
「月刊コロコロコミック」(小学館)で『おれは男だ! くにおくん』『ポケットモンスター』を描いてきた伝説の漫画家・穴久保幸作先生の最新作がSNSで大バズり中! X(旧Twitter)で1100万表示を突破した“サウナ×デスゲーム”の異色作『サウナウォーズ』の誕生秘話に迫る。
『サウナウォーズ』は、主人公で作者でもある穴久保幸作先生と漫画編集者・谷が謎の組織「SSS(セカイサウナサークル)」主催のサウナ内殺人ゲーム「サウナウォーズ」に巻き込まれていくデスゲーム漫画。
サウナに入った参加者たちの命を賭けた存亡がベテラン漫画家ならではの卓抜した筆致で描かれる。死生観を揺るがす大胆な作風の虜になるユーザーが続出しており、いま最もホットな漫画のひとつとなっている。
1セット12分も入る大のサウナ好きがブームの影響でペンを取った
――穴久保先生は御年67歳。漫画家生活40年近くにも及ぶ大ベテランの先生ですが、今回サウナをテーマにした作品を描くきっかけは何だったのでしょう?
穴久保幸作先生(以下同) 連載用の企画を考えているときに景気のよいジャンルを題材にした漫画を描けないかなと思っていました。そこで、僕が長いこと通い続けてきたサウナで一本作れないか考えたんです。
サウナは、なんでも三日坊主で終わってしまう自分が、上京してから40年近く続いた日課でした。最近はちょうどブームの最中ですし、僕の担当編集もサウナが好きで一緒に通うこともあったので実現したというのもあります。
――作中でも穴久保先生は、今でも週に2、3回もサウナに通うほどの大のサウナ好きと公言していましたよね。熱さと格闘しながらよく漫画のネタを練られているともおっしゃっていました。ちなみに1回あたり何分ぐらい入られています……?
昔から一度入ったら12分は出ないようにしているんです。長い時間入ると気分がよくなって、頭が冴えてくるんですよ。さすがに最近は意識が飛んじゃいそうになっちゃいますけど。
ただフィンランドのような本場だと好きな時間に出る、というのが本来の楽しみ方らしいので、完全に間違った嗜み方をしちゃっています(笑)。
――じゅ、12分!? 67歳でその時間はもはや規格外ですね(笑)。ところで、サウナを題材にした漫画は数あれど、“デスゲーム”要素をプラスした作品というのは前代未聞でした。ひょっとして長時間サウナで耐え続けてきたことが関係してくるのでしょうか?
かもしれません。たとえば、サウナに入っていると、急に地震が来て室内に閉じ込められちゃったら中にいる人たちが全員死んじゃいますよね?
企画を立てるとき、最初はサウナ施設を紹介するという方向性でまとめていたのですが、それだとおもしろみがないし、子どもたちにもウケない。だからサウナパニックものにするとおもしろそうだなと感じまして。でもふだんはそんなこと簡単には起こらないため、もう一ひねり加えて、勝手にサウナの出口を閉じる悪人を出せばいいって思いつきました。そうやってデスゲームへとつながっていったワケです。
「子どもが読むからなるべく常識に囚われない発想をしたかった」
――『サウナウォーズ』では、原稿に消しゴムをかける要領でガラスに石をこすりつけ、閉じ込められたサウナから脱出したり、ご自身の漫画家人生の経験を活かしてデスゲームから生き残る演出がすごくおもしろいです!
