン』
振付:クリストファー・ウィールドン
出演:サラ・ラム、マシュー・ボール

●『ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー』
振付:クリストファー・ウィールドン
出演:フランチェスカ・ヘイワード、セザール・コラレス

●『パリの炎』
振付:ワシリー・ワイノーネン
出演:ヴィオラ・パントゥーソ、五十嵐大地

●『リーズの結婚』
振付:フレデリック・アシュトン
出演:ヴィオラ・パントゥーソ、五十嵐大地


【Bプロ】(オペラ座チーム&ロイヤルチーム合同公演)

[第一部]
●『白鳥の湖』第2幕より
振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ
出演:サラ・ラム、ウィリアム・ブレイスウェル

●『コッペリア』
振付:ニネット・ド・ヴァロワ
出演:フランチェスカ・ヘイワード、セザール・コラレス

●『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
振付:ジョージ・バランシン
出演:マヤラ・マグリ、マシュー・ボール

●『グラン・パ・クラシック』
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
出演:ブルーエン・バティストーニ、ポール・マルク

●『カルメン』
振付:ローラン・プティ
出演:オニール八菜、アントニオ・コンフォルティ

●『ロミオとジュリエット』より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
出演:金子扶生、ワディム・ムンタギロフ

●『マノン』より第1幕の寝室のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
出演:パク・セウン、ポール・マルク

[第二部]
●『ラ・バヤデール』よりハイライト
振付:マリウス・プティパ

・第1幕のパ・ド・ドゥ
出演 
ニキヤ:サラ・ラム
ソロル:ウィリアム・ブレイスウェル

・第2幕より
出演
ガムザッティ:オニール八菜
ソロル:セザール・コラレス

・ブロンズ像のソロ
出演
アントワーヌ・キルシェール

・ニキヤの花かごのヴァリエーション
出演
パク・セウン

・第3幕より
出演
ニキヤ:ロクサーヌ・ストヤノフ
ソロル:アントニオ・コンフォルティ

・第3幕より
出演
ニキヤ:ブルーエン・バティストーニ
ソロル:マシュー・ボール

・第3幕より ヴェールのパ・ド・ドゥ
出演
ニキヤ:金子扶生
ソロル:ワディム・ムンタギロフ

・第3幕より
出演
ニキヤ:マヤラ・マグリ
ソロル:ポール・マルク


【Cプロ】(オペラ座チーム出演)

●『グラン・パ・クラシック』
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
出演:オニール八菜、ミロ・アヴェック

●『くるみ割り人形』より第2幕のグラン・パ・ド・ドゥ
振付:ルドルフ・ヌレエフ
出演:パク・セウン、ロレンツォ・レッリ

●『エスメラルダ』
振付:マリウス・プティパ
出演:ブルーエン・バティストーニ、ポール・マルク

●『シルヴィア』
振付:マニュエル・ルグリ
出演:ロクサーヌ・ストヤノフ、アントニオ・コンフォルティ

●『タリスマン』
振付:マリウス・プティパ
出演:ブルーエン・バティストーニ、ポール・マルク

●『眠れる森の美女』より第 3 幕のグラン・パ・ド・ドゥ
振付:ルドルフ・ヌレエフ
出演:パク・セウン、ロレンツォ・レッリ

●『TWO』
振付:ラッセル・マリファント
出演:ロベルト・ボッレ

●『À la manière de...』
振付:ジャン=ジヨーム・バール
出演:ロクサーヌ・ストヤノフ、アントニオ・コンフォルティ

●『ラ・シルフィード』
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
出演:カン・ホヒョン、アントワーヌ・キルシェール

●『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
振付:ジョージ・バランシン
出演:カン・ホヒョン、アントワーヌ・キルシェール

●『ル・パルク』
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
出演:オニール八菜、ロベルト・ボッレ

※演目順不同
※表記の演目と出演者は7/7時点の予定です

公式サイト
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/supreme/



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