〈マー君、やっぱり神の子〉586日ぶり勝利で菅野の穴は埋まるのか…田中将大が全盛期の球速がなくても大復活できる2つの理由
〈マー君、やっぱり神の子〉586日ぶり勝利で菅野の穴は埋まるのか…田中将大が全盛期の球速がなくても大復活できる2つの理由

4月3日、巨人移籍後初登板の中日戦で586日ぶりに勝利投手となった田中将大(36)。近年、不甲斐ない成績が続いていた“神の子”は本当に復活できるのか。

その球威と投球スタイルから分析する。

田中、上原、吉見…制球型投手は「球威・球速」が絶対必要

球界トップクラスの平均球速と制球力で2011~13年は向かうところ敵なしの投球を見せ、ヤンキースのエースとしても活躍。

かつての田中将大といえば、ズバ抜けたコントロールと決め球のスプリットで奪三振の山を築き、渡米後はクレバーなピッチングも覚えていった。

それでも近年は思うような活躍ができていない。日本復帰初年度の2021年は4勝に終わると、2022、2023年の負け数はリーグ最多。昨年に至ってはシーズン最終盤に1度登板したきりで、自身のプロのキャリアにおいて初めて未勝利に終わった。

そんな苦境の中で移籍したのが巨人というだけあって、いやが応にも注目を集める今シーズン。これまで百戦錬磨の田中も、現在はプロの打者を抑えるための最低限の「球威・球速」が足りていないのは年齢的にも明確だ。

そして、田中のようなコントロール型の投手はその最低限の「球威・球速」がないと打ち込まれるケースが増えてしまうのだ。

たとえば、圧倒的な制球力を誇り、球速以上に速く感じさせる球質を持っていた上原浩治(元巨人ほか)も、140キロ未満という水準以下の球速だった2008年のシーズンは、キャリアワースト(当時)となる防御率3.81と打ち込まれた。

さらに同タイプの吉見一起(元中日)も、2013年にトミー・ジョン手術を受けてからはエースとして求められる水準以下の球速となってしまい、自慢のストレートは打者の餌食に。以降、全盛期のピッチングを取り戻すことはなかった。

田中が近年、満足な投球ができていないのも、同じく球速が全盛期と比べて遅くなっているからだろう。



すでに、メジャー晩年の2020年からストレートの球速が落ち始め、投球術でかわすピッチングが目立っていた。NPB復帰後もそれは変わらなかったが、ここ数年、NPB投手全体の平均球速が高速化したこともあり、田中は打順一巡目で限界を迎えるケースが多かったのだ。

田中に求められる今シーズンの役割

そんな田中に求められる今シーズンの役割は、昨年の菅野智之のように、これまでの豊富な経験と実績で若手投手のお手本になりながら、ローテーションの柱になることだ。

2023年に4勝に終わった菅野は、球威の回復とフォークボールを有効に使いながら試合を支配する投球スタイルに変更したことで、昨年は最多勝と3度目のシーズンMVPに輝くなど見事な復活を果たした。

一方で、田中は昨年までのピッチングを見る限り、球威が飛躍的に戻るとは考えづらい。しかし、前述のとおり田中には高度な投球技術があり、しかもその田中の後ろを守るのは球界トップクラスのディフェンス力を誇る巨人内野陣だ。

これがアドバンテージになり、5回まで最少失点に抑えて試合をつくれば、勝ち星を積み重ねられる可能性は十二分にある。

また、セ・リーグの打者は田中の球を見慣れていないというのもプラスに働くだろう。開幕から巨人打線は好調で、大量の援護点を期待できるチャンスもあるだろう。

4月3日の勝利で日米通算200勝まであと2勝と迫っているが、これらの要素に加え、MAX149キロを記録するなど球速も回復しており、今シーズン中に大台の200勝へと到達するのは現実的だろう。

とはいえ、昨年最多勝を獲得した菅野並の活躍をするとなれば、さらなる球威の向上が求められるのも否めない。

初登板で見せた全盛期並みの“ギアチェンジ”

具体的に田中の復活への手応えを感じられた場面として、5回1失点で勝ち投手となった4月3日の試合を振り返りたい。

初登板の緊張もあったのか、初回は非常に苦しい立ち上がりとなり、投球内容も変化球主体で空振りをなかなか奪うことができなかった。

これはやはり球威の低下により、ストレートで勝負ができないと判断してのことだろう。しかし、要所では持ち前の経験と技術を活かして粘投。

特に5回は1死2、3塁の場面で上林誠知への2球目で、この日最速の149キロをマーク。全盛期のようなギアチェンジを見せてくれた。結局、上林に四球を与えて満塁のピンチを背負うも、続く打者を併殺でなんとか凌ぎきった。

だが、球速やキレにはやはり物足りなさを感じ、年齢による衰えは明白だ。登板した球場がバンテリンドームという投手有利な広い球場であることも、一発のリスクが減るという追い風となった。

今後、より安定した投球をするには短いイニングでもいいので「球威・球速」の底上げがポイントとなりそうだ。それができれば、巨人のリーグ連覇、2012年以来13年ぶりの日本一への1ピースになってくれるはずだ。

ベテランらしい味のあるピッチングと、全盛期のような短期的な最大出力を期待したい。

文/ゴジキ

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