〈センバツ甲子園〉優勝候補4校の戦力を徹底分析…昨春覇者の健大高崎と名将率いる明徳義塾が初日から激突
〈センバツ甲子園〉優勝候補4校の戦力を徹底分析…昨春覇者の健大高崎と名将率いる明徳義塾が初日から激突

3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会(センバツ)。その初日に組まれた健大高崎VS明徳義塾は今大会屈指の注目カードだ。

その健大高崎と明徳義塾、神宮大会王者の横浜など優勝候補の戦力値を分析する。

昨年のセンバツ王者、健大高崎の連覇は?

センバツ連覇を狙う健大高崎は、初日の第3試合にいきなり名将・馬淵史郎監督率いる明徳義塾と激突する。

今大会では、両校とも優勝候補に名前が挙がっており、初日から大会を大いに盛り上げてくれそうだ。

昨年のセンパツではチーム打率1位を誇った健大高崎の強力打線。今大会の出場校のなかでも、昨秋の公式戦チーム打率が2位となっており、その攻撃力は健在だ。そして、健大高崎は春に強い。昨年の優勝ばかり目立っているが、センバツではベスト4に1度、ベスト8に2度進出している。安定した戦績から春の戦い方を知っていると言えそうだ。

しかし、不安要素も多い。まずは投手陣。昨春は石垣元気と佐藤龍月のWエースで頂点に立ったが、佐藤は昨年8月にトミー・ジョン手術を受けたため、野手としてメンバー登録された。

世代ナンバー1右腕の呼び声高い石垣元気も秋季大会では4試合で奪三振33、防御率2.08を記録するも本調子ではないように見えた。さらに、3月14日に健大高崎を率いる青栁博文監督は石垣が左脇腹を故障していることを明かした。

本人は「試合までには間に合う」としているが、不安な状態であることに変わりはない。

ケガの佐藤と不安要素の多い石垣の穴を埋めることを期待されるのがスリークオーター左腕の下重賢慎だ。下重は秋季大会では5試合に登板し、30回1/3を投げて失点はわずかに1点。防御率は0.30で、最速145km/hもマークした。

昨夏の甲子園も経験しており、ゲームメイク力があることから、下重を先発として起用し、最速158キロの速球をもつ石垣を後ろに回す起用法がよさそうだ。昨年秋の関東大会での横浜との決勝では延長タイブレークまでもつれたことを考えてもチーム力は確か。昨春のような投手運用ができれば連覇も大いに狙えるだろう。

明徳義塾と馬淵監督の不気味さ

一方で、明徳義塾はバッテリーを含め4人が昨夏の甲子園を経験。試合巧者ぶりと選手個人の能力を兼ね備えている点が特徴だ。

とくにエースの池崎安侍朗は、派手さはないものの安定したピッチングを見せる。馬淵監督も「(健大高崎との試合は)池崎の調子次第ですよ。健大高崎と当たるんだったら池崎しか考えられない。彼がどれくらいやれるか」とコメントするほど信頼を寄せる。

その馬淵監督は昭和・平成・令和の3時代にわたって監督を務め、社会人野球でも実績を残しており、その采配やマネジメント術の巧みさは高校野球ファンならよく知るところ。チームビルディング、選手育成、戦術面において「高校野球の教科書」とも言える戦い方を貫き、甲子園で結果を残してきた。

チームづくりは、計算しやすい制球力のある投手の起用を優先し、野手はスラッガータイプよりも機動力のある選手を重視する。守備にリズムが生まれれば、打撃にもいい影響を与えるという考えだ。また、野手はまず守備を鍛え、その上で1番・3番打者タイプの育成をすることも特徴だ。

走力や選球眼、出塁率の高い選手を育てる方針を取っていることから、中学生のスカウト活動も、パワーよりもバランスのよさ、足の速さに重きを置き、派手なプレースタイルよりも安定したディフェンス力を軸にしたチームづくりを行う。

この守備重視の戦略は、短期決戦の高校野球において非常に合理的だ。プロ野球と異なり、高校野球では緊張やプレッシャー、慣れない球場などの影響でミスが出やすいため、失策を最小限に抑えることで勝率を上げられるからだ。

チーム運営の面でも統制を意識しており、同じ能力なら上級生を優先する。キャプテンは監督が独断で決めるのではなく、上級生の投票によって決定される。選手主体のチーム運営で監督と選手が歩調を合わせて戦う体制が確立していることは、明徳義塾の強さを支えていると言っていいだろう。

いきなり昨年のセンバツ覇者の健大高崎との対戦となるが、相手への徹底的な分析から初戦の強さは甲子園の歴史の中でも歴代屈指だろう。

試合前の対策を含め、初戦の馬淵采配は見逃せない。

横浜、東洋大姫路も優勝候補

そして、今大会の優勝候補筆頭といえるのが明治神宮大会覇者の横浜だ。

春夏合わせて5回の全国優勝を成し遂げた超名門校は、今春も高い戦力を誇る。特に奥村頼人と織田翔希のWエースは今大会の出場校の中でも実力は飛び抜けており、継投策などマネジメント次第では、盤石の試合運びが可能だ。

攻撃面では2年の夏から主将を務めている阿部葉太を中心に打力も充実しているが、失策数が多く、守備面がやや課題となっている。ディフェンス力がものを言うセンバツでは、守備の不安を投手力で補えるかがポイントとなりそうだ。

常勝軍団のイメージの強い横浜だが、意外にも2008年の夏を最後に、甲子園では春夏ともにベスト4以上になっていない。甲子園での勝ち癖がついていないのは懸念材料だが、昨秋の公式戦では明徳義塾、健大高崎、東洋大姫路に勝利をしており自信もついているだろう。

令和に入り、県内のライバル校である東海大相模や慶應がそれぞれ春と夏に頂点に立っている。横浜も意地を見せたいところだ。

東洋大姫路も安定した試合運びができるチームとして優勝候補に挙げられる。攻守にわたって大崩れしないチームスタイルを持ち、堅実な戦いができるのが最大の強みだ。

投手陣では安定したピッチングが計算できる阪下漣と、その阪下が出遅れていた時期に投げていた末永晄大も、“二枚看板”として評価は高い。

守備力の安定感も際立っており、堅実な内野守備が凡ミスを防ぎ、ピンチでも崩れにくい。全体的に大きな穴がないのが東洋大姫路の大きな強みだ。

いったいどの高校が春の王者となるのか。筋書きのないドラマがまもなく幕開けとなる。

文/ゴジキ

 

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