3000万円が1日で溶けたオンラインカジノの恐怖「30秒で賭け金が2倍になることも」脳への刺激が強すぎるバカラの落とし穴と依存症との分岐点は?
3000万円が1日で溶けたオンラインカジノの恐怖「30秒で賭け金が2倍になることも」脳への刺激が強すぎるバカラの落とし穴と依存症との分岐点は?

令和ロマンの高比良くるまさんがオンラインカジノを利用したことにより活動自粛を発表するなど、にわかにオンラインカジノに注目が集まっている。実際にそこではどのような賭け行為が行われているのか、元利用者の菊池さん(仮名)に話を聞くことができた。

現在は、オンラインカジノでつくってしまった500万円の借金を返済中だという菊池さんがギャンブルの沼にハマっていった理由とは。

有名スポーツ選手のバナーをクリック、2年間で借金500万

そもそもオンラインカジノとはいったいどのようなものなのか。元利用者の話を聞くと、その依存性の高さが浮き彫りになってくる。

菊池さん(仮名)は24歳だった2021年11月頃から、オンラインカジノにのめり込んでいった。その後の約2年間で500万円もの借金を抱えることになった。オンラインカジノを始めたきっかけは、バナー広告だったという。

「暇つぶしになりそうで、何気なくクリックして始めました。お金を賭けるゲームだとはわかっていましたが、広告に好きな有名スポーツ選手が写っていたので、つい安心感を覚えてしまいました。違法かもと気になって調べてみたものの、『サイトは海外にあるから安全です』という説明を見て、大丈夫だと思い込んでしまいました」(菊池さん※仮名)

菊池さんが主にプレイしていたのは、バカラというゲーム だ。

バカラはトランプを使用し、ディーラーとプレイヤーのどちらが勝つかを賭けるゲームで、2枚のカードが配られて、合計の下一桁が9に近い方が勝つというシンプルなルール。

オンライン上で実在のディーラーとリアルタイムでプレイでき、日本人ディーラーのいるテーブルも用意されていた。インターネット上のギャンブルではあるが、臨場感があり、フェアな勝負のように感じられたという。

「最初は数百円から数千円程度を恐る恐る賭けていました。

でも、ゲームに慣れてくるとシンプルでおもしろいし、少しずつ大きな金額に挑戦するようになりました。当初は1万円を賭けるだけでドキドキしていましたが、それにも慣れると今度は10万円、さらには50万円というように、賭け金がどんどん膨らんでいきました」

菊池さんが行なっていたバカラでは、一度に数百万円を賭けることも可能で、わずか30秒で賭け金が2倍になるか、すべてを失うかが決まる。賭け金の大きさとゲームのスピード感から、脳への刺激は非常に強いものとなる。

さらに、スマートフォンで24時間365日いつでも気軽に賭けられるため、賭博の頻度が高くなりやすかった。時間と場所の制約がないため、ギャンブルから距離を置くことも、自制することも困難なのだ。

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子氏によるとオンラインカジノは、パチンコや競馬などと比べて、依存症のリスクがはるかに高いという。

やめたくてもやめられず、3000万を一日で溶かす

「オンラインカジノをはじめてから約4ヶ月後には、貯金が底をつきました。でも、勝てば返せると思っていたので、借金をするようになり、消費者金融とクレジットカードのショッピング枠を使って、限度額いっぱいの300万円まで借りたんです。それでも勝てなくて、いよいよ賭けるお金もなくなり、自分にギャンブルの才能がないこともわかったので、もうやめようと決意しました」

その後、約8ヶ月間はオンラインカジノにはいっさい手を出さなかったという。そんな中、借金返済のお金が1万円だけ足りないという状況になってしまった。工面の方法を考えたときに、オンラインカジノのことが頭をよぎった。

「バカラで1回だけ、1万円だけ賭けて、勝てば返済できる。

だから、それを最後に絶対にやめようと思ったんです。それで勝ったんですよね。でも、もっとほしくなってしまってやめられなくなって、またギャンブル沼にはまってしまったんです」

やめたくても、やめられないというのはギャンブル依存症の典型的症状だ。いくら儲かったとしても歯止めがきかない。「最高3000万円まで勝ったこともありますが、一日で溶かしてしまいました」と菊池さん。

ギャンブル依存症になるとギャンブルが生活の中心となり、社会生活にも支障をきたすようになる。

「頭の中は常にギャンブルと多額の借金のことでいっぱいでした。誰かと会っているときでさえ、ギャンブルがしたい、次の借金はどう返そう、そんなことばかり考えていました。借金を返すために働かなければと思い、約束を早めに切り上げることもありました」

借金額は500万円まで膨らみ、もはや借入先もなくなった菊池さん。ギャンブルから抜け出せず、借金の泥沼に苦しみ、心身ともに疲れ果てていた。やめたいと思いながらもコントロールできない自分の状態に違和感を覚え、これはギャンブル依存症なのではないかと考えるようになり、支援団体への相談を決意したという。

「自助グループに参加すると、ギャンブルをやめたい人たちが集まっていて、苦しんでいるのは自分一人ではないと実感できました。

ギャンブルをやめた人の体験談を聞き、自分がギャンブルに走った原因や生き方を見つめなおすことで、ようやく新しい人生を歩み始めることができたんです。一昨年の5月からギャンブルをやめて、もうすぐ2年になります」

ギャンブルをやめたくてもやめられない場合は、依存症に陥っている可能性が高く、一人で解決することは困難だ。一人で抱え込むのではなく、まずは専門機関に相談しよう。

今回の騒動を機に多くの人がその危険性に気づき、菊池さんのような被害者がこれ以上増えないことを願うばかりだ。

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会
070-4501-9625

取材・文/福永洋一

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