
ボディビルダーとして、ミスター・オリンピア・コンテストで7回優勝したほか、ミスター・ユニバースのタイトルも獲得している俳優・政治家のアーノルド・シュワルツネッガー。全米110万部突破の筋トレ解説書の金字塔『王者の筋トレ』では、彼のトレーニングプログラムや各エクササイズ、ボディビル大会での戦略、食事法が、自らの言葉で綴られている。
本稿では同著より、ボディビルや筋トレにおけるマインドの重要性を、一部抜粋・再構成してお届けする。
「ボディビルをすることに快感を覚えた」
多くのボディビルダーは、鏡の前でポーズをとり、全身から発達途上の筋肉が飛び出してくるのを見て、途方もない満足感を覚える。巻き尺を使って体の各部位を正確に計測し、何cm大きくなったと言っては大喜びする。
しかし私にとっては、トレーニングという体験そのものが常にやりがいのある楽しいものだった。
ジムで過ごすひと時は、1日の中で最も充実した時間だった。トレーニングがもたらすさまざまな感覚、中でもトレーニング中のパンプ感、トレーニング後の疲労がもたらすリラックス感がたまらなく好きだった。
ボディビルダーであることを楽しむだけでなく、実際にボディビルをすることに快感を覚えた。
こんなふうに熱意を持ってトレーニングすることが肝心なのだ。本当に好きでなければ、毎日ジムに通い、過酷なトレーニングに打ち込むなんてことは続けられないだろう。
ジムに来ていやいやトレーニングしているようでは、ジムでの筋トレを待ちきれない人ほどの成果を出せるはずもない。
ジムには、もっと激しくトレーニングするようにとアドバイスしなければならない人もいれば、やりすぎないよう注意しなければならない人もいる。
私の知る限り、大会で勝利を収めるのは、きまって後者のボディビルダーだ。
シュワルツネッガーが語る「ボディビルの極意」
ボディビルでは、身体と同じくらいにマインド(意志、頭脳)が重要だ。私の知るチャンピオンはみな、やる気にあふれ、意志の力で筋肉を成長させたと言ってもいいほどだった。
しかし、マインドが重要な理由はほかにもある。
ボディビルに限らずスポーツで成功するには、考える習慣を身につける必要がある。自分が何をしているのかを理解しなければならないし、トレーニングテクニックをマスターしなければならない。
上級者になるほど、ボディビルの基本原則を超えて、自分にとって本当に効果的なやり方を見つけなければならない。筋肉を発達させるのと同じように、直感を発達させ、それに耳を傾けられるようにならなければならない。
肉体的にハードなトレーニングが必要なのは当然だが、頭を使ってトレーニングしなければ、大した成果は得られない。
もちろん、そういったことはみなトレーニングを続けるうちに自然に身についていく。だから、最初のうちは基本に忠実であればいい。
トレーニングを始めたばかりのころは、「自分の感覚」に従ってトレーニングしようにも、そもそも正しいトレーニングがどのような感覚かわかっていないのだから、できるはずがない。それには経験が必要なのだ。
正しいトレーニング方法をマスターし、その方法でトレーニングする感覚に慣れていくうちに、「感覚」や「直感」に頼れるようになる。
私も例にもれず、最初は基本的なエクササイズから始めた。
たとえば、大胸筋や広背筋のエクササイズを最大限の強度で何セットも行っても、背中と胸のスーパーセットをしたとき、つまり引く動作と押す動作を組み合わせたときほどよい結果は得られなかった。
しかし、このテクニックがすべての筋肉に当てはまるとは限らないし、私と同じトレーニングを他のボディビルダーがしても同じ結果を得られるとは限らない。
だから、まずは関連するテクニックをすべて身につけてから、個々のテクニックがあなた個人にどのような効果をもたらすかを検討しなければならない。これこそがボディビルの極意である。
このプロセスの第一歩は、ジムで行うエクササイズの意味を正確に理解し、ルーティンをこなす中で日々経験する感覚を言語化する習慣を身につけることだ。
競技ボディビルダーを目指しているなら、おそらく競争相手もあなたと同程度のテクニックを身につけているだろうから、大会では自分の直感や感覚をどの程度活かせるかが勝敗を分かつカギになる。
「ボディビルは頭を使わなければならない」
どんなにレベルアップしても、疑問が生じることはある。それが頭を使わなければならないもうひとつの理由だ。
自分が何をしているのかを分析し、自分の進捗をきちんと評価できなければ、その先へは進めない。
ミスターオリンピアレベルの選手でさえ、ジムでの進捗に満足できず、さらに効果的なトレーニング方法を求めて試行錯誤を繰り返しているのだ。
だからこそ、トレーニングのさまざまな原理や方法についてできるだけ多くのことを学び、どのような選択肢があるのかを理解しておかねばならない。
このような理由から、私は単にエクササイズのやり方を解説するだけのありふれた本ではなく、このようなボディビルの事典を作ったのだ。
本書では、ベンチプレスやバーベルカールのやり方、エクササイズをどのように選択するか、そしてそれらをどのようにプログラムに組み入れるかを説明している。
まず基本的なトレーニングを取り上げ、次いで上級者向けのトレーニング、そして大会出場を目指す人には競技者向けのトレーニングへと進むのに必要な情報を提供している。
また、筋肉を増やすための食事法、脂肪を減らすためのダイエット法、ポーズのとり方、日焼けの仕方など、ボディビルに関わるあらゆることについて解説している。これにはスポーツとしてのボディビルと、普段のトレーニング活動としてのボディビルの両方が含まれる。
しかし、これまで述べてきたように、これは肉体のハードワークに限った問題ではない。もちろんそれが前提ではあるが、同時に考えることや学ぶことも含まれる。
頭を使って効果的にトレーニングすること、正しいマインドを持つこと、個々の目標を達成するために必要なボディビルの知識を身につけることも等しく重要な要素だ。
しかし、エクササイズの基本原則を学ぶ前に、実際のワークアウトで身をもって知ることになるいくつかの特別な体験を理解しておくことが重要だと思う。
具体的には、パンプ、トレーニング強度、ケガによる痛みと筋肉痛(とその見分け方)、優れたトレーニングパートナーの助けを借りることで得られる大きなメリットなどだ。
文/アーノルド・シュワルツェネッガー
『王者の筋トレ』(マイナビ出版)
アーノルド・シュワルツェネッガー
オリンピア7回優勝を果たした”絶対王者”、アーノルド・シュワルツェネッガー。
ボディビルの歴史、筋トレ初心者~上級者のためのトレーニングプログラム、各エクササイズの解説、ボディビル大会での戦略から食事法まで、筋トレのすべてがここにある。