「こんなの虐待じゃん」赤ちゃんを抱えてスノボーをする男性に批判殺到…専門家が指摘する危険性「重度の損傷が生じる可能性」
「こんなの虐待じゃん」赤ちゃんを抱えてスノボーをする男性に批判殺到…専門家が指摘する危険性「重度の損傷が生じる可能性」

抱っこ紐をつけて幼児を抱えたままスノーボードをする男性の姿がSNSに投稿され、注目を集めている。この動画を撮影、投稿した人物に話を聞き、さらにその危険性を専門家に聞いた。

ギャン泣きする赤ちゃんを抱えたままスノーボード

「本当載せるか迷ったけど… 助けを求めれない赤ちゃんへの虐待だと思うし、禁止にして欲しいから」とつづりながらXに動画を投稿したのは、インフルエンサーのりりあんぬ葵さん。

動画は、男性のスノーボーダーが抱っこ紐をつけてお腹に幼児を抱えて、ゲレンデの雪の上に座っているところからはじまる。男性が立ち上がろうとすると、その反動で幼児の頭は揺さぶられて、幼児は大声で泣き叫ぶ。しかし男性はそのまま、自身の体勢を整えようと小刻みにジャンプ。さらに幼児の頭は激しく揺さぶられてしまう。

男性が少し体勢を崩し、幼児の頭が地面に擦れているようなシーンもあった。男性はそのまま泣きじゃくる幼児を抱え、雪山を滑り降りていった。

普段は割と人に声をかけるほうだという葵さんだが、今回の場面はあまりにも衝撃的であったため、声が出なかったという。「幼児はずっと泣いてて、仰け反ったときもあまりにも仰け反ってるから、多分息ができなくて泣き声も出てなくて…本当心痛いです」と話す。

このことをすぐにスキー場の本部にも報告したのだが、抱っこ紐をつけて幼児を抱えたままスノーボードをすることを禁止にしておらず、「基本的には自己責任において、ご自身やお子様の身を守っていただくようお願いしております。また、他のお客様を危険にさらす行為やご迷惑にならない範囲で、それぞれお楽しみいただいております」との返答があったという。

しかし、幼児を抱えた親にとっては自己責任かもしれないが、誰かがその人と衝突してしまって、子どもにもしものことがあったらその誰かの責任になる危険性がある。そしてなにより、赤ちゃんが危険な目にあっているのを、「親の自己責任だから」という理由で放っておいていいのだろうか。

葵さんは「守られるべき子どもが危険に晒されるなら、守られるように制度を作るしかない」と語り、スキー場は子どもの年齢制限かけるべきだと論じた。

専門家が赤ちゃんへの重大な影響を指摘

この投稿には賛成の意見が多く集まっている。

〈やっていいことととダメなことの分別もできない親が最近ほんっとに多すぎる。同じ子持ちとしてうんざりする〉

〈こんな親のもとに産まれた子どもが本当にかわいそう…こんなの虐待じゃん〉

〈スキー場って日焼けしやすいのに、肌弱い赤ちゃん連れてくるのも論外やと思うわ〉

〈先週末小学生連れてスキー場行ったけど、抱っこ紐で赤ちゃん抱えて滑ってるママ2人見て驚愕した〉

この動画を、帝京平成大学の人文社会学部 児童学科 保育・幼稚園コースの鈴木邦明准教授に見てもらったところ、やはり幼児に大きな影響があるとの回答があった。

鈴木先生の見立てでは、幼児の年齢は3ヶ月から2歳くらい。一般的に赤ちゃんの首がすわるのは3ヶ月から4ヶ月頃とされていて、動画の幼児は、一応、首が座っているように見えるとのことだが、自力で首を支えようとしても、滑りに行こうとする親の体の動きの影響でグラグラ揺れてしまい、首がしっかりと固定できていないようにも感じるとのことだ。

そして、こうした幼児が頭を大きく揺さぶられることで、「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」が心配されるという。

「動画では頭がグラグラと動いているように見えます。転倒などのトラブルがなくとも、赤ちゃんが激しく頭を揺さぶられることで、表面的な外傷はないものの、赤ちゃんの脳などに重度の損傷が生じる可能性があります。

この乳幼児揺さぶられ症候群は、その場で急に症状ができるものではありません。その影響が後になってから生じてくることが多いとされています。

赤ちゃんは、首の筋肉が弱く、身体全体の割合に対して頭が大きいのが特徴です。大人よりも頭が大きく揺れることで、脳への影響も出やすいです。

よく起こってしまう状況としては、赤ちゃんが泣き止まないなど、親のストレスで赤ちゃんを強く揺さぶってしまうことが挙げられます」(帝京平成大学・鈴木邦明准教)

「親が子どもを守れないのであれば、制度で守るしかない」

また、動画の男性はスノーボードに慣れている感じだが、子どもを胸面に抱えることにより普段とは重心などに変化が生じ、転倒の危険性が高くなることも指摘。その際に、幼児が何かにぶつかることや、大人の体と雪面の間に挟まれることが起こりえると論じた。

今回、投稿が話題になった葵さんだが、多くの声が寄せられる中で、特に印象的だったものを聞いたところ、「親が子どもを守れないのであれば、制度で守るしかない」「乳児がいるぐらいの若い客でも集客して利益を出したい VS その結果発生する事故の損害賠償が飛ぶリスク  スキー場の運営管理会社が天秤にかけた結果問題じゃないって判断してるから、結局は管理会社の危機管理意識に依存する」という二つの指摘をあげた。

これを機に安全への意識が変わってほしいと話すが、果たしてスキー場は対策に乗り出すのか。赤ちゃんのため、そしてほかの利用者のためにも、考えるきっかけになってほしいが……。

取材・文/集英社オンライン編集部

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