
強い寒波が到来しているにもかかわらず、学校に通う子どもが十分な防寒ができないのは「ブラック校則」のせい――そんな声がSNSに多くあがる中、ある保護者から「うちの子どもの学校では『腕まくり禁止』のルールがある」との声が寄せられた。いったいなぜ、腕まくりが禁止なのか。
禁止の理由は「決まりだから」
学校に通う子どもが十分な防寒ができないのは「ブラック校則」のせい――SNSを中心に、保護者や生徒、教員などから不可解な「ブラック校則」をめぐりさまざまな声があがっている。
そんな中、集英社オンラインが2025年2月5日に公開した記事を受け、大分県在住のある保護者から編集部にこんな声が寄せられた。
「うちの子どもの通っている公立中学では『腕まくり』が禁止されています」
この保護者に詳しく話を聞くと、意外な事実が判明した。
「昨年から市内中学校の制服が一斉に同じデザインのブレザーに変わりました。『ジェンダー平等』の観点から、夏服は男女ともにズボンで、冬服は男女問わずスカートとズボンから選べるようになり、多様な組み合わせができるようになったんです。
ところが、夏場に体温調節のためにカッターシャツを腕まくりしたら、子どもが先生からすごく怒られたみたいで…。学校に問い合わせたところ、『腕まくりは禁止です』とのこと。
ボタンをはずして一回まくる程度でもNGで、理由を聞いても『決まりだから』の一点張りでした。今は昔と暑さが違うし、子どもの健康や命を第一に考えてほしいです」
さらには、「華美だから」という理由でベストの着用も認められていないという。
「初めてのブレザー型制服だったので、季節の変わり目の体温調節がよくわかりませんでした。そこで先生にベストの着用について口頭でたずねたら、最初は『ベストはOK』という返事でした。
なので、派手ではない単色のベストを購入して子どもに着せたら、先生も『いいじゃん』と言ってくれたみたいで。
ですが、その数日後に同じ先生から『よく確認したらダメだったみたい』と言われ、その場で脱がされたようなのです。ベストは“華美”だから、と。それなら指定のものを作ってくれればいいのに…。
しかも、『シャツの中に着る分にはOK』みたいなんです。そんなのゴワゴワしてしまうじゃないですか。とにかく“ベストが見えたらダメ”なのだそうです」
「生徒手帳がなく、校則が確認できるものがない」
一方で、以前よりゆるくなったルールもあるという。
「髪型については、これまでツーブロックやツインテール、三つ編みがNGだったのがOKになりました。そのあたりはゆるくなったのに、なぜ腕まくりとベストがNGなのでしょうか」
そもそも、生徒手帳に校則の記載はないのだろうか?
「『夏は何時までに帰りましょう』『生徒だけでここに行くのはだめ』といったルールは文書でありますが、そもそも昔から『生徒手帳』がなく、校則が確認できるものがありません」
他にも、子どもが私立中に通うという別の保護者からはこんな声が寄せられた。
「うちの子どもが通う私立高校は校則が厳しいです。例えば、頭髪検査。
不定期で行われ、男子は『前髪が眉毛より長いとダメ、横は耳にかかるとダメ』で、指導を受けると指定された日までに切って再検査を受けさせられます。
また、登校時のカバン、体操服、冬のコートとマフラーは学校指定のもののみが使用可能なので、購入しないと手袋しか使えません。
夏場は高校野球の応援に参加しなければならず、電車を使うときは一つ手前の駅で降りて歩く。
最近は気温も変化していて、体調に関わる事をこんなふうに厳しくする理由がわかりません」
「最終的には各学校長の方針によります」
前出の「腕まくり・ベストNG」の公立中学校がある市役所の学校教育課担当者に話を聞いたところ、「制服に関して細かい規則はない」という。
「校長会主宰のもと、数年かけて保護者や生徒の意見を聞きながら検討し、市内の全中学校で動きやすさや機能性・多様性を重視したブレザー型制服を導入しました。
校則という意味では、制服に関しては基本的に細かいものはありません。各学校それぞれの方針でルールを設けているかと思います。地域によって自然環境も異なるので、最終的には各学校長の方針によります」
同担当者によれば、むしろ校則は以前よりもゆるくなっているというのだ。
「保護者からいろいろな要望があったり、子どもたちのニーズもあるので、以前だったら『校則違反だ!』と厳しくしていましたが、ここ10年くらいほとんどそういうことはありません。
また経済的な負担もあるので、たとえば以前なら制服の上に着る上着などもある程度そろえていましたが、今は個人任せになっています」
校則に関して、PTAはどのように関わっているのか。あるPTA団体の幹部に話を聞いたところ、複雑な内情を語ってくれた。
「個々の記録をつけているわけではありませんが、各校のPTAが学校に指摘をして校則が変わった例がこれまでにあったことは聞いています。
ですが、昨今、PTAも変わってきていて、以前よりも力を失いつつあります。任意団体のため、『加入・非加入』をめぐっての揉め事など、PTA内部の問題にしか目がいっていないというのが現状なんです」
校則をめぐってはまだまだ課題が山積した状態と言えるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班