
2025年が幕を開けた。今年もたくさん笑える1年でありますように。
最初舐めさせて懐入ってきたらバチってしばいてくる師匠
—あけましておめでとうございます。先日、担当編集がふらっとルミネに行って、村上ショージさんを見たら、すごく面白かったと熱弁をふるっていました。なので今回のテーマ【師匠】でお話をうかがいたいなと。
友保隼平(以下、友保) やばいっしょ。めっちゃおもろいんですよ。なんかね、 あんな気ぃ抜かして「えへへ」って言いながら、「ごめんなさいね、あんま聞こえへんねん」とか言うて。え、紙切ってました? 紙切りやってました?
—紙は切ってなかったみたいです。
友保 紙切りはあるんすよ~。紙切りマジでおもろい。
小林 ギター持ってました?
—ギター回だったようです。師匠は独身なんですか?
友保 独身みたいで。
—すごい。どんどん面白くなるのもすごい。
友保 ねえ。年食えば食うほど。それなのに飲み行ったらめちゃめちゃ悪口言うんすよ。「あいつ嫌いや」とか(笑)。
—え、お二人は師匠と飲みに行ったことあるんですか!?
友保 一回呼んでもうて。一緒に地方営業の時に。
小林 3人で行ったよな(笑)。僕は別で1回、師匠と一緒にランチ行ったことあるんですけど。
—それもすごい。
小林 若手芸人をめっちゃ見てるんですよね。好きなんですよ。
友保 やっぱ「おもろい」に敏感やから。
—お二人のことは好きなんですかね。
友保 そう言うてくれはって、ええ(笑)。
—私も一度インタビューさせてもらったことあります。優しくておもしろかったんですけど、独特のオーラがありました。
友保 あと声が異常にデカいでしょ。この前も一緒に焼肉屋行ったんすよ。で、ほんま40メートル先から「ちょっと~いける~?」って声かけてくる。でも、声が異常にデカいから通じるですよ(笑)。
小林 で、自分はほぼ飯食わへん。
友保 ほとんど食わしてくれる。「こんなん頼んどいたらええやろ~」ってどんどん注文する。
—平日のお昼の寄席では、修学旅行の学生から年配のお客さんまでショージ師匠のときが一番お客さんが笑ってたと。
小林 マジでウケますからね。
友保 全員笑えるんですよ、あれ、ジジイも若いやつらも。しかも最初ちょっと舐めさせてきてるから。
小林 舐められんのがうまいんよな、ほんまに。
友保 で、懐入ってきたらバチってしばいてくる。すごいっすよ。
怪物のような年配芸人たち
—集英社オンラインにもいつか出ていただきたい。
友保 昔の話がめっちゃ面白いっすよ。一回京都花月(現・祇園花月)にね、(明石家)さんまさんに無理やり出させられたらしくて、「おもろいから」って言われて行って。
—どじょう!?
友保 おもろいやろ思って、なんも分からへんから。で、お客さんが引いたらしくて(笑)。支配人にめっちゃ怒られたって。終わってからさんま師匠の楽屋行って「すいません、めっちゃ怒られました」言うて「何してん?」「鼻からドジョウ入れました」。そしたら「次ウナギ入れろ」。落語みたいなオチ(笑)。
—きれいすぎる(笑)。
友保 『ガキ使』(『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』)にもたまに出るじゃないですか。わし最初あれで見ておもろいな思うたんですよね。なんならテレビも劇場のフリなんじゃないですか。
小林 あーテレビで見て、舐めさせといて。
友保 「あのおもんないおっさんや」思たら寄席バチクソおもろい。
—芸人さんが年を取れば取るほどおもしろくなるというのは、芸人の世界ならではですね。
友保 いや、それこそ祇園花月で一回ほんま修羅の日があって。もうジジイの軍団、マジで生きてるだけの人間が集まってるみたいな。
—どういうことですか?
