
3月3日放送の『ザ・ノンフィクション 居場所をさがして ~僕と家族とシェアハウス~』では、居場所のない若者たちをサポートするシェアハウスが紹介される。都内で若者向け、家出人向け、ワケアリ向けなど、さまざまなシェアハウスを運営して彼らの生活を支援する人々の実態とは……。
ワケアリシェアハウスの運営に携わる人の共通点
『ザ・ノンフィクション』では、都内4か所でシェアハウスを運営する荒井佑介さんらに密着した放送があった。
荒井さんは10代のころから周囲の人間関係で折り合いが悪く、家族の中にも居場所を見つけられずにいた経験を経て、自立支援を行うシェアハウスの運営を始めた。

荒井さんが運営するシェアハウスで若者とゲームをする荒井さん(右) 写真提供/NPO法人サンカクシャ
東京都豊島区を中心に15歳から25歳くらいまでの若者をサポートするため、NPO法人サンカクシャ代表理事としてホームレス支援、子どもの貧困問題、若者支援などに取り組んでいる。荒井さんにシェアハウスを運営するうえでのやりがいを尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
「今日、居場所がないという方たちをその日中に受け入れて、生活をサポートしていくことは、いますごく必要性を感じます。『安心できる場があってよかった』と落ち着いた表情をみせる若者たちを見ていると、やっぱりこういう活動をしていてよかったなと思います」
『ザ・ノンフィクション』では1月21日の放送回でも「家出人たちの家 ~人生をやり直すシェアハウス~」で、別のシェアハウスとそのオーナーを特集して、居住者と向き合う献身的なオーナーの姿勢が「優しすぎる」と大きな反響を呼んでいた。
登場したのは、オカさんと呼ばれる男性。都内近郊に10か所、家出人を支援するためのシェアハウスをつくり、一人で運営している。なぜオカさんは家出人を支援するようになったのか。それは、荒井さんと同じように、自身の境遇が関係していた。
1977年、東京・勝どきで生まれたオカさんは、会社員の父親と幼稚園の先生の母親のもと、ごく一般的な家庭で育った。しかし、人付き合いが苦手で会社員にはなれない性格から、1996年、19歳のとき、株式投資をはじめ、それからトラック運転手、イベント運営など、さまざまな職を転々として生活していくことになった。
そして2020年、43歳の時に家出人向けのシェアハウスを立ち上げた。
オカさんは家出人たちのことを「僕と彼らは似てるんです」と話す。注意力散漫ですぐにミスをするし、飽きっぽい。それでも自分は家を失わず、彼らは失った。そこで、彼らにチャンスを与えるためにシェアハウスを立ち上げるに至ったのだ。
というのも、家出人が仕事に就けない大きな原因は、住民票が取れないことや連絡先がないため。シェアハウスではそうした事情もフォローしている。番組では、家出人たちを引き連れて、住民票の取り方をオカさんがレクチャーする様子も映し出された。
家賃は相場の3分の1「3万4000円」
オカさんが運営するシェアハウスのひとつである、通称「駒込ハウス」は、駒込駅から徒歩10分ほどの場所にあり、家賃は相場の3分の1くらいである3万4000円。住民のプライベートスペースは2段ベッドのひとつだけではあるものの、電気・ガス・水道・Wi-Fi代込み。洗濯機もタダで使える。
そんなオカさんのもとには、ひっきりなしに入居希望の連絡が届き、不安な彼らに寄り添うためにも、即レスで対応する。
通常、入居の際には未成年の場合、必ず保護者の許可をとることを条件としている。
「おまえらの味方だよ」というメッセージを送るために、日々、シェアハウスを回って住民たちとコミュニケーションをとっている。
オカさんや荒井さん、ワケアリ向けのシェアハウスが運営される裏側には、自身の経験を踏まえたうえでの、無償の愛がある。

写真は荒井さんが運営するシェアハウスの一室 写真提供/NPO法人サンカクシャ
取材・文/集英社オンライン編集部