
大人気コミック『鬼滅の刃』を舞台化したシリーズ第4弾『舞台「鬼滅の刃」其ノ肆 遊郭潜入』が2023年11月~12月にて上演決定。主役の竈門炭治郎を演じる阪本奨悟に、舞台にかける意気込みを聞いた。
大好きな作品に携わる喜びとプレッシャー
――阪本さんが舞台「鬼滅の刃」シリーズに参加されるのは今回が初めてです。3度主演を務めた小林亮太さんからバトンを受け取り、竈門炭治郎役を演じられますが、出演が決まったときの率直な感想は?
光栄な気持ちでいっぱいでした。と同時に、プレッシャーは現時点ですごく感じています。すでに完成されているシリーズに初めて参加させていただくので、作品を愛してきたお客さんからの期待のハードルはすでに高くなっていると思うんです。納得していただけるように、全力でがんばりたいという気持ちでいっぱいですね。


――周囲からの反響は?
舞台界隈の知り合いや俳優仲間はもちろん、メイクさんや歌唱指導の先生からも「すごいね、大抜擢だね!」と言っていただきました。ただ、炭治郎はみなさんの中にすでにしっかりイメージがあるキャラクターなので、「大変だろうけどがんばってね」とも言われました。
――そもそも阪本さんは原作のファンだったそうですね。
出演が決まる前から『鬼滅の刃』は大好きな作品でした。炭治郎の優しさに癒されるし、心を救ってくれる作品だと感じていて。敵である鬼の過去も丁寧に描いてくれるので、共感できるポイントも多かったです。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020)は2回映画館に観に行ったんですけど、やっぱり何度も泣いちゃいましたね(笑)。今は稽古に向けて、原作とアニメを最初からおさらいしているところです。

――演じるうえで、大切にしたいと思っていることは?
まず炭治郎は15歳の設定なので、新鮮な気持ちで少年らしさを取り戻したいと思っています。あと、炭治郎の個性のひとつは「優しさ」だと思うので、そこも大切に演じていきたいです。
この作品には歌唱シーンもあるので、自分にしかできない炭治郎の歌を表現できたらいいなと思っています。
――『鬼滅の刃』の作品の根底には、炭治郎と禰豆子の兄妹愛があります。阪本さんは三兄弟の末っ子だそうですが、シンパシーを感じる部分はありますか?
原作を読んでいて「兄弟がいて本当によかった!」と思ったポイントは、まさにそこなんです。炭治郎は鬼に変えられてしまった禰豆子を人間に戻すことが大前提の目的なので、家族に対する思いをリアルに共感できました。自分の家族が同じような仕打ちにあったら……と想像すると、炭治郎が戦いに身を投じる原動力が理解できました。

『ドラゴンボール』の悟空が名前の由来⁉︎
――阪本家の兄弟仲は?
ちょっと恥ずかしいんですけど、めちゃくちゃいいと思います! 兄貴とふたりでご飯に行くこともよくありますね。僕とは全然違う仕事をしているんですが、違う世界の話を聞けることも楽しくて。姉とは一緒に出掛けて洋服を選んだりもします。
両親含め家族全員で旅行もしますし、一緒に行動することが多いですね。特殊な家族かもしれません(笑)。

――阪本さんの活動に対しては?
もう、逐一見てくれます(笑)。


――ちなみに『鬼滅の刃』以外に、ジャンプ漫画で好きな作品は?
小学生の頃に連載がスタートした『ONE PIECE』は大好きです。絵を描くことが好きだったので、漫画を真似してスケッチしたものを、ファイルにストックしていたこともありました。あとはやっぱり『テニスの王子様』! 世代的にめっちゃ読んでました。
――そういえば、阪本奨悟さんのお名前の“悟”は、『ドラゴンボール』の悟空から取られたとか?
そうなんです! 母親の“悟空愛”が飛び抜けて強くて(笑)。そのことを聞いたときは、子どもながらにうれしかったですね。母親の影響で僕も小さいころから『ドラゴンボール』に触れてきましたから。兄と姉は漫画とまったく関係のない名前なので、僕だけ大きなものを背負わされたな、とも思います(笑)。

