「社会的孤立」は1日15本のタバコと同レベルの健康被害に相当…脳のコンディションを下げ、認知症と生活習慣病リスクを高める「孤独」という名の現代病
「社会的孤立」は1日15本のタバコと同レベルの健康被害に相当…脳のコンディションを下げ、認知症と生活習慣病リスクを高める「孤独」という名の現代病

新型コロナウイルス蔓延の長期化によって、孤独や孤立が現代の社会問題として顕在化している今。他者との交流が少ない人は、認知症の発症率がおよそ8倍にもなるという研究結果もあるというが、本当なのだろうか。

 

『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』より一部抜粋、再構成して、「孤独」が及ぼす健康被害などについてお届けする。

「孤独」は大量のタバコや飲酒と同レベル

「一日15本のタバコ」
「依存症レベルの飲酒」

こう聞くと、「健康に悪そう」とほとんどの人が思うのではないでしょうか。

しかし、それと同等、もしくはそれ以上に健康に害がある「孤独・孤立」に関しては、健康に悪いものと認識している人は少ないのではないでしょうか。

社会的孤立は一日に15本のタバコを吸うことやアルコール依存症と同じくらい、健康に害があるといわれています。

アメリカ公衆衛生局長官のヴィヴェック・マーシーも、「孤独は21世紀のタバコ」ととらえ、タバコと同等の健康被害としてその影響を危惧しています。

イギリスで世界初となる「孤独担当大臣」も誕生…

世界保健機関(WHO)は2023年に、社会的孤立を「差し迫った健康上の脅威」と位置づけました。

社会的つながりを優先事項として促進し、あらゆる国々における解決策の規模拡大を加速させるために、「社会的つながりに関する委員会」を発足させました。

この委員会は、孤独の蔓延を世界的な公衆衛生の優先的課題として認識し、社会的つながりに関する取り組みの支援体制を整えることを目的としています。

2018年に、イギリスにおいて世界で初めて「孤独担当大臣」が置かれました。

それに先立ち、イギリス政府は孤独問題に対し、30億円近い予算を計上しました。ここまで本腰を入れたのは、孤独が医療費や経済を圧迫しかねないからです。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが2017年に発表した研究によれば、孤独がもたらす医療コストは、10年間で国民ひとりあたり約85万円です。

公的医療が無料のイギリスでは、地域の初期診療を担う総合医療医のもとにさまざまな患者が訪れます。

孤独に悩んで医師に話を聞いてほしいと受診するケースも多く、「診察の2割は医療が必要なのではなく、孤独に悩む人」という報告もあります。

核家族化、高齢化、都市の人口集中などを抱える日本においては、孤独・孤立が今後も進んでいくと考えられます。

実は日本にもいる「孤独・孤立対策担当大臣」

日本でも2021年に、世界で二番目となる「孤独・孤立対策担当大臣」が任命されました。NPOとの関係の強化や実態把握調査、情報発信などを行っているようです。

2023年に実施された内閣官房による調査では、20~50代において孤独感が、「たまにある」「ときどきある」「常にある」と答えた人の割合が他の年代よりも高く、その割合は約45%に上りました。

男女別で見ると、男性では30代及び40代で、女性では20代で高いという結果になりました。

また、OECDの調査によれば、友人、同僚、その他のコミュニティと「ほとんど付き合いがない人」の割合は、日本では約15%。平均の2倍以上。加盟国のトップでした。

アメリカやオランダ、ドイツなどでは3、4%でしたので、日本の突出した人とのつながりの希薄さが示されています。

孤独は、脳に関わる病気も含む生活習慣病と大きく関係があります。

会話がなく長時間過ごしていると、使われていない脳の神経細胞が少しずつ衰えてしまいます。

他者と交流がない孤独状態になると脳のコンディションが下がり、将来的には認知症などのリスクが高まります。

つまりは、孤独の脳に対する影響は、現在の脳のコンディション低下に加え、将来的な認知症などへのリスクにも及ぶのです。

そもそも、孤独・孤立というのは人間を含む多くの動物の脳にとって、とても不自然な状態です。

人間というのは本来、子孫を残すという目的がプログラミングされた動物であり、社会とつながりをもたずに過ごすことは、不便なだけではなく命を脅かします。

人間は昔から、食べ物を得ることも、子孫が繁栄することも、他者とのつながりに大きく依存していたのです。それゆえに、人間は、孤独・孤立に対して苦痛を感じるようプログラミングされています。

そう考えると、孤独・孤立が、人間として不自然な状態であり、思考力や判断力に影響を与えることもうなずけるでしょう。

文/平井麻依子 写真/Shutterstock

「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた

平井麻依子
「社会的孤立」は1日15本のタバコと同レベルの健康被害に相当…脳のコンディションを下げ、認知症と生活習慣病リスクを高める「孤独」という名の現代病
「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた
2025/1/301,650円(税込)224ページISBN: 978-4763141965

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