友保 誰も何にも笑わへん、客席でにこってするだけのおじいちゃんおばあちゃん軍団。案の定全員がスベってて、それでみんな震えたら、ザ・ぼんちのおさむ師匠が来はって、客席ばーっと見て、「俺ここ得意やねん」って言って。で、いざ出たらバカくそウケてた。
—かっこいい……。
友保 やっぱ師匠やなと思いますね。「得意やねん」って。
—先日、『情熱大陸』に間寛平さんが出ていらして、すごくかっこよかったです。
友保 寛平師匠もめっちゃネタ見てますからね。俺ら今、呼んでもうてんすよ。寛平師匠のツアーとか。
小林 ちゃんとネタ見てはるから怖いんですよ(笑)。
友保 あんなね、ジジイまで生き残ってるってことはね。吉本のいいところは年上の人と喋れるのがいいですね。
吉本新喜劇の穴を一人で埋めた西川きよし
—そしてお二人は好かれてますね、師匠方に。
小林 好かれてんのかな、ありがたいですけど。
友保 この前、はせ兄(ティーアップ長谷川)の話したじゃないですか。独身のはせ兄にちょっと一発かましたろ思て、タバコ吸うてるときに「すいません、俺結婚したんすよ」って言ったら一言目が「ダサいな」。あと「お前愛した女の家に帰ってんの? 1番嫌だよ」ってやつ。
—エモーショナルでしたね、あの話は。
友保 で、この前俺背中痛くて、はせ兄に「すんません、わし背中痛いんですけど、はせ兄こんなんなかったすか?」って聞いたら「ないよ、お前死ぬわ」。そんな返しおっさんせえへんやろ(笑)。
—エモーショナルですね。
友保 夏に南海トラフじゃないかみたいな地震あったじゃないですか。で、海辺に近づくなってニュースで散々言ってた。はせ兄、あん時ニュース見てなかったらしくて、スマホ置いて1人で和歌山の白浜行ったらしいよ。
—以前の取材ではせ兄さんは自分の出番が終わるとすぐいなくなるっておっしゃってましたが、もしかしていつも海に行かれてるのでしょうか。
友保 教えましょうか、はせ兄が出番終わりどこ行ってるか。喫煙所にいます。
小林 近くにおったわ(笑)。
友保 喫煙所で2~3時間タバコ吸ってます。
—師匠でいうと、西川きよし師匠もいらっしゃいますね。
友保 きよし師匠すごいです、キー坊マジですごい。まず団体客いじって。「あーどこどこから来はった、昔お土産いただきましたよ。今回はどうでしょうかね」とか言うてな。
小林 47都道府県全部のエピソード持ってるからな。そこに触れてって。
友保 全部あるから、やっぱ。子どもには『ケンミンSHOW』もあるからな、きよし師匠は。
小林 一回コロナのときに新喜劇でクラスターが起きて、新喜劇が急遽なくなって。そんとき、きよし師匠が、その新喜劇の出番40分ぐらい一人でやり続けた。
—すごい。
友保 できはるからな。できはんねん。
—そんな師匠を見て、自分たちの未来みたいなものを感じたりするんですか、お二人は。自分たちもこういう風になるのかなって。
友保 知ってます? (ザ・ぼんち)のまさと師匠がNGK(なんばグランド花月)の出番の合間に何してるか。まさと師匠ね、よくわからん真っ白い部屋行くんすよ。 そこでコンビニ弁当食いながらネタ書いてる。
ファミリータトゥーを入れようとした師匠
—ああ、エモーショナルだ。
友保 わけわからん。あんなんようしやんわ(笑)。
—まだおもしろくなりたい。
友保 早よ、くたばれっちゅう話ですわ、あははは。
—いくつになってもずっと努力し続けるのはかっこいいです。
友保 そんでおさむ師匠は子どもにめっちゃウケる、声デカいから。赤ちゃんがビャーって泣いたら、そっちのほうにおさむ師匠もビャーって言いながら行く。もっとデカい音出す(笑)。
小林 それでいてちょっと色気あるんよな。
—わかります。そしておしゃれですよね。
友保 おしゃれやねん。一回ファミリータトゥー入れようとしたらしいよ。止められたって(笑)。
—お二人にとってのロールモデルというか、こういう風になりたいっていう芸人さんはいらっしゃいますか。やはりティーアップさんですか。
友保 いやぁ、そうなんですけど、ティーアップさんになるのは無理っすね。はせ兄みたいなリッター400mの車なんて買えないんで。
小林 どんどん減ってるな。
—以前うかがったときはリッター600mでしたね。
小林 リッター400、新幹線の端から端(笑)。
取材・文/西澤千央 写真/石垣星児