
日本最大級の風俗情報サイト「シティヘブン」が主催するミスコン「全国ミスヘブン総選挙2023」で全国No.1に選ばれた風俗嬢、まりてん。後編では、風俗経営がきっかけとなった精神科への入院から、YouTuberとしての復活、風俗嬢引退後の野望までを赤裸々に語る。
「まりてんって加工してないとブスだよね」
──風俗業界で長く働きたくてお店の経営をしたのに2年半で精神を病んでしまうとは、大変でしたね。精神科での入院はどのくらいされていたのでしょうか?
まりてん(以下同) 3か月です。
──入院中はどんな過ごし方をしていましたか。
精神科病院のなかではいい子にしていたので、途中からスマホを渡してもらえました。それからは風俗嬢時代のお客さんに連絡をして、愛知までお見舞いにきてもらって、近況報告をしあったり、「私はこの先どうしたらいいのだろう」と相談したり。会いに来てくれるお客さんが一番信頼できる存在なので、その時間はすごく癒やされました。
──なるほど。3か月入院して、その後は?
入院中に、経営していた風俗店の株を他の方に譲渡して、東京の家も引き払っていたので、本当になにもない状態でした。親からは「もう東京に行かないでほしい」と言われ、お財布すら持たせてもらえず、愛知の実家に軟禁状態でした。でも、手元に住民票とパスポートはあったので、その2つを持って親に内緒で愛知のデリヘルで働くことにしました。

「全国ミスヘブン総選挙2023」で全国No.1に選ばれたまりてんさん
──退院してまず始めにしたことが風俗で働くだったんですね。
はい。それで愛知の風俗で働いてお客さんと接していたらだんだん元気が湧いてきて、また上京したいと思ったんです。
東京に引っ越してその会社で1年ほど働いていたら、やっぱり自分の好きなことで生きていきたいと思い、再び風俗で働きたいという気持ちになりました。
──それで、また東京の風俗で働きはじめたんですか?
はい。でもやっぱり風俗一本は怖いから、今度は風俗嬢をやりながら現役風俗嬢YouTuberとしての活動もはじめようと思いました。その準備ができたところで、大手アダルト配信会社をやめることにしました。
──なるほど。YouTubeは上手くいったのでしょうか?
2020年2月から始めたのですが、ちょうどコロナ禍だったこともあり、3~4か月でコンスタントに1万回以上は動画が再生されるようになって軌道に乗りました。動画の再生が回るまでは、ネットの掲示板に「YouTube見たけど、まりてんって加工してないとブスだよね」とか自分で書き込んで炎上させることで再生数を伸ばしていました(笑)。
風俗とYouTubeにおけるリピートは愛
──(笑)。風俗店の経営といい、YouTubeといい、やることすべて軌道に乗るんですね。YouTubeは風俗店の経営より向いてそうですか?
メンバーも現役風俗嬢を条件にしてるので入れ替わりが激しいのがつらいとこですが、風俗店を経営していたころとは違って、メンバーや編集者を合わせても数人規模の事業なので、メンタルを安定させながら継続することができています。それに、YouTubeは人生のことをなんでもネタにできるので、気が楽ですね。
──人生をネタにしないと、つらいんですか?
はい。

YouTubeを始めてから、メンタルが安定してきたという
──YouTubeをやる前は、どうやって人生を消化させていたのでしょうか?
YouTubeをやる前も、風俗のお客さんに自分のことを話すことで人生を消化させていました。
YouTubeのチャンネル名が『ホンクレch -本指になってくれますか?-』なんですけど、風俗における「本指名」も、YouTubeにおける動画の「再生」も、どちらも英語にすると「リピート(repeat)」で、チャンネル名にはその2つの意味が込められているんです。私はとにかく自分の人生をリピートされるのが好きなんです。リピートって愛ですからね。
──なるほど。YouTuberとしても風俗嬢としてもリピートをされ続けた結果、全国No.1へ上りつめたということなんですね。全国No.1になれたことは、やはりうれしいことでしょうか?
全国No.1の肩書きはあったら便利だなとは思っていたので、素直にうれしいです。でも、それよりも全国No.1になってから「11年前に浜松で指名した〇〇です」「7年前に池袋で指名した◇◇です」「5年前に愛知で指名した△△です」みたいに、過去に遊んだことのあるお客さんから連絡がたくさん届いたのが、なによりもうれしかったですね。
──お金や名声よりも、関係性への欲が一番強いんですね。
そうですね。
関係性への飢えは「宗教2世」という出自にあった
──関係性への欲がこれだけ強いのが全国No.1の所以な気がしますが、そのモチベーションはいったいどこから?
私は宗教2世として生まれたので、他の人よりも関係性に飢えてるのかもしれません。詳しくは言えないのですが、キリスト教が母体の新興宗教の信者の家庭で育ちました。資産に目に向けることはやましいし、競争もよくないと教えられ、いい大学に入っていい会社に勤めても評価してもらえない環境でした。
祝い事も駄目なのでクリスマスも誕生日も禁止だし、男女交際も禁止でした。神社・仏閣も禁止だから京都・奈良の修学旅行は一人でバス待機でした。学校の友達のことは好きで一緒にいる時間も楽しかったのですが、「友達はサタンだから仲よくするのはいけない」と家では教えられていました。私自身は、その宗教に対する信仰心は特にないのですが。

学生時代のエピソードも多く語ってくれた
──信仰心はなくとも、宗教2世の環境で育ったことが、今のまりてんさんに影響を及ぼしているんですね。
はい。周りを見ても、私ほど他人との関係性に飢えてる人はあまりいないように思います。「世の中に馴染みたい」「サタン(友達)になりたい」という感覚がずっとあります。
──特にどんなときにそう思いますか?
風俗ではなによりもピロートークが好きなんです。ピロートークは懺悔部屋だと思っています。高校生のころまでは、聖書のキレイな言葉の中で生きてきました。「隣人を愛せ」とか「裏切り者を許せ」とか。
でも、そうしたキレイな言葉では縁取ることができない矛盾を抱えているのが人間だと思っていて。例えば、学校で教頭先生をしているお客さんから「教頭先生なのに子供のことが嫌いなんだよね」とピロートークで打ち明けられたときとか、キレイな言葉には収まらないドロッとした人間臭さを感じられて、すごくうれしいんです。
──そうした関係性を求めるということであれば、必ずしも風俗でなくてもよい気もしますが、まりてんさんにとって、それはなぜ風俗なのでしょう?
人との距離が一番近いのが風俗だからじゃないですかね。本当は、なんでもいいのだと思います。風俗のほうが手っ取り早くない?ってだけなのかもしれません。現に、今は予約してくれたお客さんとベッドでプレイするよりも、ご飯を食べに行ってる回数のほうが多いくらいです。
──今回は風俗嬢として全国No.1になりましたが、今後はどうなっていきたいですか?
風俗嬢として働くのは近々終わりにするかもしれません。
──風俗嬢としての終わりを迎えても、今後も風俗業界とは何かしらで関わっていきたいということでしょうか?
そうですね。風俗業界は長く居続けている個人がほとんどいない世界なので、どんな形であれ、そこで継続して働いていける道を作れる人間でありたいなと思っています。

風俗業界の未来を明るく語って、次の現場へと向かっていった
文/山下素童 写真/Keigo