
7月25日の深夜2時より、パリ五輪サッカー男子・日本代表の初戦がスタートする。56年ぶりのメダルを目指す若き侍ジャパンだが、大きな懸念点があるという。
サッカー男子日本代表の大きな懸念点
世界各地の予選を勝ち抜いた国々と、開催国のフランス、合わせて16か国が出場する今大会。日本はパラグアイ、マリ、イスラエルと同組のグループDに入った。
フランス、アルゼンチン、スペインといった突き抜けた強豪チームがいない組とあって、実力は均衡。白熱した戦いが予想されるが、日本が予選を突破する可能性は十分にあり、勢いに乗ればメダルの獲得も期待できる。
ただ今大会、日本代表には大きな懸念点がある。出場国で唯一、オーバーエイジ枠(以下、OA)を使用していないのだ。
五輪のサッカーは原則として23歳以下のみが出場できる、U-23の大会だが、ここに例外として、各チーム3人まで、年齢制限を超えた選手起用ができるのがOA枠だ。
まだ経験が少ない若いチームにとって、この枠は非常に重要で、実際にこれまでの大会でもOAの選手が数多くの功績を残している。
直近3大会を見ると、日本代表は2012年のロンドン五輪で当時28歳のDF徳永悠平と、同じくDFで23歳の吉田麻也を起用(吉田は出場時23歳だったが、「五輪開催前年の12月31日時点で満23歳以下の選手」という規定のため、オーバーエイジ枠となった)。
2人の鉄壁の守りによって、日本代表はこの年、44年ぶりにベスト4にまで駒を進めることになった。
2016年のリオ五輪では、本田圭佑、香川真司、長友佑都など当時欧州でバリバリ活躍していた選手の招集が期待されたが、呼ばれたのはJリーグに所属する当時27歳のDF藤春廣輝、同じく27歳のDF塩谷司、そして30歳の興梠慎三だった。
これは、ケガや疲労などの懸念から、選手の五輪出場に難色を示すクラブチームが多く、海外の人気クラブの主戦力だった本田や香川らを呼ぶことができなかったと言われている。
国内組の興梠らはチームに多大な貢献をしてくれたものの、結果は予選リーグ敗退。残念ながらいい結果に結びつかなかった。
そしてこの年は母国開催ということで、クラブから特例でOA枠として参加が認められたネイマール率いるブラジルが優勝。OA枠を有効活用し、悲願の初金メダル獲得となった。
「WBCの野球はベストメンバーなのに」
そして2021年の東京五輪では、まだ記憶に新しい人も多くいるだろうが、OA枠で当時31歳のDF酒井宏樹、28歳の遠藤航、32歳のDF吉田麻也という実力も実績も申し分ない大ベテランを起用。
やはり母国開催ということで、日本は考えられる最強メンバーで布陣を敷くことができ、ベスト4にまで進出。残念ながらメダルにはあと一歩届かなかったものの、予選ではフランスやメキシコを破るほどの快進撃を繰り広げた。
さて、そんな重要なOA枠だが、今大会では前述の通り、出場国で唯一、一枠も使っていない。クラブとの兼ね合いなど様々な事情はもちろんあるだろうが、SNS上では不満の声が続出している。
〈アルゼンチンでさえオーバーエイジ使ってるのに、日本はメダル獲る気あるのか?〉
〈WBCの野球はベストメンバーなのになんでサッカーはこんなメンバーなの?〉
〈なんで弱小国のくせにオーバーエイジ使わないの? 久保とか鈴木唯人すら呼べてないし。結局、協会なにひとつ仕事してないじゃん。海外のクラブがーとか言うなら大迫勇也呼べよ〉
〈オーバーエイジも使わず最良の招集もせずオリンピックや対戦相手にリスペクトを感じない〉
こうしたファンの声がある中で、YouTubeでサッカー解説チャンネル「コウタ / Kota」を運営するコウタさん(@7dpkota)に見解を聞いた。
「日本代表は今回、OA枠はあえて使わなかったと推測しています。2022年U-23アジアカップからパリ五輪を見据えたメンバー(当時21歳)を招集してきた積み重ねがあるので、今大会をこのチームの集大成として、長期スパンで計画していたのではないでしょうか。
ただ、もし仮にOA枠を使おうとしても、クラブのプレシーズンやステップアップ移籍のタイミングと被ってしまい、現実的に招集が難しいことも事実でしょうね」(コウタさん、以下同)
実際、OA枠を使わなくとも招集できるA代表クラスの久保建英、鈴木唯人、鈴木彩艶らの招集すらできていない。久保自身、「(不出場は)みんなで話して決まった結論ですし、僕がどうしても行きたかったという話でもない。クラブが難しいと話しているのを聞いて、僕も納得している」と、クラブとの兼ね合いで出場できなかったことを打ち明けている。
ではもし仮に、誰でも招集できるのならば、誰を招集するべきだったと考えているだろうか。
パリ五輪で見たかったサッカー日本代表のベストメンバー
「当然ながら松木玖生と久保、そしてOA枠で板倉滉ですね。松木は欧州移籍と重なってしまい致し方無いと思いますが、これまでのチームの中心選手だったので離脱の穴が非常に大きく感じます。
久保と板倉は前回の東京五輪メンバーなので、前回大会4位の悔しい経験をチームに還元してくれる期待が持てたと思います。二選手とも実力は言わずもがなで、23/24シーズンも素晴らしい活躍でした。近い将来更なるステップアップを楽しみにしています!」
過去、直近で日本代表がOA枠を使用しなかったのは、2008年の北京五輪。この年は、本田、香川、長友、岡崎慎司、内田篤人といった、後に黄金世代を築く選手たちが名を連ねていたが、結果は3戦全敗。非常に苦々しい経験となった。
今大会では、この北京五輪の記憶を塗り替えるような活躍を日本代表に期待したいが、率直に、メダルを取れる可能性はどれくらいあるのだろう。
「30%ですね。グループステージからアンダー世代の強豪が多く、期待はしたいのですが厳しい戦いが想定されます。メダルを予想すると、金メダルはフランス、銀はスペイン、銅は日本……! といった感じでしょう。
フランスは強化試合の時点からレベルの高さをヒシヒシと感じます。自国開催だけあってA代表にひけを取らないスター揃いのメンバーを揃え、東京五輪とは全く次元の違う強さを感じます。スペインは前回大会準優勝の悔しさがあるので、今回こそ金メダル目指してやってくると思います」
注目のサッカー日本代表の初戦は、開会式2日前の日本時間7月24日26時。戦前の予想を裏切り、悲願のメダル獲得という快進撃を期待したい。
取材・文/集英社オンライン編集部