音楽活動のために俳優を辞めた過去
――プライベートのお話も聞かせてください。休日は何をして過ごすことが多いですか?
最近はライブをしていたので、それに向けて準備をしていました。音づくりをしていたら「もっとワンランク上の音を出したい」と欲が出てしまって。ギターやエフェクターなど、選びきれないくらいの種類があるんですけど、納得のいく音を探しています。
そう思うと、もう仕事か趣味かもわからないくらい、ずっとオンかもしれません。でも今はそれが楽しくて。

――そういえば阪本さんのキャリアって、本当にユニークですよね。ミュージカル『テニスの王子様』などに出演するなど、10代から順調なキャリアを築いていたのに、音楽活動に専念するために一度キッパリと俳優のお仕事を辞められました。その決断には、勇気が必要だったのでは?
いま思うと、怖いもの知らずでしたね。今だったら俳優の経験を音楽活動につなげることを考えられますが、視野が狭かったんだと思います。
――どんな活動をしていたんですか?
地元の兵庫で路上ライブから始めたのですが、最初はほぼお客さんがいなくて。機材を運ぶために家族がライブハウスまで車を出してくれたり、CDなどの物販を手伝ってくれたり、本当に協力してくれました。でも誰も聞いてくれない経験は地獄でしたし、どん底だったと思います。
音楽だけをしたいと俳優の仕事を辞めましたが、そうするとやっぱりネタが枯渇していくんですよね。俳優をしていたころは、舞台でいろんな役を演じさせてもらうことが、結果として自分の表現の引き出しになっていました。そのことに初めて気づいて、めっちゃ後悔しました。

――そのことに気づけたことも、今となっては財産では?
2年間の自主活動を経て、また俳優として復帰できたことはありがたかったですし、当時の苦しい経験もまた、今の自分の表現につながっている気はします。どんなときもずっと家族がそばで支えてくれたので、僕が仕事でがんばっている姿は、常に家族に見てもらいたいと思っています。
――6月に30歳の誕生日を迎えられました。30代の目標は?
これまではアーティストとして武道館に立つとか、具体的な目標を掲げてきたんです。10~20代は紆余曲折ありましたし、本当にあっという間だったと感じていて。周りの方からは、「30代はもっとあっという間だよ」と言われるんですが、本当にそうだろうなって。
だから今は遠い目標を掲げず、まずは目の前にあるお仕事ひとつひとつに真剣に向き合いたいと思っています。『舞台「鬼滅の刃」其ノ肆 遊郭潜入』を無事終えたときには、またきっと自分が成長できていると信じています。

取材・文/松山梢
撮影/石田壮一
ヘアメイク/木内真奈美(オティエ)
スタイリスト/山田安莉沙
【衣装クレジット】
Tシャツ¥14300/JOYEUX(CLOUD LOBBY)
ニット¥44000、パンツ¥35200/ともにSian PR(CULLNI)
【問い合わせ先】
JOYEUX(03-4361-4464)
Sian PR(03-6662-5525)
公演情報

舞台「鬼滅の刃」其ノ肆 遊郭潜入
<�原作>『鬼滅の刃』吾峠呼世晴 (集英社ジャンプコミックス刊)
<�脚本・演出>末満健一
<�音楽>和田俊輔
<�キャスト>
竈門炭治郎 阪本奨悟
竈門襧豆子 髙橋かれん
我妻善逸 植田圭輔
嘴平伊之助 佐藤祐吾
宇髄天元 辻 凌志朗
雛鶴 蛭薙ありさ
まきを 倉持聖菜
須磨 西葉瑞希
鯉夏花魁 梶川愛美
堕姫 佐竹莉奈
妓夫太郎 遠山裕介
産屋敷耀哉 廣瀬智紀
伊黒小芭内 宮本弘佑
鬼舞辻無惨 佐々木喜英
(※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正式表記)
ほか
大阪公演: 2023年11月12日(日)~19日(日)メルパルクホール大阪
東京公演: 2023年12月1日(金)~12月10日(日)TOKYO DOME CITY HALL