
MLBの東京シリーズ開幕戦が、3月18日と19日に東京ドームで行われる。大谷翔平をはじめ日本人メジャーリーガーたちの凱旋試合ということもあり、チケットは即完売し、観に行きたくても行けないチケット難民が続出した。
詐欺師たちの巧妙な手口
「ドジャースVSカブス チケット 指定席S席4枚 重複したためお譲り先を探しております」
詐欺師たちはX上で、こうした何の変哲もない文言で募集をかけている。
今回、実際にこの手の詐欺に遭い大金を失ったAさんに話を聞いた。
友人と4人で観戦に行こうとしていたAさんは、Xにて「チケットを定価で売ります」と募集しているアカウントがあり、気軽にメッセージを送ったという。
「2万3000円の指定A席を4枚購入しようとXのDMでやりとりをしていたんです。委託販売サイトなどではかなりの高額で取引されているチケットなので『定価で譲ってくれるなんてラッキー』ぐらいの気持ちでいました。
取引の際のやりとりも至って普通でした。メッセージに『詐欺防止のためお支払い前に身分証を提示可能です』と書いてあったので、身分証を提示してもらったところ、普通に送られてきたんですよね。これで信用してしまったんです」
そのあとはPayPayの支払いコードが送られてきたので、すぐに先払いで支払ったという。
「『早い方優先でチケットをお譲りします』と書いてあったので、正直焦っていたところもありますね。のんびりしていたら、誰かに取られてしまうと思ってました。
また、やりとりも丁寧でいい人そうだったので、気楽な感じで9万2000円を送金しました。それに、最悪詐欺だったとしても、PayPayなら足がつくから回収できると思ったんです」
SNS上でチケットの売買自体が犯罪になる可能性
その後、PayPay上にて受け取り通知が確認できたと表示が出たので、相手からの連絡を待っていたという。
「チケット情報を待っていたのですが、何も返事が来ないんです。
PayPayの問い合わせに電話して相談してみたところ、警察からの要請があれば情報を開示できるとのことでした」
その後、警察に相談しに行ったが、警察からは思いもよらない反応が。
「『SNS上でのチケットの売買自体が犯罪になる可能性もあり、刑事事件にしたら(違法取引で?)あなたも罪に問われる可能性がありますよ。それでも被害届を出しますか?』と言われました。そこで泣き寝入りするしかないと思いました」
今回はPayPay先払いでの詐欺だったが、こうしたチケット詐欺ではコンビニ入金を指示してくる場合もあるという。
「今回支払った9万2000円は勉強代だったとはいえ、こんな大金を払ったのに大谷翔平選手を見られないなんて悔しいと思い、懲りずに別のチケットを譲ってくれるアカウントを探しました」
Xで検索してみると、チケット譲渡や転売をうたったさまざまなアカウントが出てくる。藁にもすがる思いで一件一件連絡をしていったそうだ。
「いろいろなアカウントとやり取りをしていたところ、どこもPayPay前払いばかりで、さらに身分証明書の手口なども同じだったので、詐欺アカウントだと見抜くことができました。でも一件だけ新しい手口があり、これには騙されそうになりました」
「あやうく、また2万3000円騙されるところでした」
それはコンビニ払いのバーコードが送られてきて、指定のコンビニで支払ってくれというもの。
「コンビニで代金を払えば印字されたチケットが発行されるからと連絡が来ました。『これなら騙される心配はないぞ!』と急ぎ足で指定のコンビニに行きました。
念のため店員さんに、『これを支払うとチケットって発券されますよね?』と聞いてみたんです」
すると意外な答えが返ってきたという。
「『こちらは、プリペイドクレジットカードへチャージするバーコードなのでチケット発券は行なわれませんよ』と言われました。危うく、また2万3000円騙されるところでした。
手口としては、コンビニの店頭に設置してあるマルチメディア端末でプリペイドクレジットカードへチャージするバーコードを発券して、それを切り取りバーコードを撮影し、写真をDMで送るといった仕組みでした」
2度目の詐欺に遭いかけたAさんはこう警告する。
「SNS上でのチケット譲渡の書き込みは、多くが詐欺なんじゃないでしょうか。推しのチケットが買えると思うと、冷静な判断ができなくなるので、そこを詐欺師はついてきます。
相手とのやりとりの中で、万が一『身分証明書を出してくれ』と言われても絶対に出さないでください。別な詐欺行為に使われるのは目に見えてます」
何人もの詐欺師と対峙したAさんだが、相手から提示された身分証明書は若い女性が多かったという。くれぐれもDMなどで身分証明書のやり取りはしないように注意してほしい。
取材・文/山崎尚哉