
1月24日、通常国会の施政方針演説で、目指す国家像として「楽しい日本」を掲げた石破茂首相だが、永田町では「通常国会では難題が待ち構えているのに、のんきすぎる」と厳しい声が上がる。ただ、国民の関心は「楽しくなければテレビじゃない」のフジテレビをめぐる問題に集中し、内閣支持率の下落傾向も一段落。
「楽しい日本」が総スカンで、「楽しくない」石破氏
「毎日苦虫をかみつぶすよう(な顔)では、楽しい日本はつくれません」「総理は重責の中でも毎日を楽しんでいますか」(れいわ新選組・山本太郎代表)
「苦虫をかみつぶしたような顔というのは、なるたけしなければいいなと思いますので、ご指摘を踏まえて改善に努力してまいりたい」(石破茂首相)
29日、参院の代表質問で、こんなやり取りがあった。楽しくなさそうな石破首相の答弁に、議員席からは思わず笑いが漏れた。
こうしたやり取りが繰り広げられたのは、石破首相が通常国会召集日の24日に行なった施政方針演説で、これから目指すべき国家像として、一人ひとりが自己実現を図っていける「楽しい日本」を掲げたからだ。
そのために地方創生を核とする「令和の日本列島改造」に意欲を見せたのだが、実際のところ石破首相本人は……。
「党内に味方もほとんどおらず相変わらずお疲れモード。議員会館に行ってタバコ休憩をするのが、数少ない息抜きのようです。『楽しい日本』をつくると言いながら、本人はまったく楽しくなさそうです」(官邸関係者)
「楽しい日本」には自民党内からも「言葉のチョイスがのんきすぎる」とあきれる声も出た。
「いまだに裏金問題が尾を引いていて、夏の参院選では自分たちの地元の議員が落ちるんじゃないかと戦々恐々。そんな中で自民党のトップに『楽しい日本』と言われてもねえ」(地方の自民議員)
150日間続く通常国会では課題が山積し、まったく「楽しくない」状況だ。
開会直後にはさっそく、自民党の裏金問題にからみ、安倍派の会計責任者の参考人招致が立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で議決された。
少数与党として臨む通常国会のため、石破首相をはじめとする政府・与党の思惑どおりには進まないのが現状だ。
そしてこの先にも、国民民主が求める「103万円の壁」の引き上げや、維新が訴える高校授業料の無償化などの議論が石破首相を待ち構える。
予算成立のため、国民民主か維新への歩み寄りが事実上求められる状況で、綱渡りの国会運営は続く。
世の中の関心はフジ問題に集中で、意外と支持率は持ちこたえ?
ただ、政権を取り巻く「楽しくない」状況は、ひとまず1月中は落ち着いたようにも見える。政権発足後から下落することが多かった内閣支持率が、横ばいの傾向になっているのだ。
1月24~26日に実施された日本経済新聞の世論調査では、内閣支持率は前回比2ポイント増の43%。1月に実施されたNHK、読売新聞の調査でも、ともに前回比1ポイント増となり、それぞれ39%、40%となった。朝日新聞や産経新聞など微減となっている調査もあるものの、全体としては横ばい傾向にある。
「各社の調査は国会の本格論戦が始まる前に実施されたものが多かったこともあり、下落傾向に歯止めがかかったとみられます。
さらに、年末からフジテレビ問題が大きく報じられるようになり、世の中の関心が政治よりもフジテレビに向かっていたことも内閣支持率が横ばいとなった要因ではないでしょうか」(全国紙政治部記者)
与野党攻防の山場の時期に、フジの第三者委員会報告書が
一方、フジテレビ問題に関心が集まったことにより、存在感を示しづらくなったのが立憲民主党だ。
立憲議員からは「フジの10時間半会見の日が、立憲の野田佳彦代表の代表質問の日に重なってしまった。本当は私たちも、自民党に裏金問題で10時間半会見をさせたいくらい。でも、立憲がそれをしたところで支持率は伸びないしなあ」と、ぼやきが聞こえる。
さらに、2、3月に開催される予算委員会は野党にとっては丁々発止のやり取りで首相や主要閣僚を追及できる見せ場だが、3月末にはフジテレビの第三者委員会の調査結果のとりまとめが控えており、世間ではしばらくフジテレビ問題への関心が続きそうだ。
「永田町では、予算審議が長引いて予算が年度終わりの3月末までに成立せず、暫定予算でつなぐシミュレーションもされています。
そうなったら石破首相にとっては大打撃で、与党内から退陣を求める声が出てもおかしくない事態ですが、世の中の関心はそれよりもフジテレビに向かっているかもしれません」(全国紙政治部記者)
ただ、フジテレビに関する報道が増えても、永田町では石破首相の少数与党としての綱渡りの政権運営は続きそうだ。石破首相の「楽しい日本」づくりの行方はいかに……。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班