閉じ込めたはいいものの、どうやって脱出させるべきかって考えるうちに解決策として今までの漫画経験から「何かないかな」と考えてフッと思いついたんです。
ちなみにその消しゴムのエピソードは、大体60ページぐらいの原稿の下書きを消したときの出来事なのですが、すべて消し終えるのにおよそ8時間はかかったかな。消しゴムが6個なくなっちゃうんです。
――消すだけでそんなに時間がかかってしまうなんて……。
小学生くらいの子どもだとちょうど学校に行って、帰ってくるまでの時間くらいにはなっちゃいます。サウナウォーズは、そういったこれまでの僕の漫画経験をもとにしたエピソードが多くて、昔の話を思い出しながら何をネタにしたらよいかアイデアを作っていました。
ただサウナをテーマにすると、話の都合上どうしても個室がメインになってしまうため、背景的につまらなくなってしまう。そこでいろいろなタイプのサウナを描くためにも、各地のサウナ施設へと取材に行ってアイデアをひねり出すようにしました。加えて、子どもが読むからなるべく常識に囚われない発想をしたかったんです。
――第4話で登場した車内をサウナへと改造した蒸気機関車は、まさにありそうでなかったタイプのサウナになっていますよね!
もともと、蒸気機関車が大好きだったのも関係しています。蒸気機関車って燃料を燃やした蒸気で動くワケですから、「あ、これはもうサウナだ」って閃いたんですよ(笑)。使わない手はないな、と。
ちなみに取材でサウナに入っているときは、漫画のためによくほかのお客さんを観察しているんですが、わりと「何ですか」って注意されることがあって。なるべくじろじろ見ないようにはしているものの、体つきとか骨格を参考にしたいんで薄目で見ています。サウナだけではなく、そこで熱さを耐え忍ぶ人間も描きたいんですよ。
「実はもう最終回は決まっているんですよ」
――「サウナウォーズ」は、デスゲーム作品ですので死人が出ることもしばしばです。“死”の瞬間が克明に描かれるシーンもあって、なかにはショッキングな死亡シーンも存在します。
やっぱりサウナってリラックスできる場所な反面、不慮な事故で死んじゃう人だって出てきちゃいます。
多くの人が利用しているサウナでもポロッと逝ってしまうことはあるんだぞということは漫画で訴えたかった。
ただ当然ですが、亡くなった人はもう帰ってはきません。「人は死んでいくものだ」っていうのが本作の大事なテーマですし、描き切るまではちゃんと掲げていきたい。
――サウナという極限状態だからこそ“死”の存在をリアルに演出できるワケですね! では最後に『サウナウォーズ』をどう盛り上げていきたいか、今後について教えてもらいたいです。
実はもう最終回は決まっているんです。ネームの段階で最終話までの400ページぐらいをすべて描いてしまっていて、Xで1100万表示をされるまでは最終話に向けた制作を行っている状況だったんですよ。ちなみに発売した2巻で本当は終了する予定だったんです。
ですが、ありがたいことにSNSで多くの人に読んでいただいて反響が大きかったことから、終わらせるのはもったいないと、続きを描けることになりました。
なので最終回があるとしたらもうちょっと先にはなりますが、体力の続く限り書き続けるので最後まで楽しんで読んでもらえると、うれしいです。
コミックスが売れて作品を長く描いていきたいです。1巻と2巻が出ているので、買ってくださいね!!
取材・文/中田椋/A4studio
サウナウォーズ(2): てんとう虫コミックス〔スペシャル〕 (コロコロコミックススペシャル)
穴久保 幸作
1話がXで大バズり!世間を賑わせた、「ギエピー」で有名な穴久保幸作先生の最新作!
内容は、まさかのサウナ×デスゲーム!!
サウナ室でデスゲームを企むSSSを食い止めるために、主人公の漫画家・穴久保幸作が動く。
舞台はまさかのサウナ付きの蒸気機関車!?暴走する蒸気機関車、高温のサウナ室に閉じ込められた乗客たち…。蓄積されたまんが制作の体験をもとに、穴久保はこの危機的状況をどう解決するのか。
【編集担当からのおすすめ情報】 「おれは男だ!くにおくん」「ポケットモンスター」などを描いてきた穴久保幸作先生が人生で初めて描いたストーリーまんがです。穴久保先生が実際にまんが制作で体験した出来事を通して、デスゲームを攻略していく様はまさに圧巻です。
サウナ好きな人も、そうでない人もすごく楽しめる物語となっているので、 ぜひ試し読みからでも読んでみてください!