
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
ドン!っと客席を向くのよ
『白いドレスの女』(1981)でデビューしたときは、そのあまりのスタイルのよさと美しさに驚きました。まさに女ざかりといった感じ。裸になるセクシーなシーンもあるけれど、マリリン・モンローのような「これでもか」という色気とは違う、普通感のある女性なのに、すごく魅力的な“熟れている”いい女だったのよ。
この映画のプロモーションで初来日したときなんか、スリットの入ったスカートで足を組んだだけで「(下着を)はいてる? はいてない?」と話題になって大変でした(笑)。
脚本家として活躍していたローレンス・カスダンの監督デビュー作だったので、自身の手による脚本も素晴らしくてね。大どんでん返しの展開も私好みでした。
何年かのち、彼女がブロードウェイで舞台版の『卒業』に出演したのを見たことがあります。主人公の青年を誘惑するミセス・ロビンソン役を演じたのですが、なんと舞台上で全裸になるの!
しかもドン!っと客席を向くのよ(笑)。当時彼女は40代後半だったので、それなりに肉付きがよく、ものすごい迫力! ニューヨーク中の話題になっていました。「『白いドレスの女』であんなにセクシーだった人がこうなるか……」と、別の意味で感無量でした。
語り/戸田奈津子
アートワーク/長場雄
文/松山梢
『白いドレスの女』(1981) Body Heat 上映時間:1時間53分/アメリカ
ある蒸し熱いフロリダの夜、弁護士のネッド(ウィリアム・ハート)は白いドレスを着た女性マティ(キャスリーン・ターナー)と出会う。
後日再会し、すぐに惹かれあったふたりは不倫関係に。
キャスリーン・ターナー
1954年6月19日生まれ、アメリカ・ミズーリ州スプリングフィールド出身。『白いドレスの女』で映画デビュー。『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984)『女と男の名誉』(1985)ではゴールデン・グローブ主演女優賞を受賞した。
主な出演作は『ペギー・スーの結婚』(1986)『ローズ家の戦争』(1989)『シリアル・ママ』(1994)『ヴァージン・スーサイズ』(1999)『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』(2008)など。『熱いトタン屋根の猫』『卒業』など舞台でも活躍している。