
サントリーが発売する『サントリージン 翠 SUI』の広告ポスターがネット上で大きな注目を集めている。キャッチコピーの改行する位置が、独特すぎるというのだ。
「人生変わっち」で改行された広告
俳優の杉咲花が「翠ジンソーダ」の入ったジョッキを両手に持って笑顔を浮かべている広告。「このすっきり、人生変わっちゃうかも。」というキャッチコピーが添えられているのだが、
このすっきり、
人生変わっち
ゃうかも。
と、小文字を行の頭に持ってくるような独特な位置での改行がされている。間違いというわけではないのだが、微妙に読みづらさを感じるこの改行はSNSで大きな注目を集めている。
〈これにGOが出るまでのストーリーを知りたい。確かにそこだけ見れば違和感なんだけど、全体としてはこれが不正解とはならないバランスだと思うんだよね〉
〈以前印刷会社に勤めていたとき、改行位置も注意を払いました。不自然ですよね。赤、入るところだと思います〉
〈もし、私だったら… 「級下げして二行におさめる」 「級下げたくないと言われたら横書きにして二行におさめる」〉
〈「あえて」のデザインなんでしょうけど、この改行位置はすっごく気になります…人に沿わせてるからシルエットはいいけど、文章的にはすごく違和感…〉
そして、大企業が打ち出しているポスターであることから、ただのミスではなく、デザインになんらかの意図があるのではないかとさまざまな考察がされている。
SNSでのバズりを狙ってわざと違和感のある場所にしたという意見や、ポスター全体のバランスを考えたときにこの形がベストだったという意見。巧みな視線誘導を狙った文字の置き方だという意見などがある。
また、2月中旬時点では別のキャッチコピーが使われていたことから、印刷間際にキャッチコピー変更の依頼が来てしまい、短時間では文字のデザインの修正がうまくできなかったという意見。この改行位置以外で改行した場合、“横読み”した際によろしくないことになるという意見も……。(画像参照)
サントリー広報部の回答
デザイナーを名乗る人らもこの考察に参加していたが、やはりセオリー通りに考えれば、この改行は考えづらいと指摘しており、そのうえでセオリーをあえて無視するという革新性を、商品イメージと合わせて表現しているのでは? という意見もある。
そこでサントリー広報部にこの改行位置にした理由について問い合わせをしてみた。
「サントリージン翠(SUI)が大切にしている翠ブルーを基調にしながら、多くのお客様の目に留まり杉咲さん扮する看板店員が実際に発した言葉に見え、親しみを感じていただきたいとの思いからこの表現としました」
やはりミスなどではなく、デザイン上の理由からあえてこのような改行を行なったそうだ。
しかしそもそも、デザイン上NGかは別として、小文字を行頭においてはいけないというルールは存在しないとも言われている。
「『ゃ』『っ』など、小文字が行頭にくることはそれほど珍しいことではありません。小説を手に取ってもらうとわかりますが、小文字が行頭にふつうに置いてありますよね。小文字を行頭に置いてはいけないというルールは存在しないのです。
Wordなどで“行頭禁則”の設定をしても小文字が行頭に来ることはあるので、小文字を行頭に置きたくない場合は、それようの設定をわざわざしなければなりません。逆に、行頭にまず持ってこないとされているのは、句読点や繰り返し(々)。これらは“行頭禁則”の設定をすれば基本的に、頭に来ることはないでしょう」(週刊誌校正者)
思わぬ反響を呼び、SNS上でデザイン談議を盛り上げてくれたサントリーの広告。たまには広告ポスターをデザイン的な目線で見てみるのも、いいかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部