
令和ロマンの高比良くるまさんが活動自粛を発表するなど世間を騒がせている「オンラインカジノ」問題。日本国内で利用者が急増したのは、海外の運営拠点に対して効果的な取り締まりができてこなかったことから、日本市場が狙い撃ちされた背景があるという。
コロナ禍をきっかけに日本からのアクセスが100倍に
そもそもオンラインカジノとは、インターネット上で提供されるカジノゲームのことだ。バカラ、ルーレット、スロットをはじめ、スポーツベッティングなども含まれ、その簡易性と仕組みから、ギャンブル依存症を引き起こす危険性をはらんでいる。
日本国内からのオンラインカジノへのアクセス数は世界第3位を記録しており(第211回 国会参議院質問主意書より)、この急激な利用者増加の背景には新型コロナウイルスの影響があるとされている。
パンデミックにより、人々の社会的なつながりが希薄化し、孤独感や不安感が広がっていった。この心理的ストレスに加え、増えた余暇時間と政府からの給付金が、ギャンブルへの誘因となった。
このような状況下では、ギャンブル依存症のリスクが高まる。同様の事例として、東日本大震災後、東京電力からの賠償金を受け取った被災者の中から多くのギャンブル依存症者が現れたといわれている。
「日本語版のオンラインカジノサイトは2012年には存在していましたが、新型コロナウイルスの影響で日本からのアクセスが100倍以上に急増したのを受けて、世界のオンラインカジノ市場は日本を重要なターゲットと見なすようになったんです。その結果、日本に本格的に市場参入するサイトが急速に増えていきました」(田中紀子さん、以下同)
日本国内では、競馬や競輪といった国が認可したギャンブルを除き、すべての賭博行為が違法とされている。たとえ海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内からアクセスして賭博を行なうことは違法である。この法的立場は、オンラインカジノが登場した当初から、一貫して変わっていない。
しかし、オンラインカジノの利用者の規模に比べて摘発事例は少なく、実効性のある取り締まりができていないため、十分な抑止効果が得られていなかった。
さらに、オンラインカジノの運営拠点が海外にあるため、日本の刑法の適用が困難な中、効果的な規制強化や法改正は進まず、違法性の周知活動も不十分なまま、オンラインカジノに対する適切な管理統制が行われていない状況が続いてきた。
「取り締まりがされないことにつけこまれて、日本市場は狙い撃ちされる形となりました。オンラインカジノ業界は莫大な資金力を背景に、インフルエンサー、YouTuber、スポーツ選手、芸能人などをアンバサダーとして起用し、大規模な広告展開を行ないました。地上波テレビ、ラジオ、スポーツ新聞といったメディアにも、タイアップ広告が大々的に流されていたんです」
事業者への規制手段が欠如する中、信頼できるメディアや著名人からの情報発信が増加したことで、違法性への認識が曖昧になっていった。
さらに、「海外での運営だから合法」「ライセンスを保持している」「無料版なら問題ない」といった誤った認識も広く流布された。
「このような情報は、オンラインカジノ運営側が作り出した都合のいい論理に便乗したアフィリエイターなどによって拡散されました。無料版が合法といいますが、無料版だけでは事業として成り立たず、その目的は有料版への誘導です。
課金した時点で違法となるサービスを広めることは、詐欺行為に他なりません。実際、オンラインカジノで宣伝をして報酬を得ていたアフィリエイターが、常習賭博のほう助容疑で逮捕される事例も出てきています」
利用者よりも、広告が容認されてきたことが問題
こうしたオンラインカジノの問題が、人気芸人たちの利用発覚をきっかけに世間の注目を集めることとなった。しかし、本質的な問題は社会構造にあり、そこに目を向けるべきだという。
「報道された芸人さんや広告塔に使われた有名人はある意味、被害者的な立場にあります。政府による対策や法規制が進まないまま、メディアが大々的に広告を展開してきた構造こそが問題なのですから、違法性を見抜けなかった利用者に非難が集中するのはおかしなことです」
オンラインカジノの主なターゲットはスマホを利用する若者だ。
「依存症に陥ると、意志やモラルだけでは歯止めがきかず、違法性を認識しても止められなくなります。そのため個人の意志に頼るのではなく、国による抜本的な解決策が不可欠です。具体的には、サイトブロッキングの実施や、参入業者への重税・罰金の導入などの対策が必要でしょう」
また、オンラインカジノの違法性を周知することも重要な対策の一つだ。しかし、より深刻な問題は、違法性の認識が広まることによって、利用者が罪悪感から誰にも相談できなくなり、闇バイトなどの危険な状況に追い込まれてしまうことだ。
オンラインカジノを利用してしまい、自力でやめることが難しい場合は、専門の相談機関に相談することが有効な解決策となる。
「今すぐにでもやめられる人は、すぐにやめるべきです。アカウントをすべて削除し、今後届く営業メールもすべてブロックしましょう。しかし、やめるべきだとわかっていてもやめられない人は、依存状態にあるため、必ず相談機関に連絡してください。
相談機関が通報することは決してありませんし、警察からの事情聴取についてのアドバイスも可能です。また、警察との面談が必要な場合は、同行することもできます。
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会
070-4501-9625
取材・文/福永洋一