
発達障がいを抱えながらも、3度目の結婚にして「やっと幸せになれた」と語るぷちあやさん。自身もADHDを疑っている夫の安藤翼さんとの、飾らない夫婦の日常が綴られたブログが人気だ。
「簡単なことでも2つ同時にできません」
——発達障がいの特性をもつおふたりですが、夫婦生活の家事の分担などはどうしていますか?
安藤翼(以下、翼) 1年前に、今住んでいる部屋に引っ越してきてから料理は僕が、洗濯はあやが、という担当に落ち着いています。もともと、板前だったこともあり料理は得意なんです。
ぷちあや(以下、あや) 私は料理は苦手ですし、ツバちゃんはこだわりが強いのでヘタに手は出さないようにしています。
以前、来客の際に「盛り付けだけやろうか?」と聞いたら「盛り付けも自分でやりたい」と返ってきたことがありました。
——そこはすべて自分でやりたいのですね。
翼 職人気質の方は特にそうだと思うんですが、自分がやっているものを途中から人に手を出されたくない。料理や皿選びから、盛り付けまで全部自分でやりたいんです。
あや そんなこだわりの強さにもADHDの気質を感じます。以降、夫がキッチンにいるときには「絶対に入らない」と決めています(笑)。
私は、洗濯をやるときはできる限り洗濯だけをします。洗濯しながら仕事をすると、洗濯機を回していることを忘れ、深夜に思い出し、臭くなっているので翌朝もう一度洗濯するんですが、また同様に忘れてしまうんです。簡単なことでも2つ同時にできません。
——発達障がいの方は、同じ特性のある方に惹かれるとも言われますが、どうでしょうか?
あや 1度目の結婚は18歳で娘を授かったうえでの結婚で、2度目は当時の上司から「女性は30歳で結婚していないと欠陥があると思われ信用してもらえない」と言われ慌てて結婚したので、相手と深く向き合う前に入籍していたように思いますが、思い返せば、過去の2人にも傾向はあったと感じています。
当時はそこまで意識していなかったのですが精神的な不安定さ、注意欠陥など思い当たる節があります。
何千万円か損していることも…
——おふたりを見ていると、互いへのリスペクトをすごく感じます。
あや 自分にないものを持っている人なので、とても尊敬しています。
以前、PR案件を受けた際に、途中でやり方が強引に感じるところがあったので、クライアントに「正しい方法でやりたい」と意見したんです。そうしたら「それでは報酬は払えません」と言われてしまった。
困り果てて夫に相談すると、クライアントに相手のメリットも提示しながら順序立てて話をしてくれて、互いが納得のいく形におさめてくれました。
とっさに会話を録音していて、抜かりもなかったし。私は、正論だけ突きつけてケンカのようになってしまうのですが、ツバちゃんは揉めごとを着地させるのがとても上手です。
翼 私は、ミュージシャンの衣装などをデザインする仕事を主軸に、彼らのマネジメントもしているためトラブルには慣れているんです。
——上手くいかず、そういった案件で以前は泣き寝入りもあったのでは?
あや たくさんあります。相手の言い分を呑むことになり何千万円か損していると思います。
翼 あやは商品をよりよく見せたり、PRが上手。
一方で、僕もあやに助けられています。実は、デジタル機器が苦手でなにもできないんです。スマホでの会員登録もできないし、カードの番号も信頼している部下にすべて管理をお願いしているほどです。
ブログの設定も全部あやがやってくれましたし、日々のブログ執筆も本当は文字を大きくしたり、色を変えたいんですが、使い方がわからなくて…(笑)。
——互いの凸凹を補い合えるご夫婦ですが、馴れ初めが気になります。
あや 娘もほとんど自立して、再々婚を考え始めた頃に共通の友人が「あやさんに合いそうな人がいる」と言って紹介してくれました。
私は、見た目で好意を抱くことはなく、信頼できる行動や自分にないものを持っているか、ということを重視していました。
でも、かつて“ギャル男”の男性が身近に一人もおらず、ツバちゃんは未知の生物…第一印象は「チャラそうだな」で、決していいものではありせんでした。
翼 僕は最初に会ったときから好意的な印象でしたが、LINEをしてもあまり返信がない。さらに送るようなことはしないので、なかなか進展はなかった。
無償で、ここまでやってくれるなんて!
——おふたりを近づけた出来事は?
あや 私は、ファッションコーディネートの提案をしたり、ファッションセンターしまむらの商品のデザインなどの仕事をやっていて、2年ほど前に、商品の在庫を置いたり、発送を任せるために初めて倉庫と契約することになったのですが、トラブルが…。
お客さまから私に直接連絡があり「1ヶ月前に注文したものが配送されない」と。倉庫に確認しましたが、原因は分からなかった。
そのときに、彼が過去のLINEや資料を3~4時間かけてすべてさかのぼってくれたことで、解決したんです。無償で、ここまでやってくれるなんて!と驚くと同時に「この人は信頼できる人かも」とラブのスイッチが入ったのを覚えています。
翼 数日後、この倉庫のトラブルに関する打ち合わせをして、二人とも好きなスーパー銭湯に一緒に行きました。
で、帰りにほとんどノリで「これから熱海の別荘に行くんですが、あやさんもきますか?」と聞いてみたんです。そうしたら「行こうかな」ときてくれて。そこから結婚まではハイスピードで、2ヶ月後には入籍していました(笑)。
——ADHDやASDの特性ゆえに結婚を迷う方もいると思いますが、アドバイスはありますか?
翼 発達障がいが障壁になるくらいなら、結婚しないほうがいい。現代では、判断材料も多いのですぐに診断がつきます。そのほうが生きやすいのかもしれない。
でも、言い方を変えればその人の癖であり個性。短気でイライラしやすいことも、飽きやすいことも、感情の起伏が激しいこともすべてひっくるめて自分だし、相手でもあると思うんです。
発達障がいという言葉に惑わされすぎてしまうのはどうなのかな?と思います。だから私はあえて診断は受けていません。
あや 結婚してみないとわからないことが多く、一緒にいたいのは「お母さんみたいに世話を焼いてくれる人だ」ということも、3度目にしてたどり着いたこと。
今「やっと幸せになれた」と実感しています。このご時世、離婚を悪と捉える人も少ないですし、あまり構えずに、一回結婚してみてもいいのではと思います。
——今後、どのような結婚生活を送る予定ですか?
あや この3月から静岡で移住生活を始めます。ツバちゃんは、都心にいると仕事のことが頭から離れず、寝る間際まで仕事をしています。イライラする頻度も高く、そのストレスから不眠症、就寝前に暴食し、糖尿病になってしまいました。
その治療を念頭に、仕事は少しずつ人に任せて、田舎で余生をゆっくり過ごしたいと思っています。
翼 正直、仕事はあと5年かけて整理していこうと考えていたので、自分は最初は乗り気ではありませんでした。
最初の2~3ヶ月、慣れるまでは大変だと思いますが、その後はきっと「よかった」と思えるよう田舎生活を楽しみたいです。移住にご興味のある方はブログに遊びにきてください。
取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班 撮影/村上庄吾