「ONEさんならもっと怖く描くだろうな」新作マンガ『バグエゴ』ONE×設楽清人インタビューで見えた“二人の信頼関係”
「ONEさんならもっと怖く描くだろうな」新作マンガ『バグエゴ』ONE×設楽清人インタビューで見えた“二人の信頼関係”

原作:ONE×作画:設楽清人が贈る話題作『バグエゴ』。世界のシステムに干渉する「ウラワザ」を知ってしまった二人の男子高校生の物語である。

設定や世界観の作り込み、予想できない展開、ハイクオリティの作画など魅力的な要素溢れる同作だが、そこにはどんなこだわりが隠されているのだろうか。作者の二人が語る創作秘話の中から、それぞれが大事にしているものが見えてきた。(前後編の後編)

ONE作品の共通点“男性コンビ”が今作でも! そのこだわりは…

――「ウラワザ」というのはひと昔前のレトロゲームでお馴染みの発想ですが、何か思い入れのあるゲームなどはありますか?

ONE 僕が一番やっていたのは小学4、5年生くらいの頃で、初代ゲームボーイでした。僕はやり方は知らなかったんですけど、『ポケットモンスター 赤・緑』でミュウを作る方法があるといった噂が巷で流れていて、それに何か普通にプレイするのとは別の不思議な魅力があるなと感じていました。

あとはスーパーファミコンとかですね。僕はそんなにバグとかにこだわっていたタイプではないんですけど、そういうものがあるらしいという話だけでも面白いなと思っていました。

設楽 僕は世代的には『ファイナルファンタジーVI』辺りで、『クロノ・トリガー』とかやってました。でもどちらかといえばゲームを作る系のゲームが好きで、『デザエモン』とか『RPGツクール』とかすごい好きでしたね。

――『ワンパンマン』や『モブサイコ100』と同様に『バグエゴ』の主役も羊谷と黒堂という男子高校生コンビの物語です。“男性コンビ”というのはONE先生のこだわりなのでしょうか?

ONE 強く意識しているということはありません。物語を作るときに「主人公一人」「主人公ともう一人」「仲間たちがいる」などのパターンが考えられると思うんですけど、主人公一人だと自分的には作りにくくて、リアクション要因とか客観視してくれるキャラとか、あと会話の相手になってくれるキャラがいるといいですね。

どちらかといえば設定や物語の導入の強度を上げたくて、一人一人の掘り下げにリソースを割くより、ちょっとストーリー側に行きたいなと思っていて、人数を減らしていった結果、主人公に対して一人がいいかな、というイメージです。なので意外とコンビに対するこだわりというものはなく、気づいたらそうやって作っているといった感じです。

ONEさんならもっと怖く描くだろうなと思って」(設楽)

――設楽先生は『バグエゴ』を作画するときに、どんなことを意識していますか?

設楽 やっぱりまずONEさん“らしさ”を残すことです。僕がONEさんの作品で好きなのはシュールなところと、どことなく“怖い”ところなんです。これまで自分ではあまり怖い演出とか描いたことがなかったので、いつもそこは気をつけないとな、と思っています。

例えば化け物を描くときも自分の本来の作風ではなく、ONEさんのジトッとしたホラー感というか、その辺りを大切にしたいなと思っています。

――実際に作中に登場する「夢の中」のシーンはものすごい恐怖感と不気味さがありました。

設楽 いやでもONEさんならもっと怖く描くだろうなと思っていて……。

ONE いやそんなことはないです(笑)

――ホラーシーンはもちろんなのですが、『バグエゴ』は全体的にもかなり手間と時間をかけて作画をしている印象があります。

設楽 そうですね。日常に潜む“バグ”をテーマにしているなら、日常部分をかなりしっかり描かないと偽物っぽく見えるというか、ただただファンタジーになってしまうと思うんです。きっとリアルな絵の方がバグは際立ちますし、リアルだからこそ不気味に感じるのかなと思い、こだわりを持って作画しています。

――原稿制作はまずONE先生のプロットを設楽先生がネームに起こし、それをまたONE先生が確認するという流れだと伺いました。

ONE 往復の回数はけっこう多いんじゃないかな、と思います。細かい調整も仕上げ前に挟んで進行しています。

幸せな仕事をさせていただいてるなと、自覚しています。

設楽 僕が勝手にやっちゃう部分もあるんですけど、でもONEさんのマンガなので、やっぱり最終的にはONEさんに決めてもらいたい気持ちがあるんです。

『バグエゴ』で読者に注目してほしいポイントは?

――本当にお互いを信頼しあっている関係なんですね。今日のお二人の雰囲気を見ていても、それがすごく伝わります。

ONE 打ち合わせをする度にどんどん強度が上がっていく実感があって、いいネタ出し、いい話し合いができていると感じています。

第2話は、特に時間をかけて話し合いをさせていただいて、ネタ出しや演出、場面の構成なども一旦アイデアを出し切って、そこから更にネーム制作で設楽さんと再度打ち合わせをしながらキャラの心情についての擦り合わせを深めていきました。結果的によい最終案に漕ぎつけることが出来たのではないかと思いました。

設楽 僕も完成形を見たときに「最高じゃん!」と思いましたよ。こだわって本当によかったなって。

ONE 設楽さんがものすごい吸収力で僕の話を理解してくれています。作中に出てくる「夢の中」のアイデアも、設楽さんの大量の引き出しから、いい世界観を作ってくれて、それが完成したときはすごく感動しました。

――『バグエゴ』のコミックス1・2巻が2月18日に発売されます。読者に特に注目して読んでほしいポイントを教えてください。

設楽 黒堂と羊谷の関係性がどう変わっていくのか、といったところを楽しみにしていただければと思います。それと「ウラワザ」という“謎”に関して、個人的にもとても気になっています。

ONE 人間関係の変化、ウラワザを取り巻く環境の変化、それに巻き込まれる人間関係の変化に注目してほしいです。あと物事への価値の見出し方、キャラクターの心情の部分ですね、もし答えがあるのなら、それをウラワザを通して表現できたらいいなと思っているので、見守っていただけると……。

また今後どんなウラワザが出るのかは自分でも楽しみです。「普通に変だな」というウラワザと、「“変な”変だな」みたいなウラワザを目指しているので、それを思いついたときの喜びを、キャラクターを通して読者に伝えられたらすごく幸せだなと思っています。それが設楽さんの絵で表現されるのも楽しみです。

取材・文/集英社オンライン編集部

『バグエゴ』

原作/ONE 作画/設楽清人
「ONEさんならもっと怖く描くだろうな」新作マンガ『バグエゴ』ONE×設楽清人インタビューで見えた“二人の信頼関係”
『バグエゴ』
2025年2月18日
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