
ガールズケイリンの人気選手・高木祐真は、なんとサッカー日本代表吉田麻也選手と親戚関係で、“麻也クン”“ユマちゃん”と呼び合う関係だという。吉田選手との交流や競輪選手を目指すまでの話、プライベートでの楽しみなどを聞いた。
初のG1レース『パールカップ』が開催されるなど、ますます盛り上がりを見せているガールズケイリン。登録選手数も増え続け、もうすぐ200人を超える。その要因となっているのが、学生時代スポーツに打ち込んできたアスリートが、キャリアを変更し競輪選手になるという流れができたことだ。
日本代表の吉田麻也の親戚で、自身もサッカーに打ち込んできた川崎競輪場所属の高木佑真選手も、高校卒業後に進路を変更。今ではファン投票で選ばれるレースに2年連続で出場するなど人気選手に成長した。
縁と運命に導かれて
――驚きました! 高木選手はサッカー日本代表の吉田麻也選手とご親戚なんですね。
お父さんと麻也くんが、はとこの関係で、麻也くんの家族とは結構仲良くさせていただいていました。
――吉田麻也選手とは?
麻也くんは、私が中学生くらいのときには既に海外のクラブチームで活躍していたので、遊んでもらったとか、お話をしたという記憶はほとんどないんです。だから“親戚です!”と胸を張って言えるほどの関係性ではないんですけど。
――お会いしたことは?
先日、トレーニングジムで撮影があるというときに呼んでいただいて、麻也くんと一緒にトレーニングをさせていただいたんですが。会った瞬間、親戚というより、“わっ! スターだ!”という感じで。何を話したか覚えていないくらい緊張してしまって…。今考えると、もったいないことをしたなって思います(笑)。
――どうでもいいことですが、麻也くん…なんですね?
そうですね(笑)。超有名人で私とは比べ物にならないくらいのスターですが、私にとっては麻也くんです。
――ちなみに、吉田選手は高木選手のことを何と呼ぶんですか。
ゆまちゃんです(笑)。
――高木選手は高校でサッカー部に所属されていましたが、それも吉田麻也選手の影響ですか。
小・中はバスケットボール。高校では、父も兄もずっとやっていたこともあってサッカー部にしましたが、そこはやっぱり、麻也クンの影響も大きかったですね。

――サッカーからガールズケイリンに舵を切ったのは、何がきっかけだったんでしょう。
基本、スポーツは全部好きで。アスリートとして生きていきたいと思っていたのですが、明確な道を見つけられずにいた高校3年の夏に、知り合いの新聞記者さんから「ガールズケイリンというのがあるんだけど、興味ない?」と言っていただきまして。なんか面白そうだなと思ったのが最初でした。
――それまでガールズケイリンは?
競輪という競技は知っていましたが、ガールズケイリンは聞いたこともなくて。
――ご両親は?
目の前で落車を見たこともあって母は、「ゆっくり考えてから決めてもいいんじゃないの」と心配そうにしていましたが、父は「これもご縁だし、運命だと思うからやれ!」とノリノリでした(笑)。
理想のレース展開は先行・逃げ切り
――今年で5年目。振り返ってみていかがですか。
あっという間でしたが、最初に思い描いていたキャリアは築けていないので、反省の方が多いです。1日、1日を大事にして、もっと濃い時間にしていかなくちゃいけないと思っています。

――ファン投票で選ばれる「アルテミス賞」に、2度出走しています。
1度目(2021年)は、脚力も上がってきて、成績も上向いている時期だったので、「頑張ります!」「応援してください」と素直に言えたんですけど、2度目(2022年)のときは、成績が落ち込んで悩んだり、凹んだりという時期だったので私でいいのかな?というのもあって…ちょっと複雑でした。
――ガールズケイリンは、勝つことより、負けることの方がはるかに多い競技なので、悩んだり、凹んだりの繰り返しなんでしょうね。
負けることに慣れるのも大切なことだって言われるんですが…私には無理です。負けたときは、毎回、凹むし落ち込みます。
――そこからどうやって気持ちを持ち直しているんですか。
負けてすぐは、気持ちを落ち着けるために自転車の整備をして、ある程度落ち着いてから、ひとり反省会をします。それでもダメなときは、食べます。とにかく食べてスッキリしてから寝るようにしています。
――食べたいだけ食べていると、体重も気になるのでは?
そこが難しいところですね(笑)。ただ競輪の場合、体重が増えるとその分パワーも増すので、それで結果を出す選手もいますし、逆に体重を減らして立ち上がりの瞬発力でいい結果を残す選手もいますし…どっちがいいかはその選手次第のところがあります。
――体重以外にも、ちょっとしたことが結果に影響することがたくさんあるんでしょうね。
ハンドルの角度や、ギヤ比など1ミリ変えただけで、結果はまるで違ってきますから。今回、これでよかったから次も同じで大丈夫ということもないですし、変化を求めた結果、失敗することもありますし…。正解がないのが、ガールズケイリンの難しさであり面白いところなんだと思います。

――高木選手の理想は?
ある程度セッティングは決めて、自分の体をそのセッティングに寄せること。レースではスタートからゴールまで、一度も先頭を譲らずに勝ち切ることですね。先頭を走るということは、常に風の抵抗を受け続けるということなのですごく苦しいんですけど、私的にはそれが一番かっこいい勝ち方だと思っているので、そこはこだわり続けたいです。
――結果が出ないと、迷いが生じたりはしないですか?
します。後ろからまくったらどうなるんだろうとか、考えることはあります。スタートで遅れて、後ろから走ってそれがいい結果になることもありますし…。でも、それが次に繋がるのかなと考えると、絶対にそれは違うなと。
だから今は勝てなくて落ち込んだり、凹んだりしても、続けているトレーニングがいつか実を結ぶと信じて、自分の理想のスタイルにこだわり続けます。
好きな男性のタイプはズバリアスリート
――選手のピークは何歳くらいなんですか。
一般的に、女子アスリートのピークは30歳前後と言われているんですけど、ガールズケイリンは人それぞれです。デビュー直後がピークの人もいれば、結婚して出産して、戻って来られてからすごく強くなる選手もいますし、バラバラですね。
――高木選手は?
私は今24歳なので、6年後…30歳で本当に強くなれるタイプだと信じたいです(笑)。
――それまで結婚はしない?
小さな頃は早く結婚して子供を産んで…というのが、自分の中の夢として間違いなくあったんです。

――今は?
同期の選手とそういうことについて真剣に語ったことがあって。今すぐに結婚したとして、出産して復帰するまでに、最低でも2年半から3年はかかるじゃないですか。
――でもそれって、今すぐ結婚するということが前提になっているんですよね。
そう! 1番の問題はそこなんです。すぐに結婚するということは、今相手がいるということで。それがいないことが大問題なんです(笑)。
――理想のタイプはあるんですか?
小学2年生から中学を卒業するまで、ずっと1人の男の子のことが好きで、その子は、やさしくて、目立たないタイプだったんですけど、今は体型も心も、自分より大きな人がいいなぁと思っていて。
――ということは、スポーツ選手しかいなくなっちゃいますよね?
そこが最大の悩みです(笑)。
――最後に、マイブームを教えてください。
車の運転です。さすがに九州は飛行機ですが、関西のレースくらいまでは、川崎から車で行きます。行きはレースのことを考えずに、頭を真っ白にして運転を楽しんで、帰りは“あそこはこうだったな”とか“なんであそこでいけなかったんだろう”とか、ひとり反省会をしながら車を運転しています(笑)。

取材・文/工藤晋 写真/松木宏祐