
六本木のミックスバー「GENIE」とおばんざいスナック「とき」の経営者であるだけでなく、YouTuber、トランスジェンダーモデルなど幅広く活動している矢神サラ(やがみ・さら)さん(32)。9月22日公開のインタビュー記事(#2)では、自身の性転換手術について語り、Xで炎上騒ぎとなった。
「女性を馬鹿にするな」「侮辱だ」とSNSで炎上
–––––前回のインタビュー記事がSNS上で炎上したことについて、どう思いますか?
矢神サラ(以下同) 記事タイトルに「大腸を切って女性器にした」と書かれていたんですけど、それに反応してコメントしている人が多い印象でした。たぶん、これが「女性器」ではなく違う書き方だったら、炎上しなかったかもしれないなと思っています。
「大腸を女性器と呼ぶなんて、女性に対する侮辱だ」「女性を馬鹿にするな」というようなコメントが数多く来て、「そんなつもりはないのに」と思っていました。
–––––「男が性転換手術をしたところで生物学的に女にはなれない」というようなコメントも目立ちました。これに対して、どう思いますか?
生物学的に女性になれないことは、自分でもわかっているんです。もちろん、私の身体は妊娠できないし、女性器も本物だと思っていません。
でも、私は心が女性だけど、身体は男性として産まれたので、少しでも自分らしく生きたいと思って、頑張ってお金を貯めて、すごく痛い思いをして、性転換手術をしました。現在の医学で男性が女性の身体に近づくには、これが限界なんです。
–––––矢神さんが行なった性転換手術は、昔からある方法なんですか?
はい。直腸と大腸を繋いでいる「S状結腸」という部分を10数センチメートルほど切り取り、膣として転用する手術で、50年くらい前からあるやり方なんですけど……「大腸を切って女性器にするとか気持ち悪い」「何でそんなことするの?」みたいなコメントがたくさん来ました。
次々に届く誹謗中傷。YouTubeにまでアンチコメントが
–––––誹謗中傷の多さから、開示請求も考えていますか?
弁護士さんに相談しています。ひどいコメントは法的措置も考えています。
Xで800件くらい引用リポストが来たんですが、すべてに目を通しました。あと、誹謗中傷コメントは全部スクショしています。ここまで炎上したことは今までなかったです。
前回の記事が公開されたあとは、Xだけでなく、YouTubeのコメント欄にも初めてアンチコメントが来るほどでした。
–––––そういったアンチコメントに対してどう思いますか?
「悪意を持って、嫌がらせのような文章で人を攻撃するのは違うんじゃない?」って思います。意見を言ってもらえるのはうれしいんですが、ただ人を傷つけるためにコメントしているような内容もあったので。
私自身、そういったコメントを見て傷つきましたし、私と同じような境遇の方やこれから性転換手術を考えている方も傷ついていて……。Xで「性転換手術をしてもこんなふうに言われるなら、生きている意味ないかも」「『男は手術をしても所詮ずっと男』って言われるなら、手術する意味ないのかな?」といったコメントをしている方もいて、それを見て胸が痛くなりました。
私が攻撃されることによって、自分が攻撃されているような気持ちになっている人もいると思うんです。誹謗中傷している人たちには、自分が発信したことによって、思いもよらぬ人まで傷つけている事実に気づいていないんですよね。
「ルッキズムだ」というコメントに対しては……
–––––前回のインタビューで「どうして命がけの大変な思いをしてまで、自分を変えたいと思うのか?」という質問に、「すべて『可愛く生きたい』っていう思いからですね。可愛いって、最高じゃないですか。不細工のまま生きるのは絶対にイヤ」と答えていらっしゃいました。それに対して、「ルッキズムだ」というコメントがたくさん来たとのことですが……。
私はルッキズムを助長しているわけではなくて、私が個人的に「可愛く生きたい」と思っているだけなんですよ。それは、私の自己満足の世界であって、第三者にそれを強要しているわけじゃないんです。
でも、皆さんに問いたいんですが、かわいい子が増える方がよくないですか?(笑)
–––––前回の記事は、意図せぬ方向に捉えられて、炎上してしまったということですか?
はい。記事ってこんなふうに「炎上することあるんだ」と思いました。誤解してコメントしている方も多いんじゃないかな? と。
私は「全員に理解されたい」とか「自分を認めてほしい」と思っているわけでも、プロパガンダをしているわけでもなくて……。私の人生について、聞かれたことを答えただけなんです。
動画であれば伝わることでも、文章にすると伝わりづらいこともあるんだと勉強になりました。
–––––SNSで心ないコメントをする人たちに対して、どういったことを伝えたいですか?
昨今、誰もが匿名で自由に発信できるので、人を傷つける重さが理解できていない人たちが多いなと感じました。誹謗中傷や言葉の暴力によって、自殺まで人を追い込む危険性の認知が進んでいないと感じています。
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前回のインタビューで「LGBTQの子たちが悩みを相談できるセーフティーネットを作りたい」「自分も小中学生時代に辛い経験をしたので、そういった気持ちを和らげられるような存在になりたい」と答えてくれた矢神さん。この世から差別や誹謗中傷で傷つく人が少なくなることを願う。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班