〈教師のいじめ〉「病気でよく休むしアテにならん」「邪魔くさい」がん闘病後に復職した女性教師が受けた壮絶な仕打ち…深刻な教員不足の原因に潜む「教師の質」の低下とは
〈教師のいじめ〉「病気でよく休むしアテにならん」「邪魔くさい」がん闘病後に復職した女性教師が受けた壮絶な仕打ち…深刻な教員不足の原因に潜む「教師の質」の低下とは

全国的に教員が不足している。今年1月9日に全日本教職員組合(全教)が発表した「教育に穴があく(教職員未配置)」実態調査結果(2024年10月1日時点)によれば、34都道府県11政令市の小学校、中学校、高校、特別支援学校などで、合わせて4739人もの欠員が出ており、授業の穴を埋めることさえ難しい状況になっている学校もあるという。

そんな中、昨年3月に早期退職をせざるを得ない状況に追い込まれた元教諭だった女性は、こういった「教員不足」の原因には「教師の質の低下もある」と訴える。 

病休後に復職も、主任教諭からいじめを受けるように… 

昨年3月に関西方面の高校を退職した元教員のAさん(53歳)。

「定年まで教師を続けたかったのですが、教頭と主任からひどい暴言と嫌がらせを受け、心の糸が切れてしまいました…」と、当時の辛い心境を語る。

Aさんは大学院を卒業後、講師経験も含めて25年以上、県立高校の国語教師を務めてきた。教員時代は同僚の誰よりも早く、朝7時には出勤し、湯茶の準備はもちろん、率先して電話対応なども行なってきたという。

だが、約10年前にがんを患い、1年の病休後に復職したところ、主任教諭からたびたびいじめを受けるようになったという。

「病休前から私が挨拶をしても、その先生は挨拶を返してもくれなければ、目も合わせてもくれませんでした。

復職後、私が完全に体調を取り戻せないでいた頃から通りすがりに『いねや!(帰れ、のような意味)』とか『じゃぁくさい(邪魔くさい、のような意味)』などと言ってきたり、とにかく言葉がキツかったんです」

その主任教諭は、職員室内で怒鳴り散らすことも日常茶飯事だったという。

「私がその先生にプリントを出した際に、一箇所記入漏れがあり『このバカが! こんなプリントの出し方する奴あるか』と怒鳴られました。私以外にも、いろんな先生に主任という肩書きを振りかざしては怒鳴り散らしていましたね……」

Aさんが体調不良で休んだ翌日、わざわざAさんの机に来てこんな言葉を吐き捨てたという。

「私が授業に向かおうと準備をしていたところ、主任が私の机にツカツカと歩み寄ってきて『A先生がいると時間割も変えなければいけないし、他の先生が迷惑だから早く辞めるか、死んでくれるかしてくれへんか?』と言ってきました。

驚いて『今、何とおっしゃいました? ご自身がおっしゃった言葉、わかりますか』と言ったら、主任はあろうことか『やかましい!』と返してきました」

挨拶しても無視され、ことあるごとに罵倒されながらも辛抱してきたAさん。

そして、学校行事に関してとある事件が起こり、Aさんはとうとう絶望の淵に立たされる。

自室で睡眠薬を大量摂取し… 

Aさんは、毎年担っていた重要なポストがある学校行事を楽しみにしていたのだが、突然、理由もなくその担当を外されたという。

「私は教頭に『どうして私がこの行事のメンバーに入っていないのか』と聞きに行きました。すると、教頭は『A先生は病気でよく休むしアテにならん』と半笑いで言い、主任もその言葉にかぶせるように『まったく、そんなこともわからないなんて鬱陶しい』と嘲笑われました。

私はそれまでどんな言葉を言われようと耐えられましたが、その行事のメンバーを外されたことが悔しくて悲しくて、プツッと心の糸が切れてしまったのです」

Aさんは帰宅後、自室で睡眠薬を大量摂取し、薄れゆく意識の中で手首を切って自殺未遂を図った。

「なぜ、その程度でと思われるかもしれませんが、私にとってみたらその行事の役割こそがモチベーションでもあり、それを軽んじられたことに絶望感を覚えたのです。

幸いにも、同居していた母が動揺したのか救急ではなく警察に通報をしてくれ、駆けつけた警察官が私の話を聞いてくれました。『生徒たちも悲しむからそれだけはやめてくれ』と」

その後、Aさんは心療内科に行き病休を取り、ふたたび復職を試みようと考えていたが、教頭の勝手な行動により退職を余儀なくされた。

「心療内科で診断書を書いていただき、病休にしたつもりだったのですが、教頭に勝手に年休に変更されていて……。

年休が3日間ほどしか残っていないタイミングでそれに気づきましたが、それと同時期に同居する母が認知症を患い介護が必要になったこともあり、泣く泣く退職せざるを得ませんでした」

こうして「定年まで勤め上げること」を目標にしていたAさんの志は半ばで断たれた。

Aさんは教員不足の課題についてこう訴える。

「文科省が6年後までに段階的に教員の給料を引き上げるなどと言っていますが、それでは遅すぎます。それに給与引き上げと同時に必要なのは、教員が授業やテストの準備以外にも担わされている事務的作業をする事務員の配属だと思います。

しかし、それ以上に問題なのは、やはり教員の質の低下だと思います。私が教員を目指した頃の倍率はとても高かったんですが、今は誰でもウェルカム状態でどんな人でも教員になれる状況です。

これでは質は下がる一方なので、まずは、教員の質を上げることが教員不足の解決の第一歩だと思います」

昨年度、精神疾患で休職をした公立学校の教員は、過去最多となる7119人を更新したことが文科省の調査で分かっている。

長時間労働、支払われない残業代など、さまざまな理由で、教師になろうと思う人が減少している現在において、労働環境の早急な改善は不可欠だが、それに加えてメンタルヘルス対策もしっかりとしなければ、日本の教育界の未来は危ないといえるだろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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