鯨肉の無人自販機店舗「くじらストア」。希少価値の「尾の身」も24時間購入できる! 実食してみた美味しさは?

記者が月島もんじゃストリートを取材していたときに、目に飛び込んできたのが鯨肉の自動販売機店舗「くじらストア」。なぜここに、なんのために設置されているのか。

ストアを運営する共同船舶株式会社広報担当の久保 好さんに直撃しつつ、実際に購入、実食したレポートとともにお届けする。

消費者からの声に応えて出店

24時間いつでも鯨製品を購入できる自販機による無人店舗「くじらストア」を展開しているのは、世界で唯一母船式捕鯨を行う「共同船舶株式会社」。
今年の1月から、くじらストアは首都圏内には大井町、粕谷、横浜元町に3店舗、関西では大阪に1店舗と少しずつ増やしていっている。月島の店舗は8月にオープンし、5店舗目となる。

鯨肉の無人自販機店舗「くじらストア」。希少価値の「尾の身」も24時間購入できる! 実食してみた美味しさは?

日本は2019年にIWC(国際捕鯨委員会)から脱退し、EEZ内での商業捕鯨を再開して5年になるが、反捕鯨団体を考慮し、大手スーパーでは鯨商品の取り扱いを控えているというと現実がある。

「お客様から『どこで鯨が買えるのか?』『食べたいけど、扱っている店が近くにない』などのお問い合わせが当社に多く寄せられていました。そこで大手スーパーの近隣に24時間いつでも買える無人店舗を開設することにしました。

自社の専用車で、商品を補充しているのですが、補充が間に合わないことがあるほど売り上げは好調で、お客様の鯨商品のご要望が高かったことを実感しています。
日本では、捕獲枠もIWCで合意した厳格な管理方式を採用しており、この先100年間捕鯨を続けても鯨は1頭も減らないことがわかっていますので、鯨を食べても問題はないんですよ」(久保さん、以下同)

また、鯨が1日に必要な食事量は自分の体重の4%。20トンのイワシ鯨だと、年間300トンのエサが必要となる。
商業捕鯨を行っていなかった間、食物連鎖の頂点にいる鯨が増え続けたことで、生態系のバランスが崩れ、鯨のエサとなっている鰯、イカ、秋刀魚などがどんどん食べられていた。
それが原因で、水産資源の減少、海洋生態系のバランスの問題も起こっているという。

「鯨を捕獲することで、豊かな海を守ることになります。
当社では『鯨を食べて海のSDGsに貢献しよう』というコンセプトを掲げ、くじらストアを通してプロモーションしていけたらと思っています」

鯨肉の知られざる栄養の源とは?

鯨はその全身ほとんどを食べることができ、肉だけでなく内臓、皮、尾、骨まで全て捨てることなく、利用できる、まさに海からの幸。
お腹や背中の赤身をはじめ、特におすすめなのが鯨の尾の付け根にある「尾の身」。
1頭から取れる量はほんのわずかな希少部位で、脂がのっていて刺身で食べるのがおすすめとのこと。
下あごから摂取される鹿の子の状の肉は、しゃぶしゃぶにするとおいしいらしい。

鯨肉はおいしさに加えて、アミノ酸成分「バレニン」が含まれている。
鯨はほぼ絶食状態で数千キロを回遊するが、そのパワーの源がバレニンと考えられており、最近の実験や研究により抗疲労効果や認知機能の改善、免疫力アップなどの効果に期待できることがわかってきている。
また、食品以外でもクジラオイルやクジラの軟骨から摘出したプロテオグリカンなどを配合した洗顔石けんや美容液などの商品を同社で開発しており、鯨肉の付加価値向上に向けて取り組んでいるそうだ。


鯨肉の無人自販機店舗「くじらストア」。希少価値の「尾の身」も24時間購入できる! 実食してみた美味しさは?

「碧い海のサファイア石けん」。クジラオイルなどが配合された洗顔石けん

そんな中8月にオープンした月島にあるくじらストアは「くじらストア本店」となっている。
「立地が豊洲市場に近く当社にも近いことから、本店としています。捕鯨の認知拡大など目的とした情報発信店舗として位置づけています」

ということでさっそく、久保さんに同行いただき「くじらストア本店」へ。
店舗の中には、冷凍自販機で刺身用の尾の身や赤身、本皮、ベーコンといった冷凍商品を、常温自販機では缶詰や鯨肉が入ったレトルトカレーなの商品を販売している。

驚いたのが内装だ。

天井は漁に出たときのような雲が浮かぶ青空、床は船の甲板のような木の床張り、そして鯨漁の写真が大きく飾られていて、お店に入ると船に乗っているような感覚が味わえる演出になっている。

鯨肉の無人自販機店舗「くじらストア」。希少価値の「尾の身」も24時間購入できる! 実食してみた美味しさは?

いくつかある商品の中から、久保さんにすすめてもらった「尾の身」2000円(税込)※と鯨ベーコン1000円(税込)を購入した。〈※この日はオープン記念価格で2000円だが、通常は3000円(税込)〉

自販機からは、商品が保冷剤付きのパックで出てきた。店舗には保冷バッグがあるので、買い物ついでに寄っても安心だ。記者もこの保冷バッグを利用して持ち帰ることに。

鯨肉の無人自販機店舗「くじらストア」。希少価値の「尾の身」も24時間購入できる! 実食してみた美味しさは?

保冷剤付きなので、持ち運びやすい

「ここを起点に、鯨に関するさまざまな情報発信をしていきたいと思っています。

今後は自社ブランド『くじらの王様』の商品ラインナップを充実させ、その売上の一部を鯨の生息環境の保護に取り組む慈善団体に寄付する取り組みを開始する計画です。」

尾の身は脂身の甘さととろけるような食感が絶妙

帰宅して、おすすめの「尾の身」をいざ実食。冷蔵庫で1日解凍すれば、刺身で食べることができる。
記者は、鯨肉の刺身で食べるのは初めてだ。某グルメ漫画でも絶賛された食材なので、期待感が高まった。
細かいサシが入っていて、まるで大トロのよう……。
生姜醬油につけて、いただいた。


脂身の甘さと肉の旨味が口の中に広がり、とろけるような食感。
大トロを食べているような感覚だが、脂のくどいかんじはなく、今まであまり味わったことがない脂身と赤肉のバランスが絶妙!
確かにおすすめされるだけのことはある!と痛感した。
鯨ベーコンも同じ日に食卓に並べたが、お酒のお供にもぴったりで家族に喜ばれた。

鯨肉の無人自販機店舗「くじらストア」。希少価値の「尾の身」も24時間購入できる! 実食してみた美味しさは?

同社では今後も店舗を増やしていく計画だそうだ。
「くじらストア」に行けば、24時間、気軽に鯨肉は手に入る。ぜひ一度試してみてはどうだろうか。

取材協力
くじらストア本店
東京都中央区月島1-21-4

取材・文/百田